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大学発ベンチャー、業数および増加数ともに過去最高に

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2024年5月15日、経済産業省は「令和5年度大学発ベンチャー実態等調査」の結果(速報)を発表しました。

2023年10月時点での大学発ベンチャー数は4,288社となり、2022年度に確認された3,782社から506社増加し、企業数および増加数ともに過去最高を記録しました。特に私立大学のベンチャー数の躍進が顕著でした。

1.目的・背景

大学発ベンチャーは、大学などにおける革新的な研究成果を基に、経済社会にイノベーションをもたらす担い手として期待されています。

本調査は、大学発ベンチャーの設立状況を定点観測するとともに、事業環境やニーズなどを調査し、その成長に寄与する要因などを分析することで、今後の政策展開に活用するために実施しています。

2.調査の結果概要

大学発ベンチャー数の推移

2023年度調査で確認された大学発ベンチャーは4,288社となり、2022年度の3,782社から506社増加しました。企業数および増加数ともに過去最高を更新しました。

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出典:経済産業省令和5年度大学発ベンチャー実態等調査 2024.5.15

調査は、2023年10月末時点で設立されている大学発ベンチャーをカウント対象としています。本調査では、以下の6つの条件のうち1つ以上に該当する企業を「大学発ベンチャー」と定義しています。

  • 研究成果ベンチャー:大学で達成された研究成果に基づく特許や新たな技術・ビジネス手法を事業化する目的で設立されたベンチャー。
  • 共同研究ベンチャー:創業者の持つ技術やノウハウを事業化するため、設立5年以内に大学と共同研究などを行ったベンチャー(設立時点で大学と特段の関係がなかったものも含む)。
  • 技術移転ベンチャー:既存事業を維持・発展させるため、設立5年以内に大学から技術移転などを受けたベンチャー(設立時点で大学と特段の関係がなかったものも含む)。
  • 学生ベンチャー:大学と深い関連のある学生ベンチャー(現役の学生が関与するもののみが対象)。
  • 教職員等ベンチャー:大学と深い関連のある教職員など(教職員・研究職員・ポスドク)ベンチャー。
  • 関連ベンチャー:大学からの出資があるなど、大学と深い関連のあるベンチャー。

大学別大学発ベンチャー数

大学別では、東京大学が最も多く、次いで慶應義塾大学、大阪大学が続いています。特に私立大学の増加が顕著で、慶應義塾大学や東京理科大学、立命館大学などが目立ちます。

順位 (前年度) 大学名 2021年度 2022年度 2023年度 2023年度と前年度との差
1 (1) 東京大学 329 370 420 +50
2 (3) 慶應義塾大学 175 236 291 +55
3 (2) 京都大学 242 264 273 +9
4 (5) 大阪大学 180 191 252 +61
5 (4) 筑波大学 178 217 236 +19
6 (6) 東北大学 157 179 199 +20
7 (7) 東京理科大学 126 151 191 +40
8 (9) 早稲田大学 100 128 145 +17
9 (8) 名古屋大学 115 137 143 +6
10 (12) 立命館大学 87 110 135 +25

企業数は当該調査年度時点で把握した数であり、前年度との差分は必ずしも新規設立数ではないことに留意が必要です。

大学発ベンチャーにおける経営人材に関する分析

大学発ベンチャーの経営人材(CEO)の最終経歴は「大学・公的研究機関の教職員・研究者」が多く、アカデミア出身者が経営人材(CEO)となるケースが多いことが明らかになりました。

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出典:経済産業省令和5年度大学発ベンチャー実態等調査 2024.5.15

大学発ベンチャーにおける博士号取得者の活躍状況に関する分析

大学発ベンチャーの従業員総数に占める博士号取得者の在籍割合は、特に技術移転ベンチャーや教職員等ベンチャーにおいて高くなっています。全体としても、一般企業の研究職に比べて博士号取得者の在籍割合が高く、積極的に活用されていることがうかがえます。

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出典:経済産業省令和5年度大学発ベンチャー実態等調査 2024.5.15

本項目のn数については、「現在在籍(2023年10月1日現在)」と「定義」にて回答のあった企業を集計対象として抽出しています。また、大学発ベンチャーにおける「総数」は正社員数と非正規社員数の和です。一般企業の研究職については、「2023年(令和5年)科学技術研究調査結果」(総務省統計局)を基に作成しています。

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