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生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方とその対応

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生成AIの技術の進展は、ビジネス機会の創出やさまざまな社会課題の解決などに資することが期待されており、生成AI時代に対応したDX(デジタルトランスフォーメーション)推進には、新たな人材とスキルが不可欠となっています。

たとえば、テクニカルスキルでは、AI/MLの専門知識、データエンジニアリング、そしてセキュリティ意識が求められます。これらのスキルは、生成AIを効果的に活用し、データを安全かつ効率的に処理するために必要となります。

また、人間ならではの、戦略的思考力や、イノベーションマインド、高度なコミュニケーション能力とリーダーシップも求められていくでしょう。

さらに、技術の急速な進化に対応するためには、柔軟性と継続的な学習意欲が必要であり、このような多面的なスキルセットが、生成AI時代のDX推進において重要となっています。

政府が進めるデジタル人材育成のための政策

政府としても、生成AI時代に対応したDX人材・スキルについての検討を進めています。経済産業省は2023年9月15日、「第3回 デジタル人材育成推進協議会」を開催しました。

この中から、経済産業省の政府の生成AI時代におけるDX推進に必要な人材・スキルの考え方とその対応について、紹介をしたいと思います。

経済産業省では、企業のDX推進の変化を踏まえて、新たな時代に即したデジタル人材政策の方向性について議論を行う検討会となる、「デジタル時代の人材政策に関する検討会」を開催。本検討会では、AI戦略会議の「暫定的な論点整理」(5月26日)に、

デジタル⼈材の育成・確保も重要。学びの指針となるデジタルスキル標準などに関して、生成AI の登場を踏まえた必要な見直しを早期に検討すべき

が盛り込まれたことを受け、生成AIの登場やその進化を踏まえ、デジタル人材の育成の在り方への影響に関して検討を進めています。

主な検討事項として以下の内容をあげています。

・人材育成に係る生成AIのインパクトをどのように捉えるか
・人材育成・人材のスキルに及ぼす具体的な影響(各スキルの重要度の変化や新たに必要となるスキル)
・生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方(デジタルスキル標準や試験の出題内容の見直し、デジタル人材育成プラットフォームの活用策等を含む)

本検討会の中では、生成AIを適切かつ積極的に利用する人材・スキルの在り方について集中的に議論し、(1)生成AIがもたらすインパクトなどの現時点で採るべき対応を「アジャイル」に取りまとめています。

(1)生成AIがもたらすインパクト

生成AIは、使いやすさにより年代を問わず広まり、専門業務の代行にも寄与しています。ホワイトカラーの業務を中心に、生産性や付加価値の向上などに寄与、大きなビジネス機会を引き出す可能性があるとしています。

企業視点では、生成AI利用によるDX推進の後押しを期待、そのためには経営者のコミットメント、社内体制整備、社内教育の他、顧客価値の差別化を図るデザインスキルなどが必要としています。

(2)人材育成やスキルに及ぼす影響

人材育成と技術変化のスピードのミスマッチに留意し、環境変化をいとわず、主体的に学び続ける必要性を挙げています。

また、生成AIを適切に使うスキル(指示の習熟)とともに、従来のスキル(批判的考察力等)も重要としています。

自動化で作業が大幅に削減され、専門人材も含めて人の役割がより創造性の高いものに変わり、人間ならではのクリエイティブなスキル(起業家精神等)やビジネス・デザインスキルなどが重要になっていることも挙げています。

生成AIの利用によって社会人が業務を通じて経験を蓄積する機会の減少を認識する必要もあるとしています。

(3)⽣成AI時代のDX推進に必要な⼈材・スキル(リテラシーレベル)の考え⽅

⽣成AI時代のDX推進に必要な⼈材・スキルの考え⽅では、以下の3つを挙げています。

マインド・スタンス(変化をいとわず学び続ける)やデジタルリテラシー(倫理、知識の体系的理解等)

②言語を使って対話する以上は必要となる、指示(プロンプト)の習熟、言語化の能力、対話力等

経験を通じて培われる、「問いを立てる力」「仮説を立てる力・検証する力」

(4)生成AIをDX推進に利用するために

生成AIをDX推進に利用するために、以下の3つを挙げています。

・部分的な業務効率化のみならず、全社的なビジネスプロセス・組織の変革、製品・サービス・ビジネスモデル変革に繋げることが重要

・まずは適切に使い、生成AIのリテラシーを有する人材を増やすフェーズ、そのための経営層の理解や社内体制などが重要

・企業価値向上に繋げるため、生成AIの利用スキル等を社員が身につけるための社内教育、担い手確保に取り組む大きな機会

(5)経済産業省における政策対応

・ 「デジタルスキル標準(DSS)」の見直し
・「マナビDX」への生成AI利用講座の掲載
・「ITパスポート試験」のシラバス改訂やサンプル問題の公開 等

(6)中長期的な検討課題

・ 専門的なレベルでの人材育成やスキルへの影響の継続検討
・「デジタルスキル標準」の更なる見直し検討
・「情報処理技術者試験」の出題内容等の見直し検討

今後の展望

生成AI時代におけるDX推進は、テクニカルスキルだけでなく、戦略的・人間的なスキルも含めた多面的な人材育成が求めらています。

政府、企業、教育機関が連携し、AI前提の新しい時代に適応した人材を育成していくことが今後の大きなテーマの一つとなっていくでしょう。自分自身も活用できるように、学び続けていきたいと思います。

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