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2022年度の自治体業務アウトソーシング市場規模は大きく縮小、今後はガバメントクラウドの影響も

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矢野経済研究所は2023年9月15日、「国内の自治体業務アウトソーシング市場について調査を実施し、市場規模及び市場動向、将来展望」を公表しました。

コロナ対策系業務の需要が減少し、2022年度の自治体業務アウトソーシング市場規模は前年度比83.2%の2,244億円に縮小

自治体業務アウトソーシング市場の市場概況

2021年度は、コロナ相談窓口やワクチン接種予約コールセンター、接種券印刷・発送、大規模接種会場での案内・誘導、接種後のデータ入力等のバックヤード業務などコロナ対策系業務など、自治体業務アウトソーシング市場全体の7割近くを占め、特需のような大口需要が発生しました。

2022年度は、子育て世帯や非課税世帯への給付金支給業務や、中小事業者への支援金支給業務などの物価や原油価格の高騰対策を背景としたアウトソーシング需要が発生しています。

しかし、前年度までのコロナ対策系業務ほどの大口の需要とはならず、下期からコロナ対策系業務のアウトソーシングも減少したため、2022年度の自治体業務アウトソーシング市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比83.2%の2,243億5,000万円と市場は縮小しています。

コロナ対策系業務のような大口需要の影響が小さくなることで、2020年度から2025年度までの年平均成長率(CAGR)は△1.7%となり、2025年度の自治体業務アウトソーシング市場規模は1,012億円になると予測しています。

ガバメントクラウドが大きく影響

政府共通システム基盤「ガバメントクラウド」を活用した自治体基幹業務システムの統一・標準化の影響によって、住民からの電子申請の割合が増えてくれば、職員の対応範囲が広がる一方で、自治体業務アウトソーシングの利用は減少することになるとしています。

矢野経済研究所では、自治体においては、高齢者対応など紙や電話が必要な業務があり、全ての業務をデジタル化することは難しいため、人手が必要となる業務は残る、と考えています。

また、デジタル化が進んだとしても、行政サービスは人と人との対応が基本であるため、その接点となる窓口業務は残る、と予測しています。

政府共通システム基盤「ガバメントクラウド」により自治体ごとにバラバラに行っていた基幹業務が標準化・デジタル化されていけば、複数の自治体による共同事務センター化が進むとも予測しています。

例えば、子育て支援など、プラットフォームに乗せやすい業務を中心に、共同事務センターを利用した形での自治体業務アウトソーシングの利用が増加していく、と見込んでいます。

将来展望

2023年度は、非課税世帯への給付金などの物価高を背景とした経済対策関連でのアウトソーシングが発生しており、今後そのような新たな需要が大きくなってくる可能性はあるとしています。

しかし、コロナ対策系業務の需要が減少しているため、2023年度の自治体業務アウトソーシング市場規模は前年度比53.4%の1,197億円と大幅に縮小すると見込んでいます。

現時点では、新型コロナウイルスに関連して発生していた特需のような大口需要を今後見込むことはできないが、「戸籍住民系業務」「税務系業務」「国保・介護系業務」「こども関連系業務」など自治体において定常的に発生する業務のアウトソーシング需要については微増ながらも増加していく、と予測しています。

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出展:矢野経済研究所自治体業務アウトソーシング市場 2023.9.15

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