5Gビジネス拡大の果たす役割、日本経済と国際競争力への寄与は?
総務省は2023年5月11日、「5Gビジネスデザインワーキンググループ(第8回)」を開催しました。
本会合において、 5Gビジネスデザインに向けた論点整理(案)をしています。この中から、5Gビジネスの拡大は、日本の経済成長や国際競争力の強化にどのように寄与するか、という点に焦点をあててみたいと思います。
5Gビジネスの拡大は、日本の経済成長や国際競争力の強化に多大な寄与することが期待されています。その主な理由は、5Gの持つ「超高速」、「超低遅延」、「多数同時接続」という特長が、デジタルトランスフォーメーション(DX)を通じて経済活動や社会生活を大きく変革する可能性があるからです。
5Gは「デジタル田園都市国家構想」の実現に欠かせないインフラとして位置づけられています。この構想は、日本全体を一つの都市とみなし、地域間の情報格差をなくすことで、地方でも高品質なサービスを享受できるようにするものです。5Gはその高速・大容量通信が、地方の地域課題解決やイノベーション創出に大きく寄与します。特に地方では、人口減少や少子高齢化による経済縮小を防ぐためにも、5Gを用いた新たなビジネス創出やサービス提供の拡大が期待されています。
また、5Gビジネスの拡大は、日本における国際競争力の強化にも寄与することも期待されています。2020年代後半にかけて、5Gをビジネスとして社会に実装させていくことで、日本の優位性を確保できると期待されています。先進的な5Gビジネスを世界に先駆けて確立することにより、国際的なプレゼンスを向上させ、中長期的な国際競争力の強化につながります。Beyond 5Gも含めた先端技術の開発・普及と並行して進められるべきであるとしています。
5Gビジネスの中でも、ミリ波等の高周波数帯を活用したビジネスは注目すべき点もあげています。ミリ波は、相対的にGAFAM(Google, Amazon, Facebook, Apple, Microsoft)の影響力が小さい分野で、新たな競争の余地があります。日本は部品競争力や製造業といった競争優位な産業群を持ち、都市管理と郊外・過疎地対応の両方のニーズを満たすフィールドを有しています。これらの要素を活用して、ミリ波ビジネスを一層推進することで、新たな経済成長を促し、国際競争力を強化することが期待できます。特に、自動車や産業機器といった産業におけるビジネスモデルの発展をサポートするためにも、高周波数帯の開拓は重要となっています。
さらに、5Gは全ての産業セグメントで新しい価値創造のドライバーとなり得る可能性があります。交通産業、エネルギー、都市など、あらゆる産業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を牽引し、大きな経済効果を生み出すことが期待されています。特に、サイバー空間とフィジカル空間の融合が進むSociety 5.0を支えるインフラとして、5Gの重要性はますます高まるでしょう。
しかし、一方で5Gの普及を進める上では、一部の課題も残されています。多くの国民が5Gの利便性をまだ実感できていないという現状があります。この課題を克服し、国民全体が5Gの利便性を実感できるような形で5Gを社会に実装することが重要となる点もあげています。
6Gへの展望についても触れられています。5Gの先進性を高めることは、6Gでの優位性を確保する意味でも重要となっています。世界各国がこれからミリ波の本格的な利用を始めようとする中、日本が世界をリードし、そのアドバンテージを6Gへとつなげるチャンスが、今まさにめぐってきています。5GからBeyond 5G、そして6Gへと進化する通信技術は、日本経済の成長と国際競争力の強化に不可欠な要素となります。
先進的な技術開発とともに、5GやBeyond 5Gの普及と利便性の実感、そして6Gへのスムーズな移行を図るためには、国家戦略としての取り組みが求められます。これには、インフラ整備やローカル5G等の新しい技術を取り入れて地域課題を解決する取組が含まれます。また、人口減少と経済規模の縮小に対抗するために、バーチャルの世界で新たな経済活動を起こし、経済発展を目指すといった取組も重要になります。
さらに、5Gとその先の通信技術を活用したビジネス展開は、日本が世界に対してリーダーシップを発揮するための大きなチャンスとなります。特に、ミリ波の利活用においては、日本が世界をリードする可能性があり、その優位性を6Gへとつなげることが重要となっています。
その一方で、5Gの普及やビジネス展開には、国民一人ひとりが5Gの利便性を実感できる形での普及が不可欠です。これには、業界連携やゲームチェンジといった新たな動きを契機として、5Gの普及とビジネス展開を進める必要があります。
5Gビジネスの拡大は、日本の経済成長や国際競争力の強化に大きく寄与するとことは期待されています。しかし、そのためには、技術開発だけでなく、国民一人ひとりがその利便性を実感できる形での普及、さらには国家戦略としての取り組みが必要となります。これらの取り組みを通じて、5Gから6Gへと進化する通信技術が、日本の経済と社会に大きな影響を与えることが期待されます。