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「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」中間とりまとめから

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総務省は2023年2月10日、「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」中間とりまとめを公表しました。

総務省では、メタバース等の利活用や、Web3の市場が拡大しつつある中、利用者利便の向上、その適切かつ円滑な提供及びイノベーションの創出に向け、ユーザの理解やデジタルインフラ環境などの観点から、様々なユースケースを念頭に置きつつ情報通信行政に係る課題を整理することを目的として、令和4年8月から「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」を開催し、議論しています。

■主な検討課題
○メタバースのアバターの在り方等、利用者利便の向上に繋げるための課題
○ユースケース毎のビジネス化に向けた課題の整理
・ 地域活性化、観光、都市計画等
・ テレワーク(バーチャルオフィス)
・ 教育・研修等 等
○メタバース等の利活用拡大が与える影響
・ デジタルインフラへのインパクト
・ 社会経済活動の変革
・ 利用者への影響(負の影響を含む)

等をあげています。

これまでの研究会における議論を整理し、これを「中間とりまとめ」として公表するとともに、本中間とりまとめにおいて示された論点について、令和5年2月10日(金)から同年2月24日(金)までの間、意見募集を行っています。

メタバース等の利活用は大きく進展しています。

通信の高速化、コンピュータの描画性能向上等に伴い、コミュニケーションが可能なインターネット上の仮想空間である「メタバース」が普及し始め、全国の様々な地域がメタバース上で再現される、メタバース上で経済活動が行われる、など高い注目を集めているとしています。

メタバースは、サイバー空間において距離や時間、活動範囲など様々な制約から解放されるため、今後の我が国の発展に向け、社会の変革に大きな可能性を有している点もあげています。

また、2030年までに世界のメタバース市場が約17倍へと拡大が見込まれている中、オンラインゲームやそのインフラ等にかかわってきた企業を中心に様々なプレイヤーが参入し、市場競争が激化している点も紹介しています。

検討に当たっての考え方は、

政府としては、メタバースに係るイノベーションの促進に取り組むとともに、普及の過度な制約にならないよう留意しつつ、安全・安心なサイバー空間の確保に向けた対応を進めることが必要。

将来的にメタバースがより一般に普及することを見据え、前述のようなサイバー空間に関する新たな課題について、様々な問題として顕在化してから検討を始めるのではなく、まずは、どのような課題が存在する・しうるのか把握・整理することとする。

様々な課題が想定されるところ、共通理解を得やすいように用語の整理を行った上で、

①ユーザによるメタバース利用時の留意点
②メタバースの提供者による今後の展開
③デジタルインフラ等の社会・経済全般への影響

という視点から、課題を整理しています。

本研究会における議論において提起された主要な論点は以下のとおりであり、関係省庁とも連携しつつ、今後の検討につなげていくとしています。

(1)メタバースのアバターの在り方等、利用者利便の向上に繋げるための課題
①現実世界とユーザとの関係
・ メタバースは現実世界の上に成立しており、その存続は物理層に依存している。そのような前提に立つと、仮想空間上の出来事が現実世
界に影響を及ぼしうることを念頭に置く必要がある。
②アバターの在り方
・ アバターを操る人がいない(NPC:Non Player Character)場合もあるところ、操る人(「中の人」)の存在が前提となっているか、必
要な場合には「中の人」の存在をユーザが判別できるような仕組みとなっているかは重要な論点である。また、そのアイデンティティやプライバシーの保護については、本人とアバターとの同一性の認識や、本人がどの程度アバターに投射されているか(自己投射率)などがユー
スケースごとに異なると考えられるが、その程度は第三者からはわかりにくい。
・ アバターの「なりすまし」などの不正防止等については、事業者側でも様々な取組が行われているため、自由な競争に委ねるか、又は規範
が必要なのか、関係者間での対話を通じた価値判断の共有を図ることが必要である。
③ユーザへの負荷
・ 軽量化したVRデバイスの出現や、長時間利用の際の身体への負荷の軽減、デバイス価格の低廉化について、技術・ビジネス動向の注視が必要。

(2)ユースケース毎のビジネス化に向けた課題の整理(例:バーチャルオフィス、デジタルツインの産業活用、教育・訓練、実在地域のメタバース・デジタルツイン化)
①事例横断的な論点
〇 プラットフォーマーの動向等
・ 異なるプラットフォーム上に存在するワールド間には、互換性、相互接続性がない。他方で、複数のプラットフォーム間でアバターが行き来で
きるようにするための相互接続性の確保に向けた標準化の動きは始まっている。
・ メタバース内で適用されるルールについて、プラットフォーム・ワールドの提供条件を関係者にわかりやすく説明することが求められる。
〇 仮想空間内の事物への法制度の適用
・ デジタルオブジェクトの権利等に対する知的財産権等の適用、アバターへのパブリシティ権や肖像権の適用、購入したモノ(無体物)の
法的位置づけ等、仮想空間内の事物に対する法適用や権利処理はどうあるべきかといった点は論点となる。
〇 国際標準化の動向等
・ 高度なデータ圧縮技術や3Dデータの規格等について標準化に向けた動きが進んでおり、こうした取組について、我が国としてどのように
推進していくべきかは重要な論点となる。
②ユースケース毎の論点(例)
〇 バーチャルオフィス
・ バーチャルオフィス導入企業の従業員等のデータが収集される可能性があり、メタバース提供事業者、導入企業等だけでなく、従業員等
との間においても、取得・提供データの類型・精度・利用主体等の明確化及びルール化が論点となる。
〇 デジタルツイン※の産業活用 (※現実世界を模した、人の存在を前提としない仮想空間)
・ 高速道路等の管理の効率化、土木工事などの生産性向上や事故防止に、デジタルツインを活用したシミュレーション等が有効。複数の管
理者の連携に向けたデジタルツイン上で利用されるデータの標準化や、(工事等の工程の)一部のICT化ではなく工程全体をシミュレー
ション可能とする仕組みが重要となる。

(3)メタバース等の利活用拡大が与える影響
①デジタル技術
・ メタバースの実現にあたっては、レンダリング(描画)の高精細化とネットワーク負荷がトレードオフの関係にあり、将来的には、ネットワークの
末端(エッジ)にあるシステムで描画等の処理を行う、Multi-Access Edge Computing(MEC)の活用が期待される。
・ メタバース経由で自然なコミュニケーションを行うためには、End to Endでの応答性が求められる。これには、通信帯域だけでなく、遅延の低減も重要。

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