スポーツビジネスとWeb3 〜「スポーツDXレポート」から
経済産業省は2022年12月7日、「スポーツDXレポート」の取りまとめを公表しました。
今回はこの中から、スポーツビジネスとWeb3についてとりあげたいと思います。
NFT等のWeb3.0時代の新しいサービスの台頭では、海外では写真や動画のNFTがランダムに封入されたパッケージの販売や二次流通市場の提供等Web3.0サービスが登場し、成長しています。
国内ではNFTのランダムパック販売と二次流通市場を併せたサービスや、スポーツトークンの市場については法的な予見可能性に課題があるとも指摘しています。
近年急速に発展・拡大しているブロックチェーン技術だが、スポーツでも、そのコンテンツ力をブロックチェーン上のデジタル資産とすることで、ファンエンゲージメントの手段とするサービスが広がっています。
デジタル資産を活用したビジネスは、主にNFT(Non- Fungible Token)とスポーツトークンに分類しています。
出典:経済産業省 「スポーツDXレポート」 2022.12
NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)とは、「偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ」のことであり、ブロックチェーンの技術を用いて発展したものを指します。
従来、容易にコピー・改ざんができるため、資産価値を持ち難かったデジタルデータに、資産価値を持たせることが可能になり、アートやゲーム、スポーツなどの幅広いカテゴリーにおいて活用されています。
スポーツでは、スポーツの持つコンテンツ価値の商品化手段が広がるという利点のみならず、ブロックチェーン技術で可能になるスマートコントラクトを活用することで、コンテンツホルダーであるリーグやクラ
ブ、選手等への収益還元が容易になるという点も利点といえるとしています。
さらに、NFTを活用したサービスは、既存のスポーツファン層を超えて幅広く様々な層にリーチする手段としても期待されています。
出典:経済産業省 「スポーツDXレポート」 2022.12
NFTについては、市場規模、取引額ともに2020~2021年に大きく拡大。市場の取引数を示す「Active Wallets」(NFT取引に使用される「財布」の数)も、2020年に数値が急伸しています。
取引量の多さ、取引価格の手軽さから、他の分野のNFTと比較してもスポーツ関連のNFTは人気。流通量は2021年1~6月に約30万となっています。
出典:経済産業省 「スポーツDXレポート」 2022.12
海外では北米4大リーグ、欧州有名サッカークラブ、有名アスリート等が相次ぎNFTを活用したサービスを展開しています。
試合のハイライト映像の発行に加え、マーケットプレイス機能を有するサービスの展開や、競技以外のコンテンツをNFTアイテム化する等、幅広い事例が存在しています。
出典:経済産業省 「スポーツDXレポート」 2022.12
特に、海外のスポーツ×NFTのサービスで大きく話題になったのがNBA Top Shotです。
Dapper Labs社により提供され、NBA選手のハイライト映像(モーメント)をNFT化し販売・流通させるサービスです。
中身の分からないランダムパック販売と、利用者間で特定のモーメントの売買を行う2次流通のマーケットプレイス運営が主要機能となっています。
2022年3月時点までの総取引額(二次流通市場)は約906百万ドルに及んでいます。なお、二次流通市場での取引額の5%が手数料として徴収される仕組みとなっており、事業収益のうち、一定額がリーグ及びNBA選手会に還元されます。
出典:経済産業省 「スポーツDXレポート」 2022.12
国内でも、スポーツにおけるNFTの導入事例が出てきています。
ただし、NFT関連サービスにおいては、国内リーグ・チームによる販売実績は存在していますが、「ランダム複数パックの一次販売」と、「利用者同士の売買機能を提供する二次流通市場」を併せ持つサービスは生まれていない状況です。
出典:経済産業省 「スポーツDXレポート」 2022.12
スポーツトークンについてもとりあげたいと思います。スポーツトークンはFungible Token(代替性トークン)の一部です。
Fungible Tokenとは、一般にブロックチェーン上で発行される代替可能なデジタルトークン(証票)のことです。
その他暗号資産と同様に、デジタル資産と見なされ、取引所で取引されるものも多くなっています。
Fungible Token は、暗号資産(仮想通貨)やスポーツトークン等で活用されており、代替性のあるトークンが数多く流通する点でNFTと異なります。
スポーツトークンは、主にクラブ等が、ブロックチェーン技術を用いた代替性トークンを発行することで活用されています。
トークン保有者にはノベルティや様々なイベントへの参加権などが提供され、いわゆるファンクラブに近い性質を持ちます。
出典:経済産業省 「スポーツDXレポート」 2022.12
海外のスポーツクラブが発行するスポーツトークンは、暗号資産取引所(暗号資産マーケットプレイス)で取引されることが多く、マーケットプレイス上では50種類のスポーツトークンが流通しています。
スポーツトークンの保有者はクラブの意思決定に関する投票や様々な特典に活用することができるため、ファンとのエンゲージ手段として期待されているほか、資産としての価値を期待する側面も持ち合わせ
ていると考えられます。
2021年8月には、サッカー・アルゼンチン代表のリオネル・メッシが、パリ・サンジェルマン(PSG)への移籍にあたり、契約金の一部をSocios.comが提供するスポーツトークンで受け取ったことが国内外で広く報道されています。
出典:経済産業省 「スポーツDXレポート」 2022.12
国内でも、スポーツトークンの導入事例が出てきています。スポーツトークンが暗号資産として取引されるか否かによって、取引方法が異なります。
出典:経済産業省 「スポーツDXレポート」 2022.12