産業分野での5Gの商用導入は2022年頃から始まり、2024年頃に本格化 〜IDC の調査から
調査会社のIDC Japanは2021年6月4日、「国内産業向け5G関連IT市場予測と、5Gに対する調査結果」を発表しました。
IDCの見解では、2020年3月のモバイル通信事業者による5G通信サービス(以下、パブリック5G)の商用サービス開始以降、サービス提供エリアが拡大し、ローカル5Gでは実証実験への取り組みも増加しています。
IDCでは、2019年11月と2020年12月の2回に亘り、国内でIoT機器サプライヤー(IoT機器を提供する企業)とIoT機器バイヤー(IoT機器を利用する企業)に対して、5Gの採用や利用に関する調査を実施しています。
これらの調査結果の比較から、2020年の1年間で、企業の5Gに対する意識が大きく変化しています。IoT機器サプライヤーでは、今後、最も重要になるネットワーク規格として5Gを挙げた比率は、2019年11月に26.0%であったものが、2020年12月には36.5%と、10ポイント以上増加し、より多くのIoT機器サプライヤーが、5Gに注目するようになっています。
一方、IoT機器バイヤーでは、
パブリック5Gが今後、最も重要なネットワークになると答えた比率が15.0%(2019年11月)から9.3%(2020年12月)へと下落、
ローカル5Gについては8.7%(2019年11月)から12.3%(2020年12月)へと上昇、
無線LANが最も重要になると回答した企業は、19.0%(2019年11月)から28.7%(2020年12月)へと10ポイント近く増加しています。
IDCでは、このようなIoT機器バイヤーの意識の変化を、今後の導入増加につながるものとして、2020年以降、パブリック5Gとローカル5G、ローカル5Gと無線LANの優劣の比較や使い分けの議論が多く行われるようになり、企業の理解が深まったと考えらるとしています。
企業が今後、最も重要になると考えるネットワーク:セグメント別
出典:IDC Japan 2021.6
またIDCでは、ユーザー企業や通信事業者、ベンダーなどに対する調査結果から、国内の産業向け5G関連IT市場の2027年の市場規模を2,106億円、2020年~2027年の年間平均成長率を80.3%と予測しています。この市場には、5Gの仕様を必要とし、かつ5G活用を前提にしたITシステム(ネットワークを含む)構築/運用のためのITインフラストラクチャ、ソフトウェア、サービスに対するエンドユーザー支出が含まれています。
国内産業分野向け5G関連IT市場規模予測:2020年~2027年
出典:IDC Japan 2021.6
IDCでは、今後の展望として、産業分野での5Gの商用導入は2022年頃から始まり、2024年頃に本格化すると予測しています。
現在のところ、産業分野における5Gに対する取り組みの多くは実証実験に留まっていますが、2022年以降、産業分野での5G規格の本命とされる5G SA(スタンドアロン)構成のサービスやデバイスなどが増加し、利用環境が整うことによって、商用導入に踏み切る企業が増えると予測しています。
さらに、5Gと親和性が高い他の技術分野でも、2022年前後に照準を合わせた製品開発や規制緩和の検討が進められています。たとえば、国内では、2022年にドローンの有人地帯での目視外飛行が解禁される見込みです。また主要なAR/VRベンダーの多くが2022年に新たなデバイスの投入を計画しています。5Gと、このようなイノベーションを可能にする新たなテクノロジーの相乗作用によって、国内においても、DX(デジタル変革)への取り組みがますます加速すると予測しています。