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これからの求められる雇用コミュニティ 〜"囲い込み型"から"選び、選ばれる関係"へ 〜

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経済産業省は2020年9月30日、「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 ~ 人材版伊藤レポート ~」を公表しました。

この中から、今回は、「これからの求められる雇用コミュニティ」について、とりあげたいと思います。

本報告書では、

人的資本の変革の方向性として、

(1)人材マネジメントの目的:"人的資源・管理"から"人的資本・価値創造"へ
(2) アクション:"人事"から"人材戦略"へ
(3)イニシアティブ:"人事部"から"経営陣・取締役会"へ
(4)ベクトル・方向性:"内向き"から"積極対話"へ
(5)個と組織の関係性:"相互依存"から"個の自律・活性化"へ
(6)雇用コミュニティ:"囲い込み型"から"選び、選ばれる関係"へ

の6つを示しています。

今回、紹介するのが6番目の「雇用コミュニティ:"囲い込み型"から"選び、選ばれる関係"へ

です。

日本では、新卒一括採用や終身雇用、年功序列日本型の雇用慣行、人材戦略により、多くの企業が、個人を囲い込むような雇用コミュニティを構築するとともに、ポテンシャル重視の新卒一括採用、終身雇用を前提に、「メンバーシップ型」といわれる雇用慣行をつくりあげ、成長のドライバーとしてきた。

同質性の高い品質の効率的な提供が主目的であった事業環境においてはメンバーシップ型にはメリットがあった一方、事業環境が急速に変化し、非連続的なイノベーションが頻発するとともに、個人の価値観・ニーズも多様化する中で、変化に対応した人材の育成・獲得や、従業員の専門性の向上等の観点で課題も顕在化してきている。

雇用コミュニティの在り方については、各社の経営戦略に適した人材戦略を策定・実施していく中で、経営判断していく必要があるが、個人が自律・活性化し、企業と対等な関係になっていくことを考えれば、囲い込み型ではなく、企業と個人が、互いに選び選ばれる、多様性のあるオープンな雇用コミュニティを推進していくことが求められる。

こうした雇用コミュニティの中では、人材の国籍や属性も多様になるとともに、中途・経験者採用、兼業・副業の推進や受入れ、ギグワーカーやフリーランスの活用も増え、多様な価値観や専門性を持つ人材で雇用コミュニティが構成されるため、個人のモチベーションのドライバーも多様になる。こうした、多様な価値観や高度な専門性を持つ人材にアクセスし、獲得・活躍してもらうためは、特に、グローバルマーケットで競争している企業において、ポストに求められる職務内容を明確にし、その職務の遂行に必要なスキルを有する人材の活躍を促す「ジョブ型」雇用の促進が求められる。

現在でも、中途採用・経験者採用では、ジョブを明確にした雇用形態が多いが、新卒採用の段階でも、一部の企業では、職務内容を明確にした採用が行われている。例えば、専門性が明確な AI やコンピューターサイエンス等の職種においては、新卒採用の段階からジョブ型雇用となってきており、この対象は拡大されていくことが見込まれる。また、ジョブを明確にした長期インターンシップ等も個人のキャリア形成にも有効であり、今後、増えていくことが見込まれる。

ジョブ型への雇用形態の転換に際しても、イノベーション創出を含めた自社の競争優位性を強化する観点や、働き手の専門性や意識面の観点も含めて、どういった時間軸で、具体的にどの様な方向性を目指すのか、業種や会社の状況に応じた各社の経営判断となる。その際、ジョブ型への移行に向けた移行措置としてメンバーシップ型とジョブ型のハイブリッドにしていく方向性も想定される。例えば、総合職で入社して 20 代は配置転換等も経験する中で専門性を高め、30 代からはジョブ型に移行し、管理職クラスは全ポジションを公募制にして年功序列を打破するなど、働き手の専門性や意識面も踏まえながら取り組むアプローチも想定される。その他、企業の成長フェーズや業種等によっては、メンバーシップ型からジョブ型雇用に雇用のポートフォリオを組織全体で順次移行していくアプローチも想定される。

なお、多様性のあるオープンな雇用コミュニティを推進していく際には、企業間での育成出向(交換留学)や、投資先企業への出向、兼業・副業の推進など、組織を軸にしながら、その枠にとらわれない個人の成長機会や経験(EX)の設計も重要となる。

出所:経済産業省 持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 2020.9.30

まさに、これからの時代は、雇用コミュニティのあり方が重要になると、個人一人ひとりは、

組織を軸にしながら、その枠にとらわれない個人の成長機会や経験(EX)の設計も重要

となるでしょう。

人生100年時代、そして、新型コロナウイルスの影響により、この動きはますます顕著になっていくのではないかと考えています。

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