持続的な企業価値の向上と人的資本 の変革の方向性
経済産業省は2020年9月30日、「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 ~ 人材版伊藤レポート ~」を公表しました。
今回はこの中から、「持続的な企業価値の向上と人的資本 の変革の方向性」についてとりあげたいと思います。
本報告書のポイントは以下のところです。
まず何よりも、各企業の経営陣が率先して、企業理念や存在意義(パーパス)に立ち戻り、目指すべき将来のビジネスモデルや経営戦略からバックキャストして、保有する経営資源との適合性を問う必要がある。とりわけ、人的資本の観点から、そうしたビジネスモデルとのギャップを見える化し、それを埋めていくことが求められる。人材戦略を経営戦略に適合させるという一方向の見方だけでなく、人材や人材戦略自体が、経営戦略自体の可能性を広げることにも注目すべきである。こうした人材戦略と経営戦略を同期させるプロセスを通して、中長期的な企業価値の向上に努める必要がある。
本報告書では、これからのあるべき人材戦略を特徴づけるものとして「3P・5F モデル」を提唱している。3 つの視点(Perspectives)と 5 つの共通要素(Factors)に着目して、企業価値の持続的向上につながる人材戦略を策定・実行することを経営陣に求めている。
本報告書で求められている人的資本の変革の方向性は以下のとおりです。
変化が激しい時代には、これまでの成功体験に囚われることなく、企業も個人も、変化に柔軟に対応し、想定外のショックへの強靱性(レジリエンス)を高めていく変革力
が求められています。
出所:経済産業省 持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 2020.9.30
企業は様々な経営上の課題に直面してますが、これらの課題は、人材面での課題と表裏一体であり、スピーディーな対応が不可欠となっています。このため、各社がそれぞれ企業理念や存在意義(パーパス)まで立ち戻り、持続的な企業価値の向上に向け、人材戦略を変革させる必要であると指摘しています。
経営課題と人材戦略上の課題は直結しています。
出所:経済産業省 持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 2020.9.30
人材マネジメントの目的は
"人的資源・管理"から"人的資本・価値創造"へ
と指摘しています。
人材を「人的資本(Human Capital)」として捉え、「状況に応じて必要な人的資本を確保する」という考え方へと転換する必要があるとしています。こうした捉え方の下では、マネジメントの方向性も「管理」から人材の成長を通じた「価値創造」へと変わり、人材に投じる資金は価値創造に向けた「投資」が重要となってきます。
もう一つ重要と感じているのは、
個と組織の関係性:"相互依存"から"個の自律・活性化"へ
です。
企業は、画一的なキャリアパスを用意するのではなく、多様な働き方を可能にするとともに、働き手の自律的なキャリア形成、スキルアップ・スキルシフトを後押しすることが求められる。こうした取組とあわせて、多様な人材・価値観を受け入れ、その価値観を発露・具現化できる環境を創りあげ、従業員の経験や機会(EX)を魅力的なものとする必要がある。さらに、AI 人材など専門性の高い人材の活躍に向けて、社外の人材に対して積極的に関与し、兼業・副業やフリーランスを含め、多様な雇用形態や機会の提供等を追求していくことも求められる。
個人は、キャリアを企業に委ねるのではなく、キャリアオーナーシップを持ち、自らの主体的な意思で働く企業を選択することが求められる。同時に、人生 100 年時代の中で、社会で活躍する期間が長くなることも見据え、社会人になった後も継続的な学び直し、時代にあったスキルセットを身につけることが求められる。
となっているように、個人がそれぞれ、キャリアオーナーシップを持ち、主体的に行動していくことが重要だと考えており、自分自身も実践していきたいと考えています。