新型コロナ後のデジタルを前提とした「新たな日常」への適応
経済産業省は2020年6月17日、「第26回 産業構造審議会総会」を開催しました。
本総会の「新型コロナウイルスの影響を踏まえた経済産業政策の在り方について」から、新型コロナ後のデジタルを前提とした「新たな日常」への適応に焦点をあてて紹介をしたいと思います。
新型コロナ発生前から、世界のCPS/IoT市場は7%の成長見込み。国内5G市場は2030年までに300倍に急拡大の見通しであり、 新型コロナの影響で、平日昼間にデータ通信量が最大50%を超える増加。インフラ整備の加速が必要となっています。
NTTコミュニケーションズのインターネットトラフィック(通信量)推移データをみても、平日昼間で最大50%を超えるデータ通信量が増加しています。
フィジカルとサイバーの接続のためのID基盤・データインフラの整備に関する課題も指摘しています。
これまでは人間による入力等を介して接続していたフィジカル空間とサイバー空間を直接接続するため
には、個人・企業、空間位置・状態、属性など、フィジカル空間での存在に関する情報がサイバー空間
で適切に識別されることが必要としています。
日本では、マイナンバーカードや法人ID等の基盤整備が進められているが、普及が思うように進まず課題となっています。
フィジカル空間がサイバー空間と直接接続する社会のあり方が重要となっています。
出所:経済産業省 第26回 産業構造審議会総会
デジタルを前提とした規範・ルールの整備に関する課題もあげています。
現在の規範・ルールが根本からデジタルを前提としたものになっていないことから、イノベーションを促進しようとして規制を緩和した結果、新たなリスクの規律が困難に。これに対処するために規制を強化すれば、新たなデジタルイノベーションが阻害されてしまうというジレンマが発生する「ガバナンス・ギャップ」の課題も指摘しています。
非接触・無人化・自動化といった新たなビジネスの普及・拡大の阻害要因になっているおそれもあげています。
出所:経済産業省 第26回 産業構造審議会総会
デジタル化の加速と併せて国際的なルールメイキングも必要とし、感染者を検知するアプリなどの開発・導入が進む中で、プライバシー保護とのバランスを確保することが必要になるなど、国際的なルールメイキングの必要性も高まっているとしています。
出所:経済産業省 第26回 産業構造審議会総会
デジタル技術により社会システムを変革するための政策の方向性では以下の4点を示しています。
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新型コロナにより、様々なコミュニケーション・ビジネス・生活をサイバー空間に移行させる必要性が一気に高まったが、日本では、サイバー空間で個人・企業を速やかに認識できない。企業・国民に対する政府の支援策の実施や感染者の隔離といった局面でのデジタル技術の活用にも課題が残る。まずは、フィジカルとサイバーをつなぐ入り口である、ID基盤・デジタルインフラの整備を加速すべきではないか。
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また、AIや無人ロボット等の新たなデジタル技術により困難の克服を試みるにも、デジタルを前提とした規範・ルール、その運用体制が未整備であることが、柔軟な取組を阻害。特に、プライバシーに関わる情報も含めた公正な活用ルールを整備し、あわせて、AIの活用・無人化等を前提とした既存ルールの見直しを加速すべきではないか。
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インフラやルールのみならず、企業経営もデジタル化に適合したものに転換する必要。企業経営のデジタル・トランスフォーメーションを一層後押ししていくべきではないか。併せて、こうした企業改革を支える人材の育成も図るべきではないか。
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こうした国内での環境整備を早急に進めることを前提に、デジタル経済に関する国際ルールや標準の整備を加速すべきではないか。
政府の政策的な動きとしては、ID基盤整備や、デジタル前提のルール整備、人材育成、国際ルールや標準化 などが焦点になるかと思われます。