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汎用化するAIが社会にもたらすものとオープン・プラットフォーム開発戦略 〜第2回全脳アーキテクチャシンポジウムから

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2017年8月29日に、NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(WBAI)が主催する「第2回全脳アーキテクチャシンポジウム」に参加してきました。

WBAIでは、長期的に「脳全体のアーキテクチャに学び人間のような汎用人工知能を創る(工学)」を掲げる全脳アーキテクチャ・アプローチによるAI研究開発を促進しています。全脳アーキテクチャ・アプローチとは、「脳全体のアーキテクチャに学び人間のような汎用人工知能を創る(工学)」をミッション・ステートメントに掲げた人工知能の研究開発アプローチで、2030年頃を目標として脳を越えたAGI(汎用人工知能、Artificial General Intelligence)の構築を目指していくとしています。

シンポジウムでは、定員350名に対して、ほぼ満席の状況となっており、関心度の高さが伺えました。

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第一部では、 「脳の汎用性からAGIへ」をテーマに、NPO法人WBAI代表/ドワンゴの山川氏からは「汎用性を実現するために脳から学ぶべきこと」 、立命館大の谷口氏からは「記号創発ロボティクスが目指すAGI 」、株式会社アラヤの金井氏からは「人工知能の意識と汎用性」をテーマに講演をされました。

谷口氏の「記号創発ロボティクスが目指すAGI 」では、表現学習を超えて、実世界マルチモーダル情報を重視した教師なし学習(強化学習)に基づく、身体性に基づく(表象)学習を目指しています。そのため、内的表象系(Internal representation system)と社会に創発的に存在する記号系(Emergent symbol system)に区別し、その総体としての記号創発システム(Symbol emergence system)を捉えた俯瞰的なAGI研究を進めていくとしています。

実世界AGIに向けたチャレンジとしては、「階層ベイスモデルとディープラーニングの統合的理解と柔軟な活用」、「確率的生成モデルに基づく認知アーキテクチャの構築」の2点をあげています。

第一部の最後には。山川氏、谷口氏、金井氏により、「汎用性・自律性・意識を脳に学ぶ」というテーマでパネルディスカッションが行われました。

「汎用性とは何か?」から「脳におけるシンボル(記号)とは何か」「技術者にとって脳に学んでAIを作る魅力は何か?」というテーマで討論が行われました。

意識と記号のまとめを以下のとおりに図まとめています。神経科学的知能では主観的には自明だが客観化が困難な意識現象、工学的知能では古典的推論ベースの知能から柔軟な思考する知能の理論、そして、最近ではデータ駆動の知能要素が盛り込まれるようになり、汎用性を高めていく動きが進んでいます。

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パネルディスカッションの「汎用性とは何か?」では、「多くのタスクを実行できること(山川氏)」や「自律性をメインにおいて、いろんな知識を得ていって自分のものにすること(谷口氏)」といった意見など、さまざまな視点で討論がなされました。

授賞式を挟んで、後半は「次第に汎用化するAIが社会にもたらすもの」をテーマに山川氏からは「AGIを人類と調和させるためにWBAIができること」、東大の松尾先生からは「深層学習の以前・今・これから」、合同会社ハイロード・コンサルティングの坂井氏からは「AGI とマーケティングの未来」をテーマとした講演がなされました。

山川氏の講演では、WBAIはBenefitical(有益な)AGIを目指すために、人間と同じように考え/振る舞う存在であるべきという価値観の調和(Value Aligment)を通じて脳を学ぶことで、人のような知能を創る点をあげています。もう一つは、特定組織ではなく、人類全体の共有物であるべき公益(Common Good)により、脳アーキテクチャ上でのオープンプ開発の促進で実現をすすめていくことをあげています。

AGIが目指すオープン・プラットフォーム開発戦略は、機械学習モジュールを統合するための脳型アーキテクチャのプラットフォームを構築し、短期間で最新の機械学習技術を実装できるオープンな技術コミュニティを通じて、AGIの民主化を進めていくとしています。

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それ以外にも、有益な情報はあったのですが、正直理解するのに難しい内容も多々あり、AIに関する技術や考え方は多岐に渡っており、改めて自分自身掘り下げていくべき分野と感じたシンポジウムでした。

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