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人工知能技術と人間社会について検討すべき論点

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内閣府は2017年3月24日、内閣府特命担当大臣(科学技術政策)の下に開催された「人工知能と人間社会に関する懇談会」(第1回平成28年5月30日開催)においての報告書「人工知能と人間社会に関する懇談会 報告書」のとりまとめを公表しました。

「人工知能と人間社会に関する懇談会」では、第5期科学技術基本計画で掲げたSociety 5.0 の実現の鍵である人工知能の研究開発及び利活用を健全に進展させるべく、人工知能と人間社会の関わりについて検討を行い、今回報告書のとりまとめを行っています。

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目次は、以下のとおりとなっています。

要旨(Executive Summary)

第1章 はじめに
1.1 人工知能技術が社会にもたらすインパクト
1.2 人工知能技術がもたらす期待と不安
1.3 人工知能技術はこれまでの技術と何が違うのか
1.4 懇談会の目的

第2章 人工知能と人間社会に関する検討動向
2.1 世界の動向
2.2 日本の動向

参考 人工知能は人間を超えるか?

第3章 懇談会におけるアプローチ
3.1 分野の選択
3.2 検討する観点
3.3 共通する論点の整理へ向けて

第4章 人工知能技術と人間社会について検討すべき論点
4.1 倫理的論点
4.2 法的論点
4.3 経済的論点
4.4 教育的論点
4.5 社会的論点
4.6 研究開発的論点

第5章 おわりに

本懇談会では、以下の6つの論点を検討しています。

倫理的論点:人工知能技術のもたらす結果に対する倫理的側面や道徳性、価値などについて
法的論点:人工知能技術を利活用する際に関連する法律や契約、人工知能技術のもたらす結果に対する責任、個人情報保護などについて
経済的論点:人工知能技術を利用した経済活動やそれを利活用する際の働き方についての被雇用者個人、企業、そして政府からみた配慮すべき点などについて
教育的論点:人工知能技術が利活用されるときに教育はどう変わるのか、教育を提供する側や教育を受ける側の視点からの問題などについて
社会的論点:様々な人と人工知能技術との関わり方、人工知能技術の理科梅雨おによって副次的に生じうる社会問題などについて
研究開発的論点:人工知能技術の研究開発者が注意すべきことや、利用者が人工知能技術の研究開発にどう対処すべきかなどについて

倫理的論点では、人工知能技術・機会と人間との関係性に徐々に変化がみられる可能性があり、将来的にはその新たな関係性にもとづいて、新たな倫理観が形成されることも予想されるとしています。(人工知能技術の進展に伴って生じる。人と人工知能技術・機械の関係性の変化と倫理観の変化)

その一方で、人工知能技術によって知らぬ間に感情や信条、行動が操作されたり、順位付け・選別させられたりする可能性への懸念も指摘しています。

また、人と人工知能技術が協働することで、人工知能技術が関与する行為、創造に対する価値・評価の受容性、価値観や捉え方の多様性についても検討が大切であるとしています。

法的論点では、自動運転車の事故などの例をあげ、人工知能技術による事故等の責任分配の明確化と保険の整備、人工知能技術を使うリスクを検討するとともに、使わないリスクの考慮もする必要があるとしています。

また、人工知能技術を活用した創作物等の権利の検討や、従来の法の枠組みではなく、法解釈、法改正など、法に関する基本的概念の再検討の可能性も指摘しています。

経済的論点では、AI普及による人材と業務のマッチングがうま行われない場合に、失業と人手不足の両方は生じる可能性があるといったように、人工知能技術による、個人対象とした業務や働き方の変化をあげています。また、企業対象にも、人工知能技術を開発する人材や使いこなせる人材の確保など、人工知能技術の利活用による雇用と企業の変化もあげています。

政策面では、人工知能技術のり活用を促進するための経済政策、労働移動を可能とする教育政策・雇用政策をあげています。

教育的論点では、人工知能技術の優位点と限界を把握し、協働・協調して創造的活動ができるような、人工知能技術を適切に利活用するための教育や、人にとって本質的な能力は人にしかできない能力の育成をあげています。

社会的論点では、 人工知能技術との関わりの自由と共有可能な価値についての対話や、 人工知能技術によるデバイス、社会的コストの不均衡、差別への対処、さらには、新たな社会的病理の可能性、対立、依存への対処をあげています。

研究開発的論点では、倫理観、アカウンタビリティ、可視化、セキュリティ確保、プライバシー保護、制御可能性、透明性などの観点からの研究開発の必要性をあへています。また、人工知能技術に関する適切な情報伝達と自分社会科学研究、融合研究の必要性、さらには、人工知能技術の多様性確保と多様な社会への対応の必要性もあげています。

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