IDC Japanの「2012年国内IT市場の主要10項目」から見るクラウドの今後の展望
調査会社のIDC Japanは2011年12月15日、2012年における国内IT市場でキーとなる技術や市場トレンド、ベンダーの動きなどをまとめた「2012年国内IT市場の主要10項目」を発表しました。
10項目は以下のとおりです。
1.国内IT市場は、復興財政支出政策の影響を受け、スマートフォン、ITサービス、ソフトウェアが市場を押し上げる
2.国内クライアント市場は「マルチデバイス」時代に入り、モバイルデバイスが国内IT市場の成長を牽引し続ける
3.クラウドサービスがITのモダン化を加速させ、「モダンPaaS」を創生する
4.ハイブリッドクラウド時代を迎え、クラウドサービス向けIT市場のフレームワークが形成される
5.事業継続/災害対策ソリューションは仮想化技術の進展とクラウドサービスの成熟によって再構築が進む
6.モバイルデバイス、3.9G/LTEサービスの早期展開によって通信事業者ネットワークインフラ市場が活性化する
7.2012年はビッグデータ活用型アナリティクスビジネスのリーダーの座をかけた競争のスタートダッシュの年になる
8.国内企業の海外ITシステム構築/運用を巡る、国内・グローバル・オフショアベンダー間の競争が激化する
9.センサーネットからインターネットに接続する「スマートデバイス」が増え、デバイスの「ソーシャル化現象」が起きる
10.次世代の最初の10万のスマートシティソリューションは「第3のITプラットフォーム」上に構築される
上記の主要10項目からクラウドコンピューティングに関して注目すべきは、以下の2つです。
3.クラウドサービスがITのモダン化を加速させ、「モダンPaaS」を創生する
4.ハイブリッドクラウド時代を迎え、クラウドサービス向けIT市場のフレームワークが形成される
です。少し整理をしてみたいと思います。
3.クラウドサービスがITのモダン化を加速させ、「モダンPaaS」を創生する
クラウドコンピューティングの発展によって、ITの「モダン化(Modernization)」を実現することが重要であるとしています。ITのモダン化とは、業務効率の向上といった経営上の目的を達成することを優先したIT投資を指し、伝統や過去の実績に縛られることなく、HTML5やビッグデータといった新しいアーキテクチャやテクノロジーを積極的に採用することが求められるとしています。
また、IDC Japanでは、IaaSからアプリケーションのカスタマイズ性が要求されるPaaS指向が強くなると見ています。PaaSの分野においては、Google App EngineやWindows Azureから、オープンソースのCloudFoundry、そして国内ではサイボウズのkintoneなど市場環境は混沌としており、2012年以降のPaaS市場の戦況が注目されます。個人的には、PaaSレイヤにもオープンソース化の流れが加速するのではないかと予想しています。
4.ハイブリッドクラウド時代を迎え、クラウドサービス向けIT市場のフレームワークが形成される
2012年に、プライベートクラウドやパブリッククラウドなど多様化するクラウドをいかにハイブリッドで統合的に管理できるかに注目が集まり、さまざまな議論が行われ、新たな製品やサービスが登場すると予測しています。
米国ではクラウドブローカーと呼ばれるようにRightScaleなどクラウドポータルを実現するサービスが注目されつつあります。ユーザ企業目線で見た場合、ユーザが自由にポータル画面でサービスやリソース管理ができる環境が求められていくでしょう。
2012年以降の環境は、クラウドコンピューティングのほか、ソーシャル、スマートデバイス、ビッグデータなどが重要なテーマになると予想されます。その中で、クラウドコンピューティングは語りつくされたキーワードではありながらも、ソーシャルやスマートデバイスそしてビッグデータを処理する核となるプラットフォームとして、その存在感をさらに示していくのかもしれません。
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