日本の未来都市づくりを考える(「未来都市モデル」構想/「環境未来都市」構想/「総合特区制度」から)
少子高齢化などで地方の地盤沈下が懸念される中、未来都市に関する構想が進んでいます。
日本経団連は2011年3月7日、「未来都市モデル」構想を掲げ「未来都市モデルプロジェクト最終報告」を発表しました(公表資料)。
個別のプロジェクトは以下のとおりとなっています。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2011/013/gaiyo.pdf
米倉弘昌経団連会長は3月7日の記者会見で「技術革新を推進力とする民主導の新たな成長モデルを作り出したい」と述べています。
日本は、少子高齢化、雇用の低迷、危機的な財政状況、社会保障負担など、数多くの過大に直面し、閉塞感が漂っています。この難局を打破し、日本が元気になるためには、地方を活性化していくことが重要なポイントとなっていくでしょう。
本構想では、これらの背景も踏まえ、経団連の主要企業による主導で地方自治体と協力し、全国12都市・地域で、環境・エネルギー、医療、交通、農業など先端技術・サービス・システムの実証実験を展開する予定です。また、教育、子育て、観光など社会システムの変革の取組みも含めた総合的なプロジェクトを展開も予定しています。これらの社会問題を解決する都市づくりのモデルとしてパッケージ化し、国内のみならず海外にも展開し、日本の産業競争力の強化や成長産業の創出を目指すとしています。また、前提には、地域のニーズを踏まえた上で、地域の誰もが住みたいと思うような都市空間の創造、地域の持続的発展につながるような仕組みづくりも重要となってくるでしょう。
基本は民間主導のプロジェクトであるものの、規制緩和やシードマネーが必要な場合は、「総合特区制度」「環境未来都市構想」等を活用すると、プロジェクトの基幹は、2年~5年程度を予定するが、まちづくりの状況に応じて期限を区切らないものもあるとし、実証実験後の事業化、ビジネス展開については各社にて判断するとしています。
「総合特区制度」と「環境未来都市構想」に少し焦点をあててみましょう。
総合特区制度
政府は2011年2月15日、「総合特区法案」を閣議決定しました。本法案では、10項目の規制緩和の特例措置 を盛り込まれており、工業地域に病院やホテルを建てられる、特別用途地区の用途制限を緩和などがあげられています。
「総合特区」の創設は、新成長戦略の柱の一つで、国際競争力を高める「国際戦略総合特区」と「地域活性化総合特区」の二つに分けられています(総合特区制度の概要)。国会で法案が成立すれば、7月に特区が指定される流れとなります。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/sogotoc/kettei/sankou1.pdf
「国際戦略総合特区」では、国際競争力強化のための法人税の軽減(投資税額控除、特別償却、所得控除より選択)などにより、国際競争力ある産業・機 能集積拠点整備が期待されています。「地域活性化総合特区」では、ソーシャルビジネス等に対する個人出資に係る所得控除など、地域の志のある資金を「新しい公共」へ結集するといった取組みが期待されます。
特区では、財政上の支援措置(平成23年度)151億円(関係府省の予算を重点的に活用。総合特区推進調整費により機動的に補完)、金融上の支援措置1.5億円(利子補給制度(0.7%、5年間)の創設)が設けられています(平成23年度予算(案)の概要参照)。本特区では平成23年度の予算案で、「総合特区推進調整費 」として、820億円の予算が計上されていたのですが、事業仕分けの対象となり、151億円と予算を減らしています。
また、政府は2011年2月15日、『「総合特区」制度設計のための提案プロジェクト等の取組の現状及び今後の予定に関する調査について』を出し、既に提案されたものを中心に、現在の状況や今後の取組の見込み についての調査を実施することとしています。これまでの提案内容については「 「総合特区制度」に関する提案募集における提案内容について」の一覧から確認をすることができます。
「地域活性化総合特区」では、各都道府県に1程度の採択が予定されており、7月に特区が指定されるとなれば、各自治体などではその提案に向けた準備を急いでいることが想定されます。
環境未来都市構想
政府は、「環境未来都市」構想有識者検討会を開催し、2011年2月2日、「 「環境未来都市」構想のコンセプト中間とりまとめ(案)」を公表しています。
「環境未来都市構想」の趣旨は、新成長戦略に基づき、特定の都市・地域において、未来に向けた技術、社会経済システム、サービス、ビジネスモデル、まちづくりで世界に類のない成功事例を創出して国内外に普及展開し、需要拡大、雇用創出、国際的課題解決力の強化をはかっていくとしています。
これらの取組みを通じて、社会経済システムイノベーション実現による地域活性化、そして、国民一人一人誰もが豊かで快適に元気に暮らすことができる持続可能な経済社会の実現を目指しています。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kentoukai/dai5/siryou2.pdf
まとめ
日本の都市、そして地域をめぐる状況は、これまでも取り上げてきましたが、非常に厳しい局面を迎えています。日本がこれらの苦境を打破し、元気を取り戻していくためには、新たな未来都市を創造し実行にうつして、住民が暮らしやすい環境をつくるとともに、持続可能な社会、そして、海外にもパッケージ展開し、日本の産業創造と国際競争力強化につなげていくことが重要となっています。未来都市づくりには、財政や制度などの政策面から、CO2削減のための再生可能エネルギーの活用など環境に配慮した都市設計、そして、クラウドやスマートグリッドなどIT関連の活用など、様々なものを終結して取り組んでいく必要があります。日本の未来は、これからの都市・地域づくりが大きく左右しているといっても過言ではないのかもしれません。