クラウドにおけるテクノロジーとビジネスの視点
クラウドコンピューティングというキーワードが、注目されてから2年以上の月日が経っていますが、今も変わらず、いろんな視点で注目されています。大きく分けると、テクノロジーとビジネスの視点で整理できるのではないでしょうか。
クラウドコンピューティングの技術的なテーマにおいて、とりあげられる例として「仮想化」「プロビジョニング」「分散処理」「スケールアウト」等があげられます。最近では、特に、オープンソースで大規模分散データ処理が可能な「Hadoop」が注目されています。経済産業省が6月14日に公表した「平成21年度 産学連携ソフトウェア工学実践事業報告書」には、NTTデータによる「高信頼クラウド実現用ソフトウェア開発(分散制御処理技術等に係るデータセンター高信頼化に向けた実証事業)(PDF) 」ではHadoopの実証実験の報告が375ページにわたって掲載されており、最近になってツイッターやブログ等でも話題となっています。
その他、クラウドコンピューティングではレイヤーを下げれば、データセンター関連技術の話、そして、レイヤをあげれば、JavaやPythonなどのプログラミング技術なども、クラウド関連のテクノロジーとして考えることもできるでしょう。
しかし、これらのクラウドテクノロジーを駆使しても、ユーザが満足できるようなクラウドサービスが提供できるという保証はありません。
日経新聞の10月3日の記事「ニッポンこの20年 長期停滞から何を学ぶ 第2部 民力低下 IT革命に乗れず」という特集記事があり、NTTドコモの辻村清行副社長のコメントが掲載されていました。
技術で先行しても、周囲を巻き込んで新市場を立ち上げる「ビジネス構想力」がなければ、ITの世界では標準化できない
この2年間、クラウドの位置づけは、トレンドを捉えるための様子見の段階から、実際に導入または導入を検討する段階にきています。今では、外資や日本の大手SI事業者もクラウドというキーワードを盛んに使いユーザの囲い込みを展開しています。クラウドサービスを事業者が提供していくためには、事業者自身がIT資産を「保有」する、つまり、投資の比率も高くなります。そのため、規模の経済で市場の優位性を働かせていくためには、中長期的なグローバルも含めたビジネス戦略が必要であり、そのためには、先程のように「ビジネス構想力」が必要なのかもしれません。
クラウドビジネスを展開していくために、自社にとってどのようなサービスをどのようなターゲットに対してどのような価格で提供していくのか、その実現の一つとしてクラウド関連技術を最大限利用するというのはあるでしょう。
あくまでも個人的な印象ですが、クラウドは今、テクノロジーよりも、むしろクラウドビジネスのほうに視点が向いているような気がしています。それは提供事業者も利用ユーザも同様です。10月2日から4日まで開催されている「AIPクラウド3DAYS」のUSTREAMで中継を一部見ましが、ビジネスの視点が強く出ていたような気がします #aipcloud)。
利用ユーザはクラウドを使いどのように経営やビジネスに活かしていくのか、提供事業者はどのようなビジネスモデルで利用ユーザに提供し収益をあげていくのか、いま、クラウドビジネスのこれからが問われているのかもしれません。