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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

「クラウドコンピューティング」というテーマに早くから取り組んでみて

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私が、クラウドコンピューティングに関する書籍の執筆を始めたのは、ちょうど2年前の8月末からです。8月中旬に出版社と企画に関する意見交換をし、クラウドというテーマで進めることとしました。

当時は、クラウドコンピューティングというキーワードは、IT業界の一部では、取り上げられることもありましたが、一般的にはほとんど認知されていない状況でした。外資系の事業者は既にクラウド関連のサービスを提供していましたが、日系のIT企業は、クラウドというキーワードを使うケースもほとんどなく、サービスとして展開しているのは、あまりなかったように記憶しています。クラウドというキーワードで話をしようとしても会話が成立することも少なく、日系のIT企業に勤務している自分が、クラウドというテーマを本当に書いていいのか、という自問自答も続きました。

そのため、出版社側としても果たして、クラウドをテーマとした本が売れるのか、というのも半信半疑なところもありました。ちょうどこの時期は、クラウドという定義が非常に曖昧でありながらも、常に変化している時期でもあったので、トレンドにキャッチアップをし、原稿に落とし込んでいくのは至難の業でした。参考文献になる資料もほとんどなく、手探りの状態が続きました。さらに、ユーザ視点でわかりやすく書くというのもなかなか骨の折れる仕事でした。

原稿締切りの12月、1月は、睡眠時間は数時間が続き、正月も休まずに原稿を書き続け、ようやく2009年の2月に「クラウド・ビジネス入門」の発刊にこぎつけることができました。この時期に、他にもクラウド本がいくつか発刊されることを予測していたため、本当に発刊の時期はなるべく早く、ということで出版社と調整を進めました。

幸いにも、野村総研の城田氏の「クラウドの衝撃」、そして小池良次氏の「クラウド」の著名な方々の本と書店で並ぶことも多くなり、便乗して想定以上に売れたのではないかと思います。うれしいことに予測を見誤ってしまい「クラウド・ビジネス入門」は品切れとなってしまいました。その結果、クラウドの本を上梓し、早い段階からクラウド関連の研究を進めることによって、クラウドに関する先行者としての恩恵を受けることができたのではないかと思います。

本を上梓してから、1年半が経ち、これまで多くの依頼を受けることになりました。本を出す前と後ではずいぶん環境が変化しました。講演実績は30を超え、執筆や取材なども多く受けるようになりました。そして、何よりもクラウド人脈において多くのつながりができたのは、大きな財産となっています。

これまで、あまり社外のネットワークはもっておらず、あったとしても通信業界が中心でしたが、クラウドというテーマは幅が広いということもあり、建設業界のデータセンターを担当している方や空調設備の担当している方からSaaSを提供している方、端末事業者の方、そして、リサーチ会社の方など、本当に幅広い方々との人脈を構築することができました。

これまで、これといって得意な領域がなく、営業・マーケティングを中心に広い領域を研究していたのですが、時として「器用貧乏」になりがちでした。クラウドという曖昧なキーワードにうまく便乗することができ、様々な経験と人脈を広げることができました。自分がこれだと思ったテーマに早くから取組み、自分なりの主張ポイントを明確にし、強みとなる領域を明らかにするか、というのが重要かというのを肌で感じました。同時に、捨てる勇気も持つことができました。

クラウドという言葉がいつまで続くのは、定かではありませんが、これからもクラウドの研究をしつつ、新たな分野にもチャレンジしていきたいと考えています。

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