クラウドで求められる視点
「クラウド・ビジネス入門」を上梓してから、講演や執筆依頼など、多くの依頼をいただくようになりました。クラウドはテーマの中心になるのですが、それに付属する内容(視点)が多岐に渡っています。
例えば、情報システム部門の視点、経営の視点、中小企業の視点、情報通信政策(公共分野)の視点、コンテンツの視点、クラウドサービスの視点、クラウド連携技術(開発)の視点、提供ベンダの視点、初心者の視点、データセンタービジネスの視点、国際競争力(産業)の視点、市場分析の視点、など本当に様々です。
また、クラウドサービスにおいては、SaaSやPaaSからネットワーク、そして、端末までの様々なレイヤの知識が必要とされます。そしてクラウド技術においては、仮想化や分散処理、そしてデータセンター技術まで、抑えておく必要があります。
政策の視点では、例えば、米国のガバメントクラウドや英国でのG-Cloud、そしてシンガポールの政策など、海外での政策を比較しながら、日本のクラウド政策を考えていく必要があります。また、総務省や経済産業省が個々にクラウド関連政策の報告書などを公開しており、各々の政策や工程表などを抑えておくことが大切となります。
最近では、データセンター(クラウド)特区なども話題となっていますが、その場合は、コンテナ型のデータセンターや設置にあたっての規制緩和や税制優遇などの制度も知識も必要となります。もちろんデータセンターの空調や冷気などのゼネコンがこれまで手がけてきたものも最低限の知識は必要です。研究会などでゼネコン関係者の方とクラウドやデータセンターに関して情報交換をする機会も増えてきています。
また、情報システム部門の方と情報交換する場合は、クラウドをどのように導入していくか、クラウドの事業仕分けやロードマップ、など、クラウドマイグレーションの視点も重要となります。
そして、これまで数回ほど、リサーチ機関からクラウドの市場分析や動向についてインタビューを受けたことがあるのですが、議論をしていく上でリサーチャーやアナリストとしての基本的な能力が求められます。
こういった要求に答えるため、クラウドに関して、自分なりに研究を始め、経営や中小企業向け、マーケティング、技術書など、本当に様々な本を読み、様々な視点で議論できるよう自分なりに努力を怠らないようにしています。
クラウドの定義は非常に曖昧なが故に、様々な議論になります。時には非常にするどい質問や意見を受け、答えに窮することもあります。だからこそ、自分の専門分野を抑えつつも、広い視点を持ち、相手を説得し、建設的な議論ができる準備を整えておくことが重要となります。クラウドコンピューティングは、自分を鍛えてくれる非常に有効なキーワードといえるのかもしれません。