「次世代自動車戦略2010」から見える将来の車と電力・情報ネットワークの連携像
経済産業省は、4月12日、『次世代自動車戦略研究会』で検討行い『次世代自動車戦略2010』の取りまとめを公表しました。
自動車市場では、新興市場が急拡大し、先進国は環境志向へシフトしています。自動車産業を巡る外部環境は、激変する自動車競争環境、原油価格の中長期の高止まりによるエネルギー制約、25%削減という地球温暖化への対応、電気自動車・電池などの成長戦略の必要性などがあげられています。
本戦略では、「全体戦略」、「電池戦略」、「資源戦略」、「インフラ整備戦略」、「システム戦略」、「国際標準化戦略」の6つの戦略を掲げています。
「 全体戦略」では、日本を次世代自動車開発・生産拠点をすることを目指し、普及目標(2020年・2030年)の設定では、
- 次世代自動車:2020年最大50%
- 先進環境対応者車(次世代車+環境性能に特に優れた従来車):2020年最大80%
- 燃料多様化
- 部品の高付加価値化
- 低炭素方産業立地促進
を掲げています。
特にIT業界にとって注目される戦略は、「システム戦略」です。本戦略での目指すべき方向性は、「車単体」の本来の能力を最大限に引き出すために、「車のバリューチェーンにおけるサービス」や「車のネットワーク化による新たなビジネス(V2G:Vehicle to Grid等)」をシステム全体で捉えることを目指しています。また、EV・PHVタウン等と連携し、例えば、エリア単位でのシステム最適化、中長期的な「まちづくり」としてのモビリティの実現や、システム単位での海外輸出を目指しています。
特に興味深いのは、自動車を情報通信の端末として位置づけるという考え方です。欧米では、自動車を蓄電池と位置づけ、系統側の要求に応じて電力融通をするV2G(Vehicle to Grid)の技術開発が進んでおり、V2G実現のために車両に組み込むソフトウエアの開発も活発になっていとのことです。大きく変化するのは、「車単体」の性能から車のネットワーク化による「システム」の提供になる可能性があるということです。
そして「システム」を考える際には、長期的にはモビリティ変革を伴うまちづくりまで視野を広げていく必要があるとしています。「単体」から「システム」への競争要因の変質として、iPodの例をあげて図表化しています。
本戦略の実施にあたってのアクションプランでは、車のバリューチェーンの新たな付加価値の創出のため、「EV/PHV タウンベストプラクティス集」等を通じて検証(2010年度中)、「システム」構築に向けた課題の洗い出しと効果・影響の検証、検証結果を踏まえた国際標準化・ビジネスへの展開などを検討しています。ビジネス展開にあたっては、グローバル市場を想定した課金システムや充電システムの構築と標準化が大きなポイントとなるでしょう。
自動車がネットワークの本格的につながるようになれば、様々なビジネスモデルが創造でき、インターネットベースのビジネスモデルも想定しつつ、インタネットよりもリアルで大規模なビジネスチャンス が生まれるかもしれません。