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霞が関クラウドと政府共通プラットフォーム

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総務省は、4月16日、「政府情報システムの整備の在り方に関する研究会 ―政府共通プラットフォームの構築に向けて―」最終報告書を公表しました。

本研究会の取り組みは、昨年4月9日にIT戦略本部が発表した「デジタル新時代に向けた新たな戦略~三か年緊急プラン~」の「霞が関クラウド(仮称) 」をもとに取り組みを実施しています。政府情報システムの更なる全体最適化を推進するため、政府情報システムの統合・集約化の基盤として、「政府共通プラットフォーム」を構築し、システムの開発・管理運用の効率化、安全性・信頼性の向上等を推進するとともに、データ連携の基盤として、業務見直し(BPR)の促進、国民等利用者の利便性向上等を図ることを目的としています。

「霞が関クラウド」については、総務省は2月10日に公表した「スマートクラウド戦略」の中間報告書の中でも記載されています。政府は電子政府・電子行政の推進に向けて、行政サービスの「見える化」、国民に開かれた「オープンガバメント」の推進、無駄を排除した「行政刷新」の目標を掲げており、実現のためには、政府の電子行政クラウド「霞が関クラウド」を推進することが必要であるとしています。

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また、「霞が関クラウド」等に関する安全性・信頼性を確保するための関連技術については、開発成果を広く開示し、その普及を促すことや、電子行政クラウドの構築に際しては、国民に開かれた内外無差別の透明な手続きで技術仕様を決定することが求められるとしています。さらに、サイバー攻撃等に備えたセキュリティ対策を講じつつ、民間部門のクラウドサービスとの連携を行う場合には、インターフェースのオープン化(共通化)に最大限配慮していくことも必要であるとしています。

さらに、政府・地方自治体がミッションクリティカルな情報を扱う場合、「霞が関クラウド」等の自前のクラウドシステムの構築が必要であるが、汎用ソフト等については、行政の無駄を排除する観点から、民間事業者が提供するクラウドサービスの調達も積極的に推進していく必要があるとしています。

さて、「政府情報システムの整備の在り方に関する研究会」の最終報告書に話を戻したいと思います。

政府共通プラットフォームの役割及び効果としては、以下の点をあげています。

  • 仮想化技術を活用したハードウェアの共用
  • OS・ミドルウェア等の基盤ソフトウェアの共通化
  • システム動作環境の標準化、ライセンス一括購入等による経費削減
  • 運用管理の一元化
  • 運用管理業務負担の軽減、運用管理サーバの削減、外部委託システム運用要員の削減
  • 共通的なアプリケーション機能の統一化
  • システム開発経費削減、共通的業務フローによる業務の標準

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<統合・集約のイメージ>

これらのフレームワークの考え方を技術参照モデル7に当てはめると以下のとおりとなります。

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<政府共通プラットフォームの構成要素>

政府共通プラットフォームの構築にあたっては、特にセキュリティ対策も重要となり、「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準」に準拠した一元的な管理運用を実施し、スケールメリットを活かしたバックアップ、24 時間監視等の可用性の向上等を図ることにより、高度で統一的なシステムの安全性・信頼性を確保するとしています。

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<政府共通プラットフォームにおける情報セキュリティ対策(俯瞰イメージ)>

また、政府共通プラットフォームの活用の方向性については、以下の基準に合致するシステムは、優先的に統合・集約化を検討すべきであるとしています。

  • 特定の技術・動作環境に依存しないもの
  • 極めて高い可用性が求められないもの
  • 統合・集約化に当たって大規模な構成変更等が求められないもの
  • PFのセキュリティ要件で十分なもの
  • 民間クラウドサービスの活用が適当ではないと考えられるもの

政府共通プラットフォームを活用にあたって、重要なポイントとなるのはデータ連携です。優先順位の高いものとして、「行政内部業務等情報の共同利用」の早期実現に向けた取組を推進するとしています。その際に、共通的な機能、アプリケーション等の整備・運用は、政府共通プラットフォームが一元的に担っていく方向で検討しています。

データ連携の実現に向けた課題としては、フォーマット、コード等のデータ標準化の必要性があげられています。また、重点71手続の添付書類のうち国発行のものは約16%にとどまり、その他は地方自治体、民間機関等発行のものであり、複数の行政情報を紐付ける識別子が必要としています。政府部内における社会保障・税共通の番号制度の検討の動向を注視するとしています。

最後に、政府共通プラットフォーム(PF)による全体最適化のさらなる推進として、以下の4つをあげています。

  • PFによる統合・集約化に当たっては、各システムの実態調査、費用対効果の検証が必要
  • PF構築に向け関係府省間における連携調整の場など推進体制の整備が必要
  • まずは業務そのものの見直しを優先して実施した上で、その後の更なるシステム改革のツールとしてPFを活用していくことが基本
  • データ連携のうち、「国民・企業等情報の相互利用」実現のためには、国の行政機関のみならず、地方公共団体、民間企業等による相互に連携した取組が必要

政府共通プラットフォームの構築にあたっては、システムの共通化によるコスト削減や効率性を高めていくといったことがあげられていますが、実現にあたっては、現状を調査し、BPRを推進して、要件定義をしっかりしていくことが重要となるでしょう。また、データ連携もポイントであり、実現のためには、地方公共団体や民間企業との連携が必要としていますが、これらを紐付けするための国民IDといったようなID管理と連携が非常に重要な位置づけを占めるのではないでしょうか。

政府共通プラットフォームの構築が実現するためには、相当の時間を要すことが予想されます。電子政府・電子行政実現にあたっての大きな役割を担うことになり、本最終報告書に基づき、今後の具体的な取り組みが注目されます。

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