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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

クラウド市場の攻防

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日経産業新聞(2010.3.9)の特集「クラウドが拓く」では、外資系クラウドベンダによる上客の切り崩しと、日の丸IT企業の巻き返しなどの取り組みが紹介されています。

少し、ポイントをご紹介しましょう。

外資系クラウドの企業導入事例

  • TOTOは、グーグルのGメールを採用し、セールスフォース・ドットコムのサービスを採用する予定
  • パナソニックは、1月にメールや電子掲示板でIBMのクラウドサービスを採用。対象は28万人の社員と一部取引先。日本企業のクラウド導入事例としては国内最大規模
  • 日産自動車の米国子会社は、HPのクラウドサービスの採用を決定

マイクロソフトも、スティーブ・バルマーCEOが全社一丸となってクラウド事業へ取り組んでいくことを宣言しており、マイクロソフトのクラウドサービスの導入事例も増えてくるでしょう。

日系企業の巻き返し

  • 富士通は、米子会社経由でクレジットカードの決裁処理をするクラウドサービスなどの運用管理を代行する契約を受注(10年約400億)
  • NECは、2012年度の目標売上高4兆円のうち、1兆円をクラウドで。
  • 日立製作所は、中堅IT企業を買収し、英国を起点に欧州でクラウド事業を展開

日系と外資の事例を比較してみると、外資系のほうが、現状においては、具体的な事例も多いのではないかと思われます。最近、日系企業もテレビや新聞などで積極的にクラウド関連のコマーシャルを流すなど、積極的にプロモーションも展開しており、体制整備やサービス開発も含めて、今後の巻き返しが期待されます。

規模の経済

日経産業新聞の中では、データセンターによる規模の経済についても書かれています。

  • 米IBMは、今年の2月に、約5500平方メートルのフロアに、約320億円を投資し、戦略拠点へ
  • 米HPは、05年に86箇所あった自社拠点を3年かけて6拠点に集約。年間10億ドルのコストを削減

その他、グーグルやマイクロソフト等も世界で巨大なデータセンターを開設しており、規模の経済を生かした価格差は大きくなってくることが予想されます。

日本のIT企業の場合は、これまでの顧客との信頼関係やシステムの提供形態などで、まだ囲い込みができているところがありますが、セールスフォース等の外資系企業が国内データセンター提供等が進むと、セキュリティや海外へのデータ保管リスク等をトリガーにした対抗提案も難しくなるでしょう。

クラウドが進めば、勝者と敗者の優劣がはっきりするとされており、現状を考えると、日系IT企業は不利な立場に追い込まれていく可能性は否定できません。世界規模でのコンピューターリソースの世界分業が始まっている今、日本のIT企業の生き残りをかけたクラウド戦略の行方が今後の日本のIT業界を左右するのかもしれません。

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