政府と電子書籍と出版を取り巻く環境について
総務省、文部科学省、そして経済産業省は、3月17日、電子書籍の普及に向けた官民共同の懇談会「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会(第1回)」を開催しました。出版社、作家、新聞社、印刷会社、通信事業者、メーカなど、様々な業界の代表者が参加をしています2010年の6月を目処に中間報告書をまとめる予定です。
本懇談会を開催する背景として、デジタル・ネットワーク社会に対応して広く国民が出版物にアクセスできる環境を整備することを目指しています。
主な検討事項としては、
(1)デジタル・ネットワーク社会における出版物の収集・保存の在り方
(2)デジタル・ネットワーク社会における出版物の円滑な利活用の在り方
(3)国民の誰もが出版物にアクセスできる環境の整備 等
の3つをあげ、
① 技術に関するWT(ワーキングチーム)
② 出版物の利活用の在り方に関するWT(ワーキングチーム)
の2つのWT(ワーキングチーム)を設置し、検討を進めることとしています。
本資料の中で、いろいろとりあげてみたいテーマはいくつかあるのですが、まず関連資料(デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用に関する関連資料)にある関連資料の中から、電子書籍と出版を取り巻く環境について整理をしてみたいと思います。
出版社をめぐる現状の仕組みは、出版社数は、2009年現在で、3979社。推定部数は、2009年時点で約34億冊(書籍7億冊、雑誌17億冊、コミック10億冊)となっています。下の図が簡単な流通の仕組みとなりますが、出版社数も販売部数も減少傾向にあることがわかります。
もう少し、市場規模を見てみてみると、2009年の書籍/雑誌の推定販売額は1兆9356億円に落ち込み、最盛期(1996年)の2兆6564億円から27%も減少しています。一方、電子出版市場は2001年の4億円から2008年の457億円へと急成長をしており、出版市場の2%程度を占めています。
電子出版配信端末についても、アマゾンのキンドルやソニーのReader Editionをはじめ、今後も様々な端末が登場することが予想されます。中でも注目されるのが、日本でも発売が予定されているiPadです。今後の市場拡大に伴い、どこの端末やプラットフォームが競争優位にたつのか、今後の動向が注目されます。
海外にいおては既に電子書籍サービスが本格的に展開されており、主なサービスのカテゴリは以下のとおりです。やはりキンドルが強く、今後のアップルが提供する「iBookストア」がどこまで、キンドルの牙城を崩していくのか、最初のスタートダッシュ時の動きが注目です。
世界規模で電子書籍の市場が拡大しておりますが、日本市場においては著作権や書店特有の流通形態など、解決していかなければならない様々な課題が山積しており、なかなか一筋縄にはいかない状況です。
総務省、文部科学省、経済産業省の連携施策は非常に画期的でありますが、政府が推進する懇談会が、電子書籍市場の拡大にどの程度貢献をしていけるのか、日本の電子書籍市場が世界市場の中において、どの程度のプレゼンスを確保できるのか。市場はまだまだ始まったばかりで、今後の舵取りが電子書籍市場の行方を大きく左右することになるのかもしれません。