クラウド時代の営業力
セールスフォースやグーグル、そしてアマゾン等が先行していたクラウドコンピューティング。その後、IBM、HP、シスコ、オラクル、マイクロソフト等の外資系企業もプライベートクラウド等を中心にクラウドコンピューティング関連のソリューションの提供が始まっています。そして、日本でもNECや富士通など大手企業もクラウド市場への参入しパッケージ商品などを投入しています。
数カ月前までは、各社のクラウドサービスになんとかキャッチアップをしていたのですが、最近は、あまりにもたくさんの企業がクラウドをキーワードとしたサービスを投入してきているため、整理するのが難しくなってきているのが正直なところです。
ここ数カ月間、クラウド関連の講演を10本近くさせていただきましたが、中でも講演のテーマでは、企業がどのようにクラウドと向い合っていけばいいのか、企業ユーザの視点で話をしてほしいという問い合わせが増えてきています。氾濫するクラウド関連の情報に少々戸惑っており、整理をしていきたいというユーザも多いようです。また、実際に講演後にエンドユーザの情報システム部門から問い合わせをいただくといったケースもかなり増えてきています。
一方、各社のクラウドサービスやソリューションが一通り整ってきている状況ですが、クラウドを提案する営業も試行錯誤しているように感じています。
その理由には以下のような点が上げられるのではないかと考えています。
- SI(システムインテグレーション)と比べて1案件あたりの受注額が低くモチベーションがあがらない
- お客様への提案方法がわからない(これまでのシステム更改提案とは異なるため)
- どのようなシステム提案やコンサルをしたらいいのかわからない
- セキュリティや品質などの問題視されるため、なかなか説得できない(提案できない)
- どの部門に提案しにいけばいいかわかりにくい(情報システム部門は必ずしもクラウドに積極的ではないケースがある)
- 他社のクラウドサービスやソリューションサービスと差別化がしくい
- 実績が少ない(またはない)
- クラウドを提案し続ければ、自分の将来の仕事がなくなる不安
など、数え上げればきりがないでしょう。
先日、ITコーディネーターの方と中堅・中小企業向けのクラウドやSaaSの提案について情報交換をしましたが、なかなかお客様が導入にふみ切ってくれないため、相当悩まれておりました。中堅・中小企業にクラウドは最適であるという意見は多々ありましたが、企業の現場はそこまで導入にふみきれていません。
また、大手企業に対しては、これまでのSI提案の延長線でプライベートクラウドの提案をするというアプローチもあるため、SIを中心にソリューションをを展開してきたIT企業の営業においてはパブリッククラウドも選択肢は用意しつつも、プライベートクラウドを中心に提案をするのが、基本線と言えるでしょう。
クラウドコンピューティングの市場は様々な調査データを見ても、拡大傾向にあり、ここ数年で競争が本格化し、勝者と敗者の優劣がはっきりしてくることが予想されます。そのため、IT企業各社は体制を整え、営業力を強化し、代理店との連携も深め、実績の積み上げに躍起になっています。
企業ユーザもこれまでの様子見から本格的にクラウドへの導入を検討するケースが多くなります。そのため、この時期は各社のクラウドコンピューティングをキーとした営業力の差が、今後の市場のシェア争いを大きく左右するといえるのではないかと感じているところです。