2015年に向けた日本の技術戦略
総務省が6月5日に公表した「ICTビジョン懇談会報告書-スマート・ユビキタスネット社会実現戦略-」には、「2015年に向けた技術戦略(PDF)」が参考資料として公開されています。ICT産業は我が国の経済成長を支える重要な位置づけ、国際競争力を高めていくためにはICT分野の技術開発をいっそう注力していくことが必要であるとしています。
そして、技術課題全般にわたる研究開発・標準化の推進方策や資金制度面等の支援方策を以下の点をあげています。
(1)国際展開を促進するための研究開発推進方策
- 国際展開を意識した研究開発戦略
- 研究開発段階からの国際連携
(2)研究開発プロジェクトマネージメントの強化
- プロジェクトマネージメント人材の確保
- 人材の育成
- 研究支援体制の強
(3)研究開発・成果展開の支援方策
- 効果的な研究資金制度
- 技術の実用化支援
(4)標準化への戦略的取組
- 国際標準化人材の確
- 標準化プロジェクトへの支援
- 相互接続性確保の取組支援
- 仕様の共通化によるソリューション事業の展
そして、主に今後およそ10年後までに国内外への成果展開を目指す技術を選定し、開発技術を活用した製品・サービスの国内外への展開を意識した研究開発・標準化方策を個別戦略として提案する(Ⅱ 重点技術の研究開発・標準化戦略)とし、各技術の開発成果を活用した製品・サービス展開を目指す時期を示しています。
(出所:ICTビジョン懇談会報告書-スマート・ユビキタスネット社会実現戦略-2009.6.5)
サービス・アプリケーション分野とネットワーク分野から緊急に取り組むべき課題や中期的に強化すべき分野が整理されています。
ここで、個人的に興味のある「セキュアクラウドネットワーキング技術」について少し取り上げてみたいと思います。本資料の中では、日本のクラウドネットワーキングを構成する基礎技術(並列コンピューティングやクラスタコンピューティング、仮想化技術等)においては高い研究開発水準にあるという評価がある一方で、ビジネス面においては米国が先行している点をあげています。米国では、分散データセンタ間、データセンタ-ユーザ間をインターネットで接続し、インターネット経由でコンピューティング環境を利用できるモデルを立ち上げるなどがあげられています。
しかしながら、個別にサービスを提供しているため、総合的なシステムや相互運用性が考慮されていないとし、今後のクラウドビジネスの発展には、サービスの信頼性や安全性の向上が必要であるとし、日本は、品質管理や低消費電力化等の分野で高い技術力・ノウハウを有し、信頼・高品質なクラウドサービスを世界に向けて提供出来る素地が整っているとしています。これらの状況を踏まえ、高信頼で安価な次世代のクラウドサービスを提供する環境を日本が世界に先行して2013年頃から実現して今後の国際競争力強化につなげるためのサービスの柔軟性や品質、安全性、信頼性を向上させる技術を確立することを目指しています。
クラウドビジネス普及には、これまでサービスアプリケーションの議論が中心となっていますが、より広く普及をしていくためには、ネットワークの信頼性や品質についてもより重要視されることになるでしょう。そういった意味で日本が世界に先行できる技術開発ができるのか注目されるところです。