日本のICT分野における国際競争力
日本の携帯電話の「ガラパゴス化」に代表されるように国内で独自に成長し、海外では展開できないモデルを展開している事例等がよく紹介されています。春商戦も携帯電話の販売は苦戦を強いられています。一方、その他の製品等もシェア低下が顕著なものが多く、日本の国際競争力の低下が懸念されています。
総務省は6月17日「ICT国際競争力強化プログラム2009」を公表し、今後3年程度を展望した国際競争力強化を推進するための行動計画と位置づけています。
本プログラムにおいて、基本認知認識として、 日本のICTベンダの多くは、「総合電機メーカ」として、多数の企業が幅広い分野に事業展開していることによって、各企業が個々の製品、サービス等の事業領域に対して投入できる人材、資金等のリソースは比較的限られていると考えられるとしています。
別紙資料を見ると、そのマトリックスが掲載されていますが、日立製作所などをはじめとし、幅広い分野に展開している一方で、海外のベンダは、サーバ等の自社の得意領域に選択と集中をしていることが読み取れます。
(出所 総務省「国際競争力強化に関するデータ」 2009.6.17)
また、日本は世界第二位の国内市場を擁していることから、日本の市場である一定の採算がとれる状況が続いている、いわゆる「ガラパゴス化」の状況を指摘しています。
このような背景から、国内市場では一定のシェアを確保できるものの、世界市場においては、シェアが低下傾向にあるなど、苦戦を強いられている状況が指摘されています。添付資料の「ICT国際競争力指標」を見ても「通信」分野の「サービス」レイヤ・「端末・機器」レイヤ、「情報システム/サービス」分野の「サービス」レイヤでシェアが減少した品目が多いことが読み取れます。
(出所 総務省 「ICT国際競争力指標」 2009.6.17)
政府は今後の具体的施策として、以下の5点をあげています。
(1)政府間対話の推進
(2)モデルプロジェクト等を通じた国際展開支援
・「ユビキタス・アライアンス・プロジェクト」の実施
・「ICT先進実証実験事業」、「ICT利活用ルール整備促進事業(サイバー特区)」、(「ユビキタス特区」事業等の強化)
・「ふるさとジャパンチャンネル」事業
・その他
(3)戦略的研究開発と標準化・知財戦略の総合的推進
・「国際展開加速技術開発プログラム(仮称)」の推進
・「国際連携促進研究開発プログラム(仮称)」の推進
・その他
(4)国際展開を促進するための環境整備
・「ICT人材交流加速化プログラム(仮称)」の策定
・「デジタルネットシルクロード構想(仮称)」の具体的取り組み
・「ICTベンチャー・グローバル・マネジメント・プログラム」の普及
・その他
(5)地域別戦略の強化
・地域別戦略パッケージに基づいて施策展開
・「アジア知識・情報経済構想(仮称)」の策定
等があげられています。
IT戦略本部の「IT戦略の今後の在り方に関する専門調査会」では、6月5日に「デジタル新時代への戦略(案)」に関するパブリックコメントを募集しています。その中の最終章において、「デジタルグローバルビジョン(仮称)」の策定に関することが書かれています。日本のデジタル技術や関連産業の国際競争力の強化及びグローバル化の推進、高度なデジタル技術を活用したアジアワイドでのシームレスな経済圏の確立等を含め、より突っ込んだビジョンが必要であるとし、本ビジョンを策定するとしています。
本国際強化プログラムの冒頭にも紹介されてますが、少子高齢化の進展により、日本の人口は2055年時点で9千万人まで減少すると予想され、日本のGDPの約55%を占める個人消費市場も大幅に縮小することが見込まれています。国内の市場縮小する中で日本が安定した経済成長を続けていくためにもICT産業における国際競争力の強化は益々重要度を増していくことになるでしょう。