クラウド普及の課題(10) 日本のIT企業
クラウドコンピューティングに向けて戦略を発表しているのは、グーグル、セールスフォース・ドットコム、IBM、マイクロソフト、アマゾン、ヤフー、サンマイクロシステムズ、オラクル等外資系の企業が名を連ねています。クラウドコンピューティングに対する戦略を公表している日本の大手IT企業の名前をなかなか見つけることができません。
グローバルにクラウド化が進んでいけば、日本のIT企業は苦しい環境に追い込まれる可能性も考えられます。グーグルやマイクロソフト等、クラウドコンピューティングの展開をすすめるグローバル企業が世界各地でデータセンターを建設していますが、将来、日本国内のデータセンターの需要が減少し、多くの企業のデータは海外に保存され、国内のデータの空洞化が進んでいく可能性も否定できません。
総務省は、7月29日に開催された「ICT国際競争力会議(第3回)」の中で提示している「ICT国際競争力指標 –市場シェア」によると、日本企業の市場シェアは、ソフトウェア分野において、アプリケーション・ソフトウエアが0.4%、インフラ・ソフトウエア 2.5%と低い数値が指摘されています。
日本のIT企業はクラウド戦略に舵を切るのか、それとも企業内の情報システムに注力し続けるのでしょうか。クラウド化が進めば、SI(システムインテグレーション)を収益の柱にしているIT企業は、事業の転換を図っていかなければならないかもしれません。当面は、ユーザのニーズを見極めながら、個別のSI、パッケージ提供、そして、クラウドをうまく使い分けながら提案を進めていくことになるでしょう。
日本のIT企業の提案するサービス内容によって、ユーザ側は企業内の情報システムを引き続き選択することも十分に考えられます。
外資系企業のクラウド戦略の動きに対して日本のIT企業が今後どのような方向性を示していくのか動向が注目されます。