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IPアドレスが枯渇するとはどういうことか?

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私が情報通信会社に入社したのは、1995年。入社当時は、「マルチメディア」という言葉が流行し、2010年にはFTTH(Fiber to the Home)と言われるように各自宅まで光ファイバーが引き込まれ、好きな時に好きな映像が見られるVOD(Video on Demand)が当たり前のようにできる時代になると言われていました。当時はこのような時代になるというのは半信半疑でしたが、既にマルチメディア構想は実現以上の段階に来ているといえるでしょう。

インターネットの普及が急速に進むにつれて、深刻な問題も出てきています。その一つが「IPv4アドレス在庫枯渇問題」です。IPアドレスとは、簡単にいうとインターネット上の住所を示しており、私たちがホームページにアクセスできるのもこのIPアドレスのおかげです。 

先週の金曜日のブロガーミーティングでは、JPNIC(社団法人ネットワークインフォメーションセンター)にお伺いし、この「IPv4アドレス在庫枯渇問題」について、JPNICの前村様、東大の江崎先生からお話をお聞きしました。私も情報通信業界に勤めているため、ある程度認識しておりましたが、その問題は本当に深刻なんだと改めて感じたところです。

このIPv4のアドレスが、このままの普及段階でいくと、2010年から2011年にかけて、本当に在庫がなくなってしまうのです。IPv4アドレスの在庫が枯渇するということはどういうことかというと写真にも掲載していますが、「今のインターネット=IPv4インターネットは動き続けるが、新たな利用者やサービスが追加できなくなる」状況になります。 

例えば、企業や消費者がこれ以上インターネットの利用を広げていくことができなくなります。日本のユーザはインターネットの利用者は一段落しているところもありますが、成長著しい新興国や発展途上国においては、インターネットにつなぎたくてもつなげないインターネット難民が出てくるかもしれません。そして、インターネットでビジネスをしている事業者にとっては、新しいビジネスを展開できないといったリスクが出てくるでしょう。新規参入事業者にとっては参入障壁となる可能性が考えられます。

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今後もインターネットビジネスは拡大が予想されています。特に企業においてはクラウドコンピューティング等、ITリソースをインターネット側の雲に依存していく比率が高まっていくことでしょう。そうなるとIPアドレスを大量に使う必要が出てきます。IPアドレス枯渇問題によって、インターネットビジネスそのものが停滞していく可能性は否定できないでしょう。 

現在の環境の中で様々な対策が検討されていますが、例えば事業者側がクライアントをNAT以下に収容した場合、Google Mapのリッチコンテンツがうまく閲覧できないなどの事象も出てくる可能性も出てきます。

グーグルもIPv4のアドレス枯渇に対して、対策を講じようとしているようです。 

IPv4の在庫枯渇問題を抜本的に解決する策として考えられるのが、IPv6へのシフトを加速させることです。IPv6はIPv4と比べてほぼ無限にIPアドレスを付与できるようになり、パソコンだけでなくほぼすべての物にIPアドレスが付与できるぐらいの量になります。

まだまだ実験段階ではありますが、例えば冷蔵庫がネットワークにつながり、IPアドレスが付与されれば、外出先からも冷蔵庫の中の在庫をチェックできる等の利用用途が考えられます。家庭の中がIPv6のネットワークでつながる時代もそう遠くはないかもしれません。 

JPNICは、2007年12月に「IPv4アドレス在庫枯渇問題に関する検討報告書(第一次)を公開し、2008年6月には総務省もインターネットの円滑なIPv6に移行に関する調査研究会」にて報告書を公開しています。

本来であれば、IPv6への移行は早く進むと予想されていましたが、IPv6導入のメリットがなかなか見出せず、事業者やベンダ側のIPv6への対応(投資)が進まなかったことがあげられます。また、ユーザ側にとっても移行するメリットを感じることができず、結果的には提供者側も利用者側も様子見の状態が続いているという状況になっています。 

今年の9月に、「IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース」が立ち上がり、今回ご参加いただいたIPv6普及・高度化推進協議会の専務理事である東大の江崎先生等を中心にインターネット関連・テレコム関連14団体の共同タスクフォースを立ち上げ、各団体で協調して、ステークホルダーに対応を促進する活動を展開しています。

11月25日から28日まで「Internet Week 2008」が開催されます。IPv4の在庫枯渇問題等についても一つの大きなテーマとして紹介されるようです。 

ブロガーからもユーザ側への負担やNGNとの関係等様々な質問が出され、活発な議論が交わされました。この枯渇問題の深刻さが、まだまだ一般的に認知されていない現状の中で、今後どのように認知を広め、そして課題に対して対応を進めていくか、今後重大なテーマとなっていくことでしょう。


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