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通信と放送の融合政策2.0の具体論に向けて

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YouTubeやアクトビラ等に代表されるようにインターネット上で動画を見ることが当たり前になり、もはや通信と放送と別々に議論することは無意味な時代になっています。そして、これまで通信と放送の融合・連携政策が様々な議論がなされ、枠組みや方向性が示されつつあります。

 

通信と放送の融合政策議論

0319 319日、慶應義塾大学DMC機構デジタル知財プロジェクト(DIPP)が主催する「コンテンツ政策フォーラム【通信・放送法体系WG編:融合政策2.0:全体論から具体論へ】」が開催されました。今回のフォーラムは、20077月から定期的に開催されてきた産官学連携の通信と放送の融合政策議論の総括と今後の具体的な方向性について議論するオープンフォーラムでした。

 

日本経団連の通信・放送融合の提言

まず、最初に日本経済団体連合会が219日に発表した「通信・放送融合時代における新たな情報通信法制のあり方」の提言が紹介されました。総務省が昨年128日に「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会最終報告書」に出していますが、大きな違いは、経団連側はレイヤー構造を「コンテンツ」、「伝送サービス(役務)」、「伝送設備(ネットワーク)」の三つのレイヤー構造のみとし、プラットフォームレイヤはレイヤー構造の中に入れていない点です。そして、コンテンツレイヤの規制緩和を積極的に実施していくべきだと提言しています。

 

社会的影響力の大きい「基幹放送」、拡大するCGM

それぞれの有識者の方が様々な意見を述べられましたが、今回のフォーラムで主に論点となったのは、主に社会的影響力の大きい「基幹放送」に関する規制緩和です。

 
インターネットの世界は、Web2.0という言葉に代表されるようにCGM(Consumer Generated Media)の比率が高まり、2012年にはCGMの比率が25%にも達すると調査結果も出ています(関連記事)。また、情報データは、IDC3月に発表したように20101.8ゼッタバイト(1,800)エクサバイトに達する見通しです(関連記事)。

 
広告に関してもインターネット広告は増えつつあり、特にクチコミブログ市場は2010年には2006年の4倍になるという調査結果も出ています(関連記事)。 一方、放送における広告収入は減収の一途をたどり、新たなビジネスモデルの転換が求められつつあります。

 
「基幹放送」の定義は、本フォーラムの中においては、122の地方局と5つのキー局そしてNHKを含めた128としています。地方局は、キー局の中継局としての機能も持ち合わせており、通信と放送の融合・連携が進み、インターネット経由で放送の配信が進むと地方局にとっては大きな打撃を受けることになります。

 

「基幹放送」事業者のビジネス転換

NHKの方の説明の中でインターネットによる放送、つまり地上デジタルのIP再送信に関して4月に正式を発表することを述べられていました。来年度には1,000程度、毎週数十の放送コンテンツを提供するとのことです。ほとんどが1回のみで終わってしまう死蔵コンテンツの再利用や、規制緩和しつつ、どのようにインターネットを活用して、マーケットを広げていくかということも議論の一つになるでしょう。

 

通信も含めた全体論から具体論へ

また、今回のテーマは主に放送に関わる議論が多数を占めていたのですが、会場からの質問にもあったように、通信分野からの視点、そして今後サービス提供予定のNGNWiMAXMVNOなど次世代のネットワークサービスと放送の融合に関しても議論を深めていくことが必要となると考えています。

 
今回のフォーラムの中の共通認識は、今まで通信と放送の融合に関する枠組みの議論が中心となっていましたが、これからは、規制緩和など誰がどのようなプロセスで具体的な政策に落とし込んでいくための議論を本格化させていく必要があるであろうという点です。

 

ユーザ視点で日本の通信・放送産業発展に寄与する政策へ

会場からの意見では、通信と放送の融合の枠組みを議論している最中にも、YouTubeやニコニコ動画などの斬新なサービスがどんどん開始され、ITの世界のビジネスも日々進化し、議論されている政策の被害も恩恵も受けずに世の中進んでいるという指摘もありました。

 
日本のICTインフラは世界最高水準の環境にありながら、コンテンツビジネスやプラットフォームビジネスに関しては世界水準から遅れをとっているのが現状です(関連記事)。通信と放送の融合とは、ブロードバンド環境を生かしながら、ユーザ視点で放送コンテンツの恩恵を享受できる点が最大のメリットであると考えています。

 
そして、融合により、通信事業者と放送事業者そしてメーカやコンテンツプロバイダー等にとって新たなビジネスチャンスも生まれてくることが予想されます。これからの潮流がうまく軌道にのるように、政策面においても具体的な議論と方針に進むことが期待されるところです。


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