情報大航海プロジェクトの次世代検索・解析技術、そして情報大爆発時代に備える
デジタル情報は急激な伸びを見せています。IDCの調査によると、2007年は世界のデジタルデータの総量が始めてストレージの容量を上回っています。そして、2007年に281エクサバイトに達したデータは、2010年には1.8ゼッタバイト(1,800)エクサバイトに達する見通しです。そして2011年にはデジタル情報の約半分が恒久的な保存先を持たないことになるとIDCは予測しています(関連記事)。
これからのデジタル情報の急激な情報の背景として、デジタルカメラやデジタル監視、デジタルテレビの世界的な出荷増や新興国でのインターネット増、センサー、クラウドコンピューティングやSNS等をあげています。YouTubeやニコニコ動画等の動画共有サイト等大容量のデータを扱うトラフィックがこれからさらに増え続ける(アーカイブされる)ことになれば、まさに“情報大爆発”という時代になり、情報の氾濫により、見たい情報にアクセスできないという現象も増えてくることが予想されます。
3月17日、「情報価値の共創による国際競争力強化にむけて」というシンポジウムが開催されました。主催が日本経済新聞社、日本経済新聞デジタルメディアで後援が情報大航海プロジェクト・コンソーシアムです。
講演の中では“情報大爆発”時代がおき、大量の情報にアクセスができる機会が増える一方で、見たい情報にアクセスできない状態、つまり“情報激流”に飲み込まれ、さらに“情報沈没”という懸念を指摘しています。
そして、情報は単純にインターネットにアクセスして検索するだけでなく、様々な例をあげながら、様々な情報の検索の活用シーンがあり、それを活用することによって新たな創造を生み出す重要性を述べています。
これからの取り組みを支援していくために、情報大航海時代プロジェクトが存在しているという印象を持ちました。
講演会場の外では、情報大航海の各種プロジェクトの実証実験の概要を展示していました。以下、実際にお話を聞いた展示を簡単に紹介させていただきます。
(参考:情報大航海プロジェクトで開発した共通技術群)
サグールTV
インターネット上の動画(約60サイト)を一元的に検索し、視聴できるサービスで、検索だけでなく、関連性の高い動画を続けて探すことや連続再生することができるサービスです。また、ユーザがどういう動画を好んだか、その動画の人気が反映されていきます。その他、動画内容に関連した広告(CM)が表示されるようになっています。
ランダリング検索サービス
質問に答えていくことで、潜在的に求めているものを探し出すというサービスです。リクルートと沖電気の実証実験を紹介しており、転職希望者の希望やニーズをうまく引き出し、転職先にうまくマッチングできるようにナビゲートしていく仕組みです。
すこやかライフサポートサービス
装着したヘルスケアセンサーを使って、日常生活の中から、随時ヘルスケア情報を収集し、専門医による医療知識を活用して解析した結果を付加した上で、かかりつけ医などのフロントサービスを提供するという仕組みです。高齢者の増加や一人住まいの世帯が増え続け、そしてメタボリック検診と言われる制度も4月から始まるという世の中の背景を考えると、非常にニーズの高い取り組みではないかと感じています。
プロファイルサポート事業チアルタウン・オンライン(仮称)
事業間、サービス間を越えた個人の行動履歴DBプラットフォームを目指す仕組みで、いわゆる“ライフログ”というサービスです。ユーザの携帯電話やパソコンやゲームなどの機器からの行動履歴を一元的なデータベースに登録し、利用者の嗜好性を分析しながら、最適なサービスを提供(リコメンド)するというコンセプトです。
Open IDやOpen SocialそしてAndoroidの共通プラットフォーム化や認証化の動きや、医療分野においてはGoogle
Health等の動きも始まっています。情報大航海プロジェクトは技術面と法制度面を整備しているところですが、一歩間違えると、世界のスピードに乗り遅れてしまい、日本はやっぱり“IT鎖国”や“ガラパゴス化”だったと言われ、ICT国際競争にさらに乗り遅れてしまう懸念も考えられます。
これからの情報大航海のプロジェクトが、ユーザにとって恩恵を受けられるよう、そして単なる実証実験で終わることのないよう、日本の国産技術の普及と共通化に向けた取り組みが世界的に見て実を結ぶことを期待しているところです。