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顧客サービス対応はAIが進化しても人間

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2025年3月にガートナーが実施した調査では、世界の顧客サービス部門のリーダー163名のうち95%が「AIを導入しても人間の担当者は残す」と回答しています。また、2027年までに人員を大幅に減らす計画を撤回する企業は50%に達する見込みです。

AIは低コストと即応性で注目を集めましたが、顧客が納得する対応には人間ならではの共感と判断が欠かせません。企業には「デジタルを優先しつつ、人の力も最大限に活かす」ハイブリッド戦略が求められています。

Gartner Predicts 50% of Organizations Will Abandon Plans to Reduce Customer Service Workforce Due to AI

AIに任せきりはリスクが高い

生成AIやチャットボットは、24時間対応とコスト削減をうたって急速に普及しました。しかし導入後、感情を汲み取れない回答や的外れな提案が原因で解約や悪評が相次ぐ事例が目立ちました。応対履歴を機械学習に反映させるには時間も費用もかかり、想定どおりのROIを得られない企業が増えています。

調査結果が示す「計画撤回」の動きは、AIだけで顧客接点を置き換えることの難しさを示す象徴と言えます。

AIと人の役割分担で効率アップ

AIは定型的な質問や手続きの自動処理を得意とし、待ち時間を短縮します。一方、人間の担当者は複雑な相談や感情面のケアに集中でき、応対の質を高められます。さらに、AIが収集したデータを担当者が活用することで、一人ひとりに合わせた提案がしやすくなり、追加購入や契約更新の率も向上します。こうした相互補完の仕組みを整えることで、コスト効率と顧客満足度を同時に高めることが可能です。

共感と判断は人の領域

クレームや不安を抱えた顧客には、声の抑揚や間合いを踏まえた対話が必要です。AIは定型文の謝罪や手順案内を生成できますが、相手の感情を受け止める姿勢までは再現できません。また、規約外の要望にどこまで応えるかといった判断も、人間の経験と状況把握が物を言います。担当者が現場で得た知見をAIにフィードバックし、AIは次回の応答精度を高める――この循環が組織全体のサービス力を底上げします。

目的を定め人員配置を最適化

経営層はAI導入の目的を「コスト削減」「顧客体験向上」「収益拡大」から明確に選び、人員配置や評価指標を連動させる必要があります。たとえば顧客体験を重視する場合、NPSやCSATといった指標とAI応答精度を同時に測定し、改善サイクルを回す体制が欠かせません。同時に、担当者のキャリアをデータ分析や提案力など高度スキルにシフトし、AI時代でも魅力ある職場を構築することが求められています。

今後の展望

2027年以降、AIは対話内容をリアルタイムで要約し、担当者は意思決定と感情面のフォローに専念する形が一般化すると見込まれます。その中での人間ならではの役割がますます求められていくでしょう。

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