オルタナティブ・ブログ > 『ビジネス2.0』の視点 >

ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

国内イーサネット専用線市場は成長基調に ~AIデータセンター間接続の拡大が需要を牽引~

»

IDC Japanは2025年5月30日、「国内イーサネット専用線市場に関する最新予測」を発表しました。AIによる計算需要の拡大により、特定拠点間の高帯域通信を担う専用線の需要が加速しており、市場全体としても安定的な成長を続ける見通しです。

専用線需要を押し上げるAI時代のデータセンター接続

イーサネット専用線は、企業が拠点間を高品質・高信頼性で結ぶための通信サービスであり、広帯域なデータ転送を低遅延で実現する通信インフラです。かつては金融、製造、メディアといった一部業界に限られていた需要が、近年ではクラウドサービスやAIによる大量の演算処理の広がりとともに、多様な業種へと広がりつつあります。

特に注目されるのが、AIや生成AIの台頭を背景にしたデータセンター間接続の高度化です。従来は10Gbps前後が主流だった専用線接続が、現在では100Gbps以上の帯域を求めるケースも増加。データ処理量の爆発的な増加に伴い、AIワークロードに対応可能なハイパースケール型のデータセンター間を直結するための高速・大容量通信インフラとして、イーサネット専用線が再評価されています。

市場拡大を後押しする構造変化と技術ニーズ

IDC Japanは、こうした動きを背景に、国内イーサネット専用線市場の規模が2024年の714億円から、2029年には858億円に拡大すると予測しています。年間平均成長率(CAGR)は3.7%で推移する見込みで、同社はこの成長ペースが閉域網サービス市場全体を上回るとしています。

今後の成長を支えるのは、クラウドネイティブな企業の通信ニーズや、生成AIに対応した高速学習環境の整備に向けたインフラ投資です。また、通信事業者による差別化として、帯域保証型サービスや運用支援付き専用線サービスへの関心も高まっています。

このように、企業IT環境がクラウドからAI中心へと転換しつつある今、信頼性と拡張性の高い通信インフラの確保が、企業にとって戦略的課題となりつつあります。

ハイパースケール化が進む通信ニーズにどう応えるか

IDC Japan株式会社 Infrastructure & Devices リサーチマネージャーの小野陽子氏は、次のようにコメントしています。

今後、AIデータセンターの需要増加などで、パブリッククラウドサービス事業者などが多く利用するハイパースケールデータセンター間通信の需要の増加が見込まれます。通信事業者は、長期的なWANサービスの需要者や市場構造の変化を見据えて、今後のサービスの在り方を検討する必要があります

このような視点は、単なる回線提供から「ネットワーク戦略パートナー」への進化が求められていることを示しています。5GやIOWN、さらにはオールフォトニクスネットワーク(APN)など次世代技術との接続性も含めた中長期戦略が、今後の市場競争で差を生むポイントとなっています。

今後の展望

イーサネット専用線市場の拡大は、通信インフラが単なる「設備」ではなく、企業のAI・デジタル戦略を支える基盤インフラへと進化しつつある現実を映し出しています。

今後、AIがもたらす産業構造の転換に伴い、拠点間通信のニーズは一層の高度化・複雑化が進むと予想されます。ハイパースケールデータセンターを支えるネットワークは、社会全体のデジタル基盤としての重要性を増していくでしょう。

スクリーンショット 2025-05-30 21.43.34.png

出典:IDC Japan 2025.5

Comment(0)