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情報大航海プロジェクトと各省連携戦略プロジェクト

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情報大航海プロジェクトというキーワードを皆さんご存知でしょうか? Googleで“情報航海プロジェクト”で検索すると、上位の10位以内に2006年の記事が数件並び、Googleニュースで検索すると、わずか2件しか結果が出ません(その内私が簡単に触れた記事が1件です)。そして、テクノラティで同様のキーワードで検索すると、ブログで取り上げられる回数は非常に少なく、最近になってジャーナリストの佐々木 俊尚氏(著)の「ウェブ国産力 日の丸ITが世界を制す」の内容を取り上げているブロガーが何人か出てきているという状況です。

20080130

130日、内閣府主催で総務省、文部科学省、経済産業省が共催する科学技術連係施策群である「情報の巨大集積化と利活用基盤技術開発連携群の活動~情報爆発時代に果たす日本の役割と連携強化~シンポジウム」という少々長いシンポジウムに参加してきました。総務省の“情報信憑性検証技術プロジェクト”、文部科学省の“超高性能データベースプロジェクト”、そして経済産業省の“情報大航海プロジェクト”の3つの省庁の連携施策の活動報告になります。

 

今回のシンポジウムのポイントを少し整理

高付加価値産業従事者の知的活動時間に検索に費やす時間が30%で複雑な質問の50%は答えが見つからない、いわゆる「探す」ことに明け暮れる情報爆発時代が到来し、2006年に161エクサバイトだったデータが2010年には4年間で6倍の988エクサバイトになるとしています。(IDC等の資料から抜粋)

 
そして、従来の検索サービスの社会的な問題の例として、経済・教育・地域コミュニティ・社会等においてGoogle等で検索した一番上のデータを使うことにより、時として誤った情報や悪意のある情報が連鎖を起こし、大きなマイナスの影響を与えてしまうという点を指摘しています。

 
今回の連携施策の目標は、“独自の情報サービスを提供するためにあらゆる情報(コンテンツ)を簡便、的確、かつ安心して収集、解析、管理する次世代の知的な情報利活用のための基礎技術を開発する”とし、知的情報アクセス技術基盤を活用した2011年の社会のあり方を検討していくことです。

 

情報大航海プロジェクトの位置づけ

3つの連携施策群の中でも特に注目されるのは、平成19年度が45.7億円、そして平成20年度も41.1億円の政府予算案を出している情報大航海プロジェクトです。プロジェクトの目標は、“次世代検索・解析技術の開発・普及によって将来の情報経済社会におけるイノベーション創出環境を確立し、日本の産業の国際競争力の向上を目指すもの”としています。情報当初情報大航海プロジェクトは、Googleの後を追いかけるプロジェクトという印象が先行し、批判にさられるケースも見受けられました。実際にドコモの行動連鎖検索「マイ・ライフ・アシスタントサービス」や対話型検索、時間空間情報マイニング等の実証事業の事例を見ると、Googleのコンセプトとは全く異なるもので、今後の可能性を感じることができます。

 

消費者の視点は?
情報大航海プロジェクトの開発・普及に向けた3つの原則として、“ユーザ主導”、“グローバルな貢献”、そして“オープン”であることをあげています。そして、個人情報保護や、不正競争防止、著作権などの制度面の諸課題についても検討することとしています。

 
気になるのが、“ユーザ主導”の視点です。今回のシンポジウムは、300名前後が参加する等ほぼ満席の状況になる等の注目度の高さが伺えましたが、ぱっと見た限りでは、民間企業や大学等の有識者が多く、ユーザ側の視点で参加する人をあまり見かけることができませんでした。

 
私自身、AMNブログ等のWeb2.0系のセミナーや勉強会に参加するのですが、その雰囲気とはかなり対照的だったというのが印象です。国産の知的情報アクセス技術基盤を作っていくためには、ユーザ参加型の雰囲気を作り、もっともっと盛り上げていく必要があるのではないかと感じています。また、本シンポジウムが、省庁の連携施策にも関わらず、ITmediaCNET等のメディア系をはじめとしたニュースサイトに掲載されていないのは少々寂しいところです(1/31 6:00現在)。

 

まとめ

本シンポジウムでは、非常に面白く大変興味深い内容に多く触れることができました。情報が爆発する時代、その中でいかに有益な情報を個人個人の趣味嗜好にあわせて最適な情報をリコメンドし、そして価値を創出すること。検索とは、簡単に見えてリアルとネットを組み合わせると非常に奥が深い技術であることを改めて感じさせられました。 そして、技術だけでなく、法律等の制度面もしっかり議論し、ユーザが積極的に検索しようという意欲が沸く、より安全でかつ、国産の知的な検索サービスを享受できる社会になればと感じています。

 

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