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IT、特にコンサルに携わる方々を癒すメッセージを、ついでに趣味のダーツ話も交えて・・

« 2009年3月10日

2009年3月11日の投稿

2009年3月12日 »

昔、製罐業のクライアントに就いていた頃、製罐したスティールカンやPET(ボトル)を実際使ってお茶や缶詰を販売する取引先の製品を格安で販売する社内システムがあって。

レンジでいうと、500mlのお茶が55円くらいで買えました♪

むむっ?でも・・・いくら取引先優待価格ってもPETだからなあ。採算合わないんじゃないの??

 

雑談ついでに聞いてみたことがあります。

 

(あの、部長、この缶詰、オイシイですね。でもすごい安いけど、採算はこの社内販売だけだとあわないんじゃ・・・?)

「うーん、そうですねえ。そうかもしれないけど、でもね、実はこの缶詰屋さん、今月いっぱいで潰れちゃうんですヨ。だから現品は全部なんらか処分しなければならないから、この値段で十分だから引き取って欲しいって頼まれましてね。長い付き合いだったから・・・まあ、当然全社でできるだけ買いますわね。」

(およよよよーっ。!泣ける話だなあ。ハイ、私も2箱くらい、買わせていただきます!!)

「すみませんねえ。でもね、ちなみにちゃんと体力ある健全な会社の場合だと、さらに安いんですけどね、謝恩価格ってやつですね。だから、実はこれは当社の謝恩(購入)価格、ちと割高ですねえ」

(爆)そっかあ。でも製造業と流通・サービス業の、あったかい商い風景を垣間見た気がします。

 

そんな購入がなくとも、よくディスカウントショップにいっては、普段飲むお茶だビール(正確には発泡酒か第3のビールとかいうやつですが)だと、安売り商品をたくさん買って飲んでいますが、それらお茶がじゃあ私が一番好きな生茶に比べて、おいしくないかというと、・・・味はそりゃあ違うけど、別においしくいただけたりしてますけどねえ。

至極の味を求めたりしない限り、別に十分満足します。むしろその安い値段と比較したら、満足でしょう。これも1つの「Value Proposition」ですよね。

そんな、いわゆるノーブランド品のお茶を飲みながら、ふと、・・・なぜかコンサルティングプライスの正価とディスカウントプライス(=実際の売値)の掛け合いというか、プライシングに関することをよく思い出してしまう。。。?なぜだろう。

 

普通PETのお茶を買うと(500ml150円程度します。ディスカウントショップで、それが100円未満で買えたりします。ツワモノなお店では、2L200円未満、ミネラルウォーターだと100円未満なんてことも。

じゃあ、そもそもの正価ってなんだっただヨ!?安く売ることも不可能じゃないじゃんか。

・・・とかつい思ってしまうのですが、冒頭のような「処分セール」事情もあれば、ブランド力の問題で、定価は150円だけど実勢価格は平均125円、でも工夫すれば採算はとれる、という考え方で商売する企業も多いのでしょう。もちろん正価で売れるにこしたことはないけど、定価販売量は少なくても平均の実勢価格が目標ラインを割っていなければ、あとはがんばって少しでも定価、あるいはできるだけそれに近いレンジで売れるように努力するだけです。

 

コンサルティングのプライシングも非常にそれに近いものを感じます。

正価は、弊社の場合、親会社(米国)の意向もありますから、期待売上-人件費等コスト≒粗利を計算して、それに未達リスクの係数を勘案して結局いくらくらいの利益を見込みたいか、から・・・逆算して平均的なGMGross Margin)や平均売値を試算し、そしてそれが達成できるように正価を設定します。

正価は企業のブランドを表わすものでもあり、高い安いにプライドが表現されます。

基本コンサルティングは薄利多売モデルではないし、ファーストディスカウントやボリュームディスカウントは実態として存在しますが、それはあくまで特別なお値引というスタンスは、かなり強く主張する方だと思います。ワンストップビジネスモデルの大手ファームであっても、緻密な計算のもとで、最初の戦略コンサルティングを比較的大幅値引きし、そしてSI工程ではボリュームでしっかり利益を得る。少しくらい通常のSI企業より割高であっても、戦略から実行まで一貫してクライアント・ファーストで企業の新しい武器を実現してあげる。なので、クライアントも(多少の割高感には)納得もあるし、むしろそれをあまり買い叩かない姿勢にクライアント側にも企業としてのプライドを表現されることもあります。

 

ディスカウントは悪じゃないし、交渉そのものは非常に普通の商行為です。

ただ、正価の半額が実勢価格なのでは・・・という話もありますよね。

思うに、コンサルティングの場合、正価とは提供側になんのディスカウント理由も存在しないときに堂々と要求する対価のことです。

私の経験にのみ基づいて例示すると、たとえばトラブルプロジェクトのアセスメントや初期段階の実務(マネジメント)支援、あるいは迷走しつつある企業経営に対する再生戦略の企画などでしょうか。

トラブルプロジェクトに投入する私のメンバーのことを思えば、値引きすることに意味を感じられないし、堂々と正価を要求して当然のように超ハイ・バリューを提供すればいいわけで。時にとてつもない残業や休日勤務もこなし、自分が火をつけたわけでもないのに高い当事者意識のもと、黙々とプロジェクトを再建していくのです。

あるいは、次の打ち手を見失った企業経営に対して、現状を究めて客観的に分析し、次の施策を詳細な実行手順付きで企画するのです。感情論がはさまり仕事として成立しないことも多いですが、客観的にみて戦略的施策のための増資の見返りに現経営の退陣がファンドから前提条件といわれることもあり、それに当社としても賛成であったりすることがあります。「正しい道を」示すための「対価」のだから正価でお願いしたいわけです。

 

ところが、たとえば当社ブランドはそう著名じゃないとか初取引だからそこをなんとか、というディスカウントにもなるわけで、そこで結局のところはいくらか割り引いて落ち着くのですが、たとえば1000円の商品を買いに来て財布に950円しかなければ、そこをまけるかどうかは売り手の甲斐性と買い手の人柄みたいな話はあるでしょう。だけれども、財布に500円しかなければ、これは甲斐性も人柄も相当な事情がお互い合意できないと、商いは成立しないでしょうね。

成立する可能性はもちろんあるのですが、そこはもう方法論は存在しない、人間の細やかな感情的判断になるのです。ただこれを乱発したらビジネスは成り立ちません。

 

・・・で、結局は、「正価は1000万だけど今回はすべての事情を鑑みて特別プライス、500万でいいですよ」みたいな判断は、年に何度かせざるを得ないのです(数字はただの例示です)が・・・

景気のこともあり、特に既存のお客様、既存取引の(延長というよりは)拡大の際には、普段よりディスカウントの幅も回数も多くなってきました。

 

そうすると、なんか今までは自分は生茶を売っていたつもりが次第にノーブランドのお茶を売っていたような状況になって・・・そうすると正価に近いセールスなんて当分難しいじゃん!?なんてブルーな気持ちになってしまうのですが・・・といいながら、「ん!このお茶、ブランドないけど結構うまいじゃん」とかささやかに感動して穏やかになったりして・・・爆

 

(結局雑感で終わってしまった・・・失礼シマシタ)

TORAPAPA

コンサルマーケットが飽和したというエントリを前日書きました。
別にコンサルマーケット自体は否定してないし、正しい活動をすればいいだけです。

今日は、これに派遣サービスも絡めて、今後のIT(コンサル)人材についてマクロな要件を整理しておきます。
 
人材派遣サービスモデルでは特に、「この人はこんな経験があり、こんなスキルがあります」「だからこんな仕事に向いているはずです」とアピールします。これはコンサルセールスでも似たようなSCENEは多いです。

ただ、これだけマーケットが不況のあおりである意味正しく歪んでしまうと、いわゆる財布の紐が固くなるという話で、そうそう簡単にクライアントは投資してくれません。

釈迦に説法の方には恐縮ですが、最近は「これまでにやってきた・できたこと」の延長上だけではなかなか仕事が成立しないばかりか、経験値の世界で勝負するにしてもかなり優秀なスキルが備わってないと、なかなか売れないので悩ましいです(売値の問題ではなくValue Propositionです)。
 
ある先輩から言われ温めてきた格言みたいなのがあり、「コンサルマーケットは7年周期でゼネラリストとスペシャリストのどちらの志向に必ず振り子がぶれていくのダ」というものがありまして。

この理論でいくと、たとえば芸歴(笑)20年の私がいた頃はまさにゼネラリストピークな時代でした。そして本当にその約7年後、気がつけば確かにクライアントマーケットがスペシャリスト志向に向きつつあり、そしてさらに約7年後、前職は完璧なスペシャリスト志向に教育や評価システムもかわっていた気がします。

なので現職に転職し、そしてさらに約7年、また徐々に、ゼネラリストピークを感じつつあります。
 
私の理解で、「ゼネラリストピーク」とはこういう意味です。

極めて深い知識・経験で「スペシャリスト」として売れる人以外は、
極めて広範囲に「ゼネラリスト」として使いやすい人が好調に売れる。
 
要は、経験値からかなり優秀なスキルが備わっていれば相変わらず「スペシャリスト」として売れることは不変なのですが、逆にその要求レベルははっきりと上昇志向であり、そこに漏れる「スペシャリスト」は、「これまでにやってきた・できたこと」の延長上ではないが、ゼネラリストとして申し分ない柔軟性、順応性を発揮できないと、売れないのです。

私個人も、こういう中で個々を営業していくにあたり、「パーソナリティ」「仕事に対する意気込みや希望」について効果的に補足することで、ゼネラリストとしての高い適性をうまくセールスできるように心がけています。
 
しかし残念ながら、「過去の栄光」のように「これまでにやってきた・できたこと」の延長を追う人は、そのほとんどが、現在の「ゼネラリストピーク」時代には合致しないのです。
 
困っちゃうよなあ。でもその人の気持ちもわかりますからね。クライアントとはいろいろ協議・調整はしますけど、でも、結局最後はニュートラルに判断しないとサービス提供者というか、ディールメーカーとして失格だとも思うんですね。だからゼネラリスト教育プログラムも大事と思っていろいろ工夫していますし、

・・・だから、せめて「パーソナリティ」「仕事に対する意気込みや希望」のアピールは上手になってほしいです。
 
こればっかりは、ベテランコンサルタントですら、時に「下手だなあ」と思うときがありますからね(笑)。

TORAPAPA

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北添 裕己

北添 裕己

アクセンチュア、ヘッドストロングを経て現在、キタゾエアンドカンパニーで金融機関主体の経営・ITコンサルに従事、特にプロマネ領域にカリスマ的手腕を発揮

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