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自主ゼミに細川裕史さん(学習院独文助教)を招いて、ドイツのコミックについて講義してもらいました。ドイツのことは、あまり知られておらず、とくに歴史的な展開は19世紀の『マックスとモーリッツ』からいきなり最近の日本マンガの影響に関する話題に飛んでしまうような状況がありました。概略ながらドイツのコミック史を伺い、専門である言語学においてコミック翻訳が果たす影響について伺いました。
僕としては、戦後ドイツに流入したディズニーなど米コミック翻訳にあたり、オノマトペの翻訳語として動詞の語幹のみを用いる用法が出現した結果、もともとドイツ語に対応する語彙がなかった領域を開拓した話が興味深かった(このあたりは細川さんの論文で詳しく展開されています)。その動詞語幹応用は、当然のように日本マンガの翻訳にも使われ、いわばドイツ語にオノマトペ(とりわけ日本で擬態語、擬情語などとされる物理的な「音」を伴わないもの)に対応する言語の領域を広げたようで、マンガやコミックの越境性が言語に影響する現象としてじつに面白いと思いました。海外研究者が、よく日本語のオノマトペに関心を寄せるのも、何となくわかる気がする。

もうひとつ、マンガ史研究会MLへの投稿で、関西外語大の須川亜希子さんがご自身も執筆されている米国の本を紹介されています。
Critical Survey of Graphic Novels: Manga」Salem Press
須川さんによると「アメリカの中・高校生がマンガを研究しようと思い立ったときに手にする入門書のようなコンセプト」の本らしいですが、出版社の紹介欄で取り上げられている日本マンガのタイトルを見てると楽しいです。なるほど、こういうものが翻訳され、こういう本で紹介されるんだな、といろんなことを考えます。ひとつ面白かったのをあげると、
「YOTUBA&!」
もちろん「よつばと!」なわけですが、「と」は「&」なんだあ、と。まあ、それはその通りなんだけどね。

natsume

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夏目 房之介

夏目 房之介

72年マンガ家デビュー。現在マンガ・コラムニストとしてマンガ、イラスト、エッセイ、講演、TV番組などで活躍中。

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