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http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20120514-OYT8T00650.htm

戦後、ストーリーマンガが盛んになる前、絵物語のブームがあり、『少年ケニア』などが知られるが、福島鉄次『沙漠の魔王』も、名は知られていた。が、以前秋田書店がごく一部を、部数限定で復刻した以外は、もとの連載や高額な単行本を入手する以外、手にすることができなかった。それが、ようやく復刻となった。いささか高額ではあるが、この復刻は素晴らしい。オールカラーで、その絵・構図のうまさ、コマ展開の素晴らしさ(回転する視線運動を活用した変則の円形コマ構成など、驚異)、空が真っ赤になる色彩の魔術、いやはや嘆息。

ただ、現在のマンガと異なり、月刊でじっくり読むタイプで、話の展開がもう、いきあたりばったりで、あちこちに飛び、魔人、怪人、巨大メカ、戦闘機、それはそれは目のくらむような造形の嵐。宮崎駿が影響された画像も次々出てくる(飛行石も出てくる)。なので、読むのに時間がかかるので、まだ一部しかちゃんと読めていない。

しかし、この作品は戦後の絵物語~ストーリーマンガの流れを理解するうえで、むちゃくちゃ重要である。もともと小学館の編集者だった人が秋田書店を起し、戦前から一緒に仕事をしていた福島にアメコミを資料として渡し、月刊誌「冒険王」のメインを任せて、実際大人気になった作品。別冊のエッセイ集は、歴史的経緯を書いた中野晴行、リアルタイムで影響を受けた小野耕世の追憶、宮崎作品との影響関係を具体的に記した叶精二など、貴重な「読本」となっている。

先日、自主ゼミで一部をみんなに見せたが、かなり盛り上がった。やはり、アメコミの戦後マンガにおける影響は、今後さらに検証されなければならないし、そのためにはこうした発掘復刻作業が必須だろう。秋田書店は、こうした仕事をあまり出していない気がするが、これからは「冒険王」の復刻などもやってもらうと、歴史研究は進展するんだけどな。
僕はやはり絵物語で売れた月刊誌「冒険活劇文庫」(明明社・のち少年画報社)を一冊もっているが、「絵物語」と一言でいっても、さまざまなバリエーションがあるのに驚く。ほんとに、僕たちは何もしらないんだなあ、とつくづく思わせられる貴重な復刻でした。ありがたい。

natsume

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夏目 房之介

夏目 房之介

72年マンガ家デビュー。現在マンガ・コラムニストとしてマンガ、イラスト、エッセイ、講演、TV番組などで活躍中。

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