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よしながふみ『きのう何食べた?』1巻(講談社)が出てますね。
エッグのカウンターでYざきさんとも話しましたが、いやー、食べるの大好き人間にとっては、やはりタマらんですね、この人の食い物系は。別に、物凄くおいしそうな絵ってわけではないんだけど、語り方に愛があるんだなー。

『愛がなくても』のようなエッセイ風ではなく、弁護士と理容師の同棲ゲイの話。弁護士が節約家で、月2万5千円内の予算でいかにおいしい食事を作るかにストレス解消と生きがいを感じるタイプ。こういう設定の限界を設けて、そこで工夫をするところが、いかにもよしながふみ的です。調理過程のほとんどが、絵で分節されるよりも、弁護士の脳内で組み立てられる調理過程の先読みの内語で語られるんだけど、これがホントに日常的なお惣菜だったりして、しかもうまそう。

〈菜の花は塩ひとつまみを入れた湯でさっとゆでて〉
〈白だしにみりん少々 水少々を加えて そこかにからしを溶いて 菜の花を加えれば完成!〉
〈おっとかつおのたたき用に さらしたまねぎの 用意をしないと〉(1巻60p)

こうやってセリフを引用すると、別段どうってことないのだが、マンガのコマ構成で時間を与えられると、日常的な時間の顔→調理場面→セリフだけのカットバックなのに、なぜか味が想像できてくる。できた料理の絵は、それだけ見ても「写真をもとにキレイに描きました」という以上のものではないが、手際のよさそうな調理の過程がそこに投影されるので、うまそうな印象になる。
そして、主人公二人の関係描写の中で「おいしさ」や二人でうまいモノ食べることの「しあわせ」感が料理に投影される。こないだ『のだめ』で分析した、音楽と人間関係の相互投影の関係と同様の心理効果があるんだね。
僕は料理しないけど、作ってみたくなる。不思議な感じです。

natsume

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夏目 房之介

夏目 房之介

72年マンガ家デビュー。現在マンガ・コラムニストとしてマンガ、イラスト、エッセイ、講演、TV番組などで活躍中。

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