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本日、第三回目の配信です。
今回のタイトルは「局地戦ではなく、総力戦で考える」ですが、これは日頃の仕事で感じている問題意識をまとめたものです。
ある程度の大きさを持った組織になると、どうしても縦割りの弊害が出てきます。「組織の論理」です。
このような企業では、「組織の論理」を超えて、企業の本来の目的である「お客様の課題の解決」を組織横断的に総力戦で取り組む必要があります。今回Podcastでお話した背景には、この問題意識があります。
特に、製品主導型マーケティングから、顧客中心モデルに変革してきた現代は、このことは極めて重要になっています。
皆様のご感想をいただければ幸いです。アクセスはこちらで。
下記は原稿です。収録中は箇条書き原稿を読んでいるため、この通り話していませんが、ご参考まで。
---(以下、原稿)---
『マーケティングが分かると、ビジネスが見える』
■第三回■ 局地戦ではなく、総力戦で考えるこんにちは、永井孝尚です。
私は日本IBMのソフトウェア事業部で、マーケティング戦略を担当しています。どうぞよろしくお願いいたします。
「マーケティングが分かると、ビジネスが見える」と題して、4回に渡ってお話させていただいてます。
第一回目は、「マーケティングはバリュー・プロポジションから始まる」
第二回目は、「お客様の課題をどのように解決できるか、正しく考える」
第三回目は、「局地戦ではなく、総力戦で考える」
第四回目は、「マーケティング・プロフェションの皆様へ」をお伝えしています。
■ ■ ■ ■
第三回目の今回は、「局地戦ではなく、総力戦で考える」です。
今回、お伝えしたいのは次の4点です。
「現代のヒット商品を生み出す要因は何か?」
「なぜ、総力戦なのか?」
「過去のロマンは、現代はどのように変わるのか?」
「我々はどうすべきか?」です。
■ ■ ■ ■
さて、最近、ヒット商品の生み方が変わってきているように思います。
例えば、昨年12月に、日経ビジネスで「ヒット連打の新法則」という特集がありました。
この記事では、最近のヒット商品上位は特定企業が独占していることを分析しています。
いわゆるヒット商品の寡占化です。
ヒット商品を独占する企業に共通する点があります。
何だと思いますか?
それは、独創性を育む文化でも、トップのリーダーシップでも、また、人材でもありません。
共通しているのは、ヒット商品を生むための組織作りを行っていることです。
これらの企業に共通しているのは、開発部門、営業部門、又は単一事業部だけの努力でヒット商品を生んでいるのではなく、全社最適化を通じてヒット商品を生んでいます。
つまり、局地戦ではなく、総力戦で、ヒット商品を生み出しているのです。
言い換えると、「縦割りの弊害」を克服し、「全社最適」を達成することで、お客様のニーズに応えているのです。
■ ■ ■ ■
全社最適を行ってヒット商品を生み出している企業は、組織の壁を取り払って、オープンに情報を共有し、場合によっては海外のパートナーともアライアンス等を通じて協業しながら、部門間の力を結集してお客様に価値を届けています。
数十年前までは、社内の複数の開発チームで製品開発を競わせる、ということを行っていた企業はいくつかありました。現在では、このような企業は極めて少なくなっています。
この理由は、単に昔が今よりも余裕があったということだけではないのではないでしょうか? むしろ昔は、製品主導マーケティングが有効で製品の機能が重要だった時代だからこそ、有効な戦略だった、ということなのではないでしょうか?
現代は市場全体が顧客中心モデルに変わってきたことで、単に商品力だけの勝負ではなくなったために、複数チームで製品の優劣を競わせること自体の意味が薄れてきています。
■ ■ ■ ■
また、ほんの10年前までは、
「全社方針に反対し、ある事業部の有志でこっそり開発していた技術がやっと陽の目を見て大輪を咲かせ....」
というようなロマンを感じさせる話がありましたが、世の中のフラット化が進み、変化が速くなった現代、ますますこのようプロジェクトの進め方は難しくなってきているように思います。
むしろフラット化された現代では、有志だけでこっそり開発するのではなく、社内外に積極的に情報をオープンにし、プロジェクトに賛同する有志を集めて実施する方法が、よりマッチしているのではないでしょうか?
LINUXを開発したような方法ですが、実際、お客様によって企業が提供しているオープンソースを成長させている例もあります。面白そうなプロジェクトがあると、やりたい人が集まる。これが現代のロマンなのではないかと思います。
市場全体が顧客中心モデルに変わってきた現在、マーケティングも局地戦ではなく、総力戦で企業全体の力を活用し、場合によっては足りない部分はパートナーとのアライアンスで補って、お客様のご満足を得るようにしていく必要があります。
■ ■ ■ ■
以上のように、これからのマーケティングは、局地戦ではなく、総力戦でどのようにお客様の課題を解決していくのか、を考えていく必要があります。
このためには、マーケティング担当者には、相手と確実に意思疎通ができるコミュニケーション力と、複数部門間の利害調整ができる交渉力が必要になります。
従って、対人力も、マーケティング担当者にとって非常に重要な力です。
■ ■ ■ ■
さて、第三回は「局地戦ではなく、総力戦で考える」というテーマでお送りさせていただきました。
次回は、「マーケティング・プロフェッションの皆様へ」というテーマでお送りいたします。
どうもありがとうございました。
---(以上、原稿)---
関連リンク:
Podcast第2回配信:「お客様の課題をどのように解決できるか、正しく考える」
Podcast配信開始:「マーケティングはバリュー・プロポジションから始まる」
最近、温暖化が進んでいることを示す様々な調査結果が相次いでNASAから発表されています。
例えば、「NASA、南極で大規模な積雪の融解を発見・総面積は米カリフォルニア州に匹敵」という記事。NASAのジェット推進研究所とコロラド大学の共同研究の結果として、温暖化の影響で南極で大規模な積雪の融解が起こっていることを伝えています。
「温暖化が進行する地球」という記事。NASAのゴダード宇宙研究所が1951年から1980年の地表温度の平均値に対する乖離値を示した温度マップを発表しています。これを見ると、どの地域で温暖化が進んでいるのかがよく分かります。
1880年以降の全地球レベルの地表温度のグラフもあります。1980年代以降急激に伸びています。
なぜ、石油が活発に使われ始めた20世紀中頃からではなく1980年代からなのか、という問題ですが、これは地球が二酸化炭素等の温室化現象の原因が増加してから、実際にその影響が出るまでのタイムラグがあるからかもしれません。
私は地球温暖化の専門家ではありませんので、素人の意見ですが....。
この仮説が正しいとすれば、温暖化対策を打ってから効果が出るまでの間も、同様に数十年の期間がかかるということですので、出来るだけ早め早めに対策を打っていく必要があります。
一方で、世の中を見ると、最近、温暖化ビジネスがいたるところで始まっているように思います。
NASAや大学研究機関等のインフルエンサーにより啓蒙活動を行い、人々の認識を変えていくことで、多くの企業が温暖化ビジネスに参入しやすくなり、この結果、地球の温暖化を食い止めるパワーも大きくなります。
地球規模で壮大にマーケティング手法を活用して進めているように見えます。
一方で今後の問題点は、「温暖化ビジネス」を記号として消費し尽さないことだと思います。(分かりやすく言うと、人々が温暖化対策というものに「飽きてしまわない」ようにする、ということです)
マーケティング手法では、ともすれば飽きやすい消費者に対して常に新しい価値観を提供し続ける必要があります。数十年間という期間での根気が要る対策が必要な温暖化対策では、これが大きな障害になる可能性があります。
現時点では多くの人達が地球温暖化に対する危機感を持ち始めていますが、新しい視点を提供し続け、常に人々が危機感を持ち続けられるかが、長期的な課題なのではないでしょうか?
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