Podcast配信開始:「マーケティングはバリュー・プロポジションから始まる」
本日から毎週4回、「オルタナティブ・ブロガー リレー」で、「マーケティングが分かると、ビジネスが見える」と題し、Podcast配信が開始させていただきました。
今回から4回、以下の内容でお伝えします。
第一回目... 「マーケティングはバリュー・プロポジションから始まる」
第二回目... 「お客様の課題をどのように解決できるか、正しく考える」
第三回目... 「局地戦ではなく、総力戦で考える」
第四回目... 「マーケティング・プロフェションの皆様へ」
マーケティングの導入部分の話ですが、皆様のご感想をいただければ幸いです。アクセスはこちらで。
下記は原稿です。この原稿を書いて一旦覚えた後、箇条書きにした上で、収録中は箇条書き原稿を読んでいるため、実はこの通り話してはいないのですが、ご参考まで。
---(以下、原稿)---
『マーケティングが分かると、ビジネスが見える』
■第一回■ マーケティングはバリュー・プロポジションから始まるこんにちは、永井孝尚です。
私は日本IBMのソフトウェア事業部で、マーケティング戦略を担当しています。どうぞよろしくお願いいたします。今日から「マーケティングが分かると、ビジネスが見える」と題して、4回に渡ってお話させていただきます。
第一回目は、「マーケティングはバリュー・プロポジションから始まる」
第二回目は、「お客様の課題をどのように解決できるか、正しく考える」
第三回目は、「局地戦ではなく、総力戦で考える」
第四回目は、「マーケティング・プロフェションの皆様へ」をお伝えします。
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さて、第一回目の今回は、「マーケティングはバリュー・プロポジションから始まる」です。
今回、お伝えしたいのは次の3点です。
「バリュー・プロポジションとは何か?」
「バリュー・プロポジションの実際の例はどのようなものなのか?」
「バリュー・プロポジションがうまく定義できないと、どうなるのか?」です。
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「バリュー・プロポジション」という言葉は、もしかしたら聞き慣れないかもしれません。
「バリュー・プロポジション」のうち、前半のバリューは「価値」という意味です。
一方、後半の「プロポジション」は「提案」とか「主張」という意味です。従って、「バリュー・プロポジション」とは「価値の主張」という意味になります。
私は、マーケティングの出発点は、この「バリュー・プロポジション」を考えることから始まると考えています。何故かというと、「バリュー・プロポジション」は、差別化ポイントを明確にしてくれるからです。
「差別化」は、マーケティングに関わる人達にとって、常に重要なテーマですが、どのように差別化すればいいのか、なかなか具体的なイメージが沸かない、というのが実態なのではないかと思います。
例えば、「競合他社との差別化ポイントは何ですか?」と尋ねてみると、様々な答えが返ってきます。
例えば、「うちはスキルのある人材がいる。我々の人材そのものが差別化である」、という答えが返ってくる場合があります。
確かに人材は重要なポイントですが、実際には、競合他社と比べて何が優れていて、その人材がお客様にどんな価値が提供できるのかを明確にする必要があります。
また、「商品の性能は、ウチが業界一番だ」、という答えが返ってくる場合もあります。
競合が全く追いつけない性能があり、かつ、お客様にとって性能差が大きな意味を持つ場合、これは大きな差別化になります。
しかし、他社がキャッチアップできる程度の性能差であったり、お客様にとって性能差が大きな意味を持たない場合、これは差別化にはなりません。
この差別化を考える方法が、「バリュー・プロポジション」という考え方です。
では、バリュー・プロポジションとはどのようなものなのでしょうか?
バリュー・プロポジションとは、3つの条件で決まります。
「(1)お客様が望んでいて、(2)自社は提供できるけど、(3)競合他社は提供できない価値」
です。
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例えば、街の電器屋さんのケースで考えてみましょう。
ここでは、競合相手として、家電量販店を想定します。
家電量販店の強みは何でしょうか?
色々ありますが、一つは圧倒的な販売量に裏打ちされた価格競争力です。一方、街の電器屋さんが提供できる強みは、街の住民であるお客様に対するきめ細かいサポートです。
さて、街の電器屋さんが対象とするお客様は誰なのかを考えてみましょう。
「とにかく安い商品を」と思っているお客様は、家電量販店で商品を購入しますので、街の電器屋さんのターゲットにはなりません。「価格は少々高くてもよいから手厚くサポートして欲しい」というお客様が、街の電器屋さんのターゲットになります。
このように考えていくと、
『近所に住む、機械に詳しくないシニアの富裕層』
はターゲット候補になり得ます。
具体的には、お金をある程度持っており、デジタル家電の購入を検討中で、あまり価格は気にしないけど、複雑なデジタル家電のトラブルが起こった場合は直接家に来てサポートして欲しい、そのような価値を求めている人達です。
以上の考え方を当てはめると、街の電器屋さんのバリュー・プロポジションは、3点にまとめられます。
一点目の【お客様が望んでいる価値】ですが、これは
団塊世代の富裕層が必要としている、手厚いサポートがこれに該当します。二点目の【他社が提供できない価値】ですが、これは
家電量販店が提供できない、お客様の自宅まで直接サポートに出向けるフットワークの良さが該当します。三点目の【自社が提供できる価値】ですが、これは
ますます複雑になっていく最新のデジタル家電による生活を、お客様が十分に楽しめるように支援できるサポート力がこれに該当します。実際、このような市場にターゲットを絞って、毎年2ケタ成長を続けているメーカー系の販売店もあるそうです。
この例でも分かるように、バリュー・プロポジションを考える際のポイントは、3つです。
・まず、ターゲットとなるお客様が絞り込まれていること。
・2番目に、そのお客様が望んでいる価値を理解していること。
・3番目に、競合他社が真似できない自社の価値も把握できていることです。バリュー・プロポジションが、明確になっていれば対象顧客や訴求ポイントが明確に絞れているので、そのままプロモーション戦略やチャネル戦略を展開することができます。
ここで例として挙げた街の電器屋さんの場合も、このバリュー・プロポジションを起点に考えると、色々なプロモーション戦略やチャネル戦略を展開できそうです。
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一方で、想定していたバリュー・プロポジションと、現実のミスマッチが起こることがあります。特に市場が大きく変わっている場合は、お客様のニーズも大きく変わっているため、このようなことはよく発生します。
このような場合、数年前までのバリュー・プロポジションでマーケティングを行ったりすると、全く成果が上がらないばかりか、逆に市場にネガティブ・イメージを与えることになりかねません。
マーケティングでは、バリュー・プロポジションがいかに分かり易くお客様に受け容れられるかがカギなので、もし当初想定していたバリュー・プロポジションがすんなりと受け容れられない場合は、再度見直しを行う必要があります。
見直しを行う方法はいくつかありますが、その一つに、実際に何組かのユーザーに集まっていただき、実際にインタビューを実施する「フォーカス・グループ」という手法もあります。
「フォーカス・グループ」では、予めいくつかのバリュー・プロポジションを用意し、実際のユーザーを対象にインタビューを通じて検証していきます。
さて、以上の通り、製品プロモーションにかける人・モノ・お金・時間が見返りあるものかどうかを決めるカギは、バリュー・プロポジションです。
手間は惜しまずに、じっくり考えていきたいものですね。
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さて、第一回は「マーケティングはバリュー・プロポジションから始まる」というテーマでお送りさせていただきました。
次回は、「お客様の課題をどのように解決できるか、正しく考える」というテーマでお送りいたします。
どうもありがとうございました。
---(以上、原稿)---