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2013年3月3日「NHKスペシャル|"いのちの記録"を未来へ~震災ビッグデータ~」が放送され、車載カーナビに残された車の140万台の走行記録などのデータ分析結果などが報告されています。

震災後の人々の行動分析では、自動車の走行記録から避難する人よりも浸水地域に入る人が上回っているという状況が確認できています。家族や知り合いを助けようとしてピックアップをし、避難をする途中で津波に飲み込まれるというピックアップ行動で多くの人が犠牲になっていることがわかっています。

そのほかにも、多くに人が近くの避難所に移動して犠牲になった状況や、震災後の15分後に右折も左折もできない超渋滞現象のグリッドロックになった状況などが明らかになっています。

震災時に活躍したプローブ情報

2011年3月に発生した東日本大震災の際に、被災地での道路状況の把握に大活躍したのが、ホンダの車に搭載されたインターナビから提供された通行実績情報(プローブ情報)です。インターナビは、ホンダ車のオーナー向けの無料会員サービスで、会員数は2012年末で170万人を超えています。会員の車に搭載されたGPSやセンサーデータから数秒単位で緯度・経度と時間の走行状況データがアップデートされ、これらのビッグデータを活用し詳細な案内ルートなどのサービスを会員向けに提供しています。

「スマートルート」機能の場合は、有料道路の料金データ交通状況をもとに最適なルートを計算し、早く目的地に到着できるよう時間と料金を考慮したルートを案内します。また、「省燃費ルート」機能の場合は、燃費情報データベースをもとに、目的地まで最も燃料消費量の少ないルートを案内します。

震災後、被災地では道路が寸断され、救援の車や救援物資を運ぶための車の通行ルートを把握することが困難を極めました。ホンダは、このような状況を受け、このインターナビの機能を利用し、震災翌日の2011年3月12日10:30にはグーグルのGoogle Mapと連携し、ほぼリアルタイムで把握可能な被災地に向かうための通行可能なルートを表示した「通行実績情報マップ」を会員以外の一般向けにも公開しました。

その後、2013年3月19日にはホンダ以外にもパイオニア(スマートルーブ)、トヨタ(G- Book)、日産(カーウィングス)などの各メーカも、通行実績情報を提供し、ITS Japanがデータを集約し「自動車・通行実績情報マップ」をGoogle Mapsで公開し、物流業者が被災地に支援物資を送り届ける際の通行情報として活用されました。

こういったプローブ情報の活用は災害だけでなく、交通事故の発生率の高い交差点などでの車の急ブレーキポイントを抽出し、車線や標識など改善方法を行い、急ブレーキ回数を約7割減少させるなどの交通事故の軽減につなげたり、道路計画の策定に役立てるといった取り組みも進められています。

経済産業省が進める「プローブデータ融合プロジェクト」

政府においてもプローブデータを活用した検討が進められています。経済産業省のIT融合フォーラムではプロジェクトグループにおいて「プローブデータ融合プロジェクト」を設置し、ABS作動や温度、振動、位置、速度といったように自動車から取得できるデータを活用した新たなサービスの創出に向けて、異業種を含めた議論を実施し、その実現に向けての課題を抽出し、検討を行なっています。

参加企業では、インテージ、Google、日産自動車、博報堂、リクルートマーケティング パートナーズなどが参画しています。

image
http://www.soumu.go.jp/main_content/000208558.pdf

プローブ情報とオープンデータの連携

国土交通省や警察庁、自治体が保有しているデータは、道路の時間別データや駅の利用者別のデータといった「交通量情報」、路面情報・舗装情報・信号機のリアルタイムなどといった「道路交通情報」、道路工事の場所・時間・通行止め箇所といった「通行規制情報」などがあげられます。

これらのデータを二次利用可能なデータフォーマットで一元的に情報提供できるようになれば、スマートフォンやカーナビと連携したサービスや、自動車保険商品の開発、災害時の通行情報提供といったように様々なシーンで利用できるようになるでしょう。

海外での動向

海外では、これらのプローブデータを収集し、政府機関とも連携しビジネスにつなげています。INRIXの「Smart Driver Network」は、センサーを搭載した世界の民間や商用車両約1億台からリアルタイムの交通データを収集し、交通スコアカードを作成し、時間ごとや区間ごとの渋滞情報などの道路状況を視覚化できるサービスを提供しています(関連記事)。

 

 





http://www.inrix.com/trafficinformation.asp

INRIXでは米国内の運輸省だけでなく、英国道路庁と数百万ドル規模の7年契約も締結し、英国政府の提供するデータを活用し、ヨーロッパ版の交通スコアカードを公開することで、道路庁の意思決定プロセスの迅速化と道路の渋滞環境などの改善につなげています。

 

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MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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