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オープンデータ社会(51)自治体のオープンデータの取り組み(鯖江市・金沢市・坂井市など)

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自治体においても福井県鯖江市、神奈川県横浜市などオープンデータ活用の動きが始まっています。今回は、何回かに分けて自治体におけるオープンデータの取り組みについて整理をしてみたいと思います。

福井県鯖江市

オープンデータに関して早くから取り組みを始めているのが「データシティ鯖江」というキャッチフレーズでオープンデータ化を進める福井県鯖江市です。

鯖江市は2010年3月に「市民主役条例」を施行し、市民と行政の情報共有を規定することで、市民と行政一体での街づくりを志向し、「ITをメガネ、漆器、繊維に続く第4の地場産業として育てていく」方針のもと、IT活用を積極的に進めています。

http://www.city.sabae.fukui.jp/pageview.html?id=12765

2010年12月20日に鯖江市出身のW3Cのマネージャーで慶應義塾大学教授である一色正男氏、jig.jp社長福野泰介氏が公共データの利活用の提案を行なったことが、鯖江市が「データシティ鯖江」を推進する契機となっています。

jig.jpは2010年の年にHTML5などのWeb 技術の標準化に関する活動W3Cに加盟し、W3Cのディレクターであるティム・バーナーズ=リー氏のセマンティックWebに関する講演を聞いた際に「自治体がXMLで公共データをオープンで公開すれば、民間企業がRDFを利用してタグを付け加えることで、公共データを活用したサービスを作れる」と確信し、市長の牧野氏に提案を行っています。

市長はその場で承諾をし、新設の統計情報課に公開データの整備とデータを活用したWebアプリ開発の取り組みを行なっている。現在は、政策経営部情報総括の牧田泰一氏が、その推進役を担っています。

2012年1月30日には、鯖江市内のトイレ情報を二次利用可能なXMLでオープンデータとして公開しています。福野氏はこのトイレ情報を使い、キャラクター作成を福井在住のデザイナーにお願いをし、最寄りのトイレを検索しそこまでの徒歩ナビを表示するアプリ「トイレこんしぇる」を開発しています。


http://fukuno.jig.jp/2012/wcconcierge

2012年3月8日に開催された「Linked Open Data Challenge Japan 2011」では、鯖江市の公園トイレ情報が公共LOD賞を受賞しています。

2012年7月4日に発表された「電子行政オープンデータ戦略」には、地方自治体における取り組事例として鯖江市の取り組みが紹介されています。

2012年5月には「オープンガバメントデイ@鯖江」、2012年10月に「オープンデータハッカソン&LODチャレンジデーin 鯖江」、2012年11月17日には「オープンガバメントサミットin鯖江」が開催され、全国からオープンガバメントやオープンデータを推進する関係者が集まるなど、先進的な取り組みを行う地域としての注目度が高まっています。

鯖江市では、人口などの統計情報、市内公園等のトイレ情報のほか、消火栓情報、災害時の避難所の位置情報や市内のAED情報といった施設情報、鯖江百景の位置 情報等の観光情報、議会情報、文化財情報、市内のWifi設置場所、バス情報などの24種類のデータをオープンデータとして公開しています。これらのデータを活用し、これまで市民や民間企業などにより、50種類近くのアプリが開発されています。

たとえば、「災害時の避難所の位置、ルート」のアプリでは、GPSを利用し、現在地から最寄りの避難場所までの最短ルートを表示することができます。

つつじバス情報では、つつじバスロケーションWEB APIを提供しており、リアルタイムで地図と連動したコミュニティバスの運行情報を確認することができます。
http://www.city.sabae.fukui.jp/users/tutujibus/route/route-index.html
鯖江市コミュニティバス つつじバス

そのほか、「鯖江百景の位置情報等」「さばかん情報」「鯖江市文化財」「さばえ街なかぶらりMA」「さばえ検定100問」「西山動物園の動物」「古地図データ」などのアプリも公開されています。

鯖江市は、オープンデータ流通推進コンソーシアムの参加メンバーでもあり、2013年1月22日に開催された利活用委員会などにおいて先進的な取り組みとして紹介もされています。

さらに、オープンデータ流通推進コンソーシアムによる表彰において、最優秀賞/Google賞を受賞しています。

鯖江市が公開するデータはすべてが順調だったわけではなく、たとえば消火栓情報の公開は、消火栓のデータを一元管理している部局はなく、構想からデータを一元化しWebアプリを公開するまで1年を要しています。民間企業からの要望とその要望に答え自治体内でオープンデータ化を推進する自治体担当者との連携が、「データシティ鯖江」をさせる原動力となっています。

鯖江市の先進的な取り組みを、越前市、福井市、敦賀市、金沢市など自治体が横断的に連携してオープンデータに取り組みも始まっています。たとえば、敦賀市とは消火栓情報、越前市や福井市、金沢市などとは観光情報に関して連携する検討が進められています。

金沢市では、市の公式ページに施設情報の二次利用というオープンデータに関する情報を掲載し、観光情報や文化・芸術などのデータをCSV形式で公開するとともに、WebAPIも公開し「地図情報発信基盤API利用マニュアル」を提供しています。
http://www4.city.kanazawa.lg.jp/11010/opendata/
石川県金沢市

2013年4月6日、7日に「ハッカソン金沢2013」が開催され、市が公開するオープンデータから観光情報の活用や行政情報のエンターテイメント化などのアイデアが出されています(関連記事)。

2013年4月28、29日には「オープンストリートマップ アイデアソンin 鯖江」が開催されています。OpenStreetMap は、お店や郵便局、バリアフリー情報などあらゆる情報を地図に編集し共有できる地図を通じて社会へ貢献できるオープンデータプロジェクトです。

アイデアソンでは、古墳時代から現代までの年代が書かれたタイムマシンのダイアルを回すと、鯖江市でその年代に起きた出来事が、地図や画像や文章で表示される「タイムマシンさばえ号」というアプリが最優秀賞を受賞しています。

2013年5月10日には、福井県内をはじめとした自治体関係者やIT関係者などが参加「福井オープンデータ&ご当地アプリ開発プロジェクト・キックオフセミナー」が福井県坂井市で開催され、イベントを契機としたご当地アプリの開発・公開、各種アプリ関係のコンテストなどを通じ、オープンデータを活用したスマ^トフォン向けのアプリの利活用促進や、地域・業界振興につなげる取り組みが進められています。

本セミナー開催地の坂井市でも2013年5月8日にオープンデータの取り組みを実施することを発表し、避難施設やIT歩数計取込装置設置場所などの医療・福祉情報などを公開しています。

http://www.city.fukui-sakai.lg.jp/useful/p004787.html
福井県坂井市

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