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オープンデータ社会(2)米政府におけるオープンガバメントの取り組み

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オープンデータは、オープンガバメントの取り組みの一要素となります。今回はオープンガバメントについて先進的に取り組んでいる米政府の事例についてご紹介をしたいと思います。

オープンガバメント、ガバメントクラウドを推進するオバマ政権

米国では、2009年年3月5日にオバマ大統領から任命された当時34歳のヴィベック・クンドラ氏(Vivek Kundra)が米連邦政府CIO 兼 行政予算管理局電子政府推進室長(2012年1月16日よりSalesforce.com新興市場担当エグゼクティブバイスプレジデント)に就任しました。

オバマ大統領は、クンドラ氏に対して「劇的に変えてほしい」と指示し、実績がありかつ34歳という若手を起用することで、政策に「Change」をもたらすことを狙いました。

クンドラ氏が政府CIOに就任した背景について説明しましょう。クンドラ氏が米国の首都ワシントンD.C.のCTOを務めていた時に、市民に開かれた政策とクラウドの導入を積極的に推進しました。例えば、「D.C.Data Catalog」プロジェクトや「Apps for Democracy」(民主化のためのアプリ)というコンテストによる情報公開と市民参加を促しました。

また、クラウドサービスのGoogle Appsの導入やオープンソースのソフトウェアを導入するなど、市の情報関連予算のコストを大幅に削減し、民間企業のコスト削減の手法を大胆に地方自治行政に持ち込んだ手腕が高く評価されました。

オバマ大統領の就任式が2009年1月20日に、ワシントンD.C.で行われた際には、ワシントンD.C.のWebサイトにアクセスが集中することを想定し、就任式の前の週には同市のミラーサイトをクラウドサービスのAWSのEC2で構築するなど、早くからクラウドの活用を推進しています。

クンドラ氏が政府CIOに就任してからは、連邦政府の各機関が本格的にクラウド導入に取り組むための「クラウドコンピューティングイニシアティブ(Cloud Computing Initiative)」を掲げ、サービス提供を通じて、インフラ、情報、ソリューションを政府横断的に共有するための取り組みを推進しました。

まず、米連邦政府の連邦調達庁のGSA(General Service Administration)は2009年5月、クラウド事業者に対してRFI(Request for Information)を出し、クラウドの導入を検討を始めました。2009年8月3日には、RFQ(Request for Quotation)を発表し、SLAでは99.95%のAvailabilityが確保されなければならないなどのルールが盛り込まれ、連邦政府のクラウドコンピューティングの枠組みが示されました。

また、米連邦政府は2009年9月15日、クラウドベースのITサービスを提供する連邦政府のクラウドポータル「Apps.gov」を開設。「Apps.gov」は政府機関向けに提供するクラウドサービスを「Business Apps」「Productivity Apps」「Cloud IT Service」「Social Media Apps」の4つのカテゴリで提供しました。「Apps.gov」の提供によって、連邦調達庁のGSA(General Service Administration)は、サービス事業者と調達契約を結び、提供可能なサービスを「Apps.gov」に掲載し、調達の一元化を図りました(2012年11月に本サイトは廃止されています)。

米国連邦政府は2010年11月には、「Cloud First Policy(クラウド ファースト ポリシー)」の採用を発表し、効率的なIT投資を行うため、政府機関がアプリケーションを使用する際は、システムの更改の際に、クラウドのオプションが存在する時は、クラウドをデフォルトとして採用することを義務付ける」と宣言しています。各省庁に対して「2012年6月までに少なくとも3つのアプリをクラウドに載せる」指示がなされており、2012年6月の時点で10省庁のうち8省庁が達成しています。

また、「Federal IT Reform Plan(連邦政府ITリフォーム計画)」では、政府のIT投資をレビューして優先プロジェクトの選定や調達の見直しなどを薦めている。さらに、米連邦政府は2011年2月8日、「Federal Cloud Computing Strategy」を公表し、政府のクラウド戦略の全体の方向性が示されています。

こういった政府が推進する中、マイクロソフトやグーグル、アマゾン、IBMなどのクラウドサービス事業者は、連邦情報セキュリティマネジメント法(FISMA)の基準を満たす政府向けのクラウドサービスの提供を発表しています。

マイクロソフトは2010年2月に政府専用のクラウドサービス「Business Productivity Online Suite Federal」(BPOS Federal)、グーグルは2010年7月に「Google Apps for Government」、アマゾンは2010年10月に「FedCloud」、IBMは2010年11月に「Federal Community Cloud」を発表するなど、政府機関向けのクラウドサービスを提供しています。

民間事業者などが政府向けに提供するクラウドサービスでは、クラウド型の電子メールで政府関係者の約50万人が使うなど、普及が進みつつあります。

米連邦政府は、ITにかける予算の年間800億ドルから、25%をクラウド利用にするという大きな目標を掲げ、5年後には32億ドルがクラウドベースになると見込んでいます。


オープンガバメントとは?

オバマ政権で推進した一つにオープンガバメントがあります。オバマ大統領は大統領就任の初日の2009年1月20日、透明性とオープンガバメントに関する覚書の「Transparency and Open Government」を発表し、 (1) 透明性、(2) 市民参加、(3) 官民連携とオープンガバメントに関する3つの基本原則を表明しています。

(1)Transparency(透明性)
政府は、国民に対する責任を果たすために、情報をオープンにし、提供しなければならない

(2)Participation(国民参加)
政府は、知見を広く国民に求め国民の対話を行い、利害関係者グループ外の人々に政策立案過程への参加を促さなければならない

(3)Collaboration(官民連携)
組織の枠を超えて政府間および官民連携し、イノベーションを促進しなければならない

オバマ政権では、政府の透明性確保や国民参加のオープン性に重点が置かれるようになり、電子政府の取組みを推進しました。

オバマ政権では同日、政府が自ら情報公開を進める覚書「Freedom of Information Act」を発出し、2012年5月には、オープンガバメントの具体的な取り組みの方向性に関する覚書を公開し、オープンガバメント、オープンデータ推進に向けた基盤づくりを進めたのです。

オバマ政権の取り組みは、「Open Government Initiative」と呼ばれ、政府のホームページでも大統領官邸ウェブサイト「The White House」においても Open Government Initiative のページが設けられています。

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http://www.whitehouse.gov/open


各省庁への「オープンガバメント指令」

オバマ政権は2009年12月8日には、オープンガバメント指令(Open Government Directive)を発表。本指令では行政管理予算局(OMB)が各連邦機関に対して、行政の透明性を高める目的で、オープンガバメントを進める責任者の決定や、連邦機関が提供する統計データなどの価値の高いデータを誰でも入手できるようにすること、オープンガバメントサイトを立ち上げるアクションプランを迅速に策定し発表するなどのオープンガバメントプランの作成を指示しています。

本指令を受け、120日後の2010年4月10日には、各省庁がそれぞれオープンガバメントのプランを公表しています。

各省庁のオープンガバメントプランの進捗状況については、「オープンガバメント・ダッシュボード」において、10つの評価基準で評価した情報が公開されています。

1.高価値データの公開
2.データの信頼性
3.ウェブページの公開
4.市民の意見の採用
5.オープンガバメントプランの評価
6.オープンガバメントプラン作成手順
7.透明性
8.市民参加
9.協業体制
10.フラグシップイニシアチブ(野心的なプロジェクトを具体的な実行状況

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http://www.whitehouse.gov/open/around

オープンガバメント進捗報告書(Status Report)の公表

2011年9月には大統領官邸がオープンガバメントの取り組み状況をまとめた「米国民に向けたオープンガバメント進捗報告書(Status Report)」を公表しました。オープンガバメント指令の3原則の定義のほか、「Recovery.gov」、「IT Dashboard」などが分野・目的別に紹介されています。

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http://www.slideshare.net/whitehouse/open-government-status-report

(Rcovery.gov)

「Rcovery.gov」は、2009年2月に、景気対策法に基づく政府支出の透明化を目的とし、どのような政策にいくら使われているか、政策からどのくらいの雇用が創出されたか、どのような政府契約が締結されているかといった詳細情報を開示するサイトです。これらの配分された資金の情報は、政府機関別、受益者別、地域(郵便番号)の項目別にチャートで閲覧することができる。情報の開示はOMBが担当しています。

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http://www.recovery.gov/

(IT Dashboard)

「IT Dashboard」は2009年6月に「USASpending.gov」サイト上で、連邦政府のIT予算の執行状況をカラーでビジュアル化した情報を公開しています。どのITプロジェクトが予定から立ち遅れているか、どのプロジェクトが採算を下回っているかといったコスト、スケジュール、CIO評価(リスク管理、要件管理など)の3つの要素で評価した結果をが表示され、国民が監視できるようにしています。 「IT Dashboard」は2011年5月にオープンソース化したことを発表し、海外の政府機関や米国内の州政府、地方政府、開発者のカスタマイズでの利用が可能となっています。

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http://www.itdashboard.gov/

(Chanllenge.gov)

オバマ政権は2010年9月、連邦調達庁(General Service Administration:GSA)の運営による政府と国民により政治的課題を解決するためのサイト「Chanllenge.gov」を開設しました。各政府が行政のプロジェクトに関する課題を提示し、国民がこの課題に対するアイデアを提案できるようになっています。

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http://challenge.gov/

オープンガバメントによる国際連携を推進する「Open Government Partnership」

オバマ政権は2011年7月、ブラジル政府と共同でオープンガバメントの際提携に向けて「Open Government Partnership(OGP)」の設立を発表しました。2ヶ月後の2011年9月には、「Open Government Partnership(OGP)」を開設し、米国、ブラジル、インドネシア、メキシコ、ノルウェー、フィリピン、南アフリカ、英国の8カ国が加盟しています。各国ではオープンガバメントの取り組の強化に向けて実行計画を提出しています。OGPの加盟には実行計画の提出と公開が義務付けられています。

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http://www.opengovpartnership.org/

OGPは、1年後の2012年9月には、共同議長国がアメリカとブラジルから、イギリスとインドネシアとなっています。米国政府は2011年9月に「米国アクションプランとなる「U.S. National Action Plan」を発表し、汚職撲滅と国民への情報開示のさらなる強化について掲載されています。OGPの加盟国は2013年1月現在で60となっています。

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http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/us_national_action_plan_final_2.pdf

国民によるオンライン嘆願受付「We the People」

オバマ政権は2011年9月、オンライン嘆願受付サイトの「We the People」を開設しました。本サイトでは、各政策において、国民がオンライン上で自由に嘆願書を作成することができ、国民が個人レベルで一般からの署名を募集をすることができます。署名が150人に達すると、その嘆願書がサイト上で一般公開されます。公開後の30日以内に2万5,000人以上の署名を集めることができれば、ホワイトハウスの政策立案者によって検討されるようになっています。

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https://petitions.whitehouse.gov/how-why/step-step-guide

Digital Government

米政府は2012年5月、「Digital Government: Building a 21st Century Platform to Better Serve the American People」を発表し、オープンガバメント、オープンデータに向けた取り組みを加速させています。

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http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/omb/egov/digital-government/digital-government.html

Digital Governmentでは、

①国民がいつでも、どこでも、どのようなデバイスからでも、政府のデジタル情報にアクセスできること
②技術の進化に政府側も対応し、デバイス、アプリケーション、データを管理調達できること
③政府が保有するデータをイノベーションの促進とサービス品質向上に役立てること

の3つを柱とし、以下の10の戦略をあげています。

An “Information-Centric” approach (インフォメーション・セントリック) 1. オープンデータとコンテンツおよびWebAPIの新しいデフォルト化
2. 既存の高価値データおよびコンテンツのWebAPIを通じての提供   

A “Shared Platform” approach (シェアード・プラットフォーム )
3. デジタルサービスイノベーションセンターとアドバイザリーグループの設立    
4. デジタルサービス提供の改善のための政府機関横断のガバナンス確立   
5. 組織全体でのアセット管理と調達モデルへの移行す  

A “Customer-Centric” approach (カスタマー・セントリック )
6. モダンなツールと技術の採用によるより良いデジタルサービスの提供   
7. カスタマー向けのモバイル活用の優先順位の引き上げ   
8. サービス提供改善のためのパフォーマンスと顧客満足の測定  

A platform of “Security and Privacy” (セキュリティとプライバシー )
9. 安全安心な技術の採用の促進    
10. セキュリティとプライバシーのプロセス見直しと合理化

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