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オープンデータ社会(52)自治体のオープンデータの取り組み(横浜市)

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横浜市においても民間団体と連携し、オープンデータの推進に向けた様々な取り組みを進め、街づくりに生かしています。

市民との対話による協働解決を進める横浜

横浜市では、市民に必要な地域情報を提供するための仕組みを検討し、政策課題を市民と共有し対話を重ねることで協働解決に向けた議論を行い、オープンデータ流通による新たな産業や雇用の創出を目指しています。

オープンデータを推進するための推進体制では、横浜市の政策局政策課 政策支援センターが事務局となり、政策局共創推進室など関連部局と連携し、中長期的な政策形成に関する支援や政策課題の市民との共有や情報発信を行っています

また、市民意識調査の実施や調査季報の発行、そして政策の創造と協創を目的として大学の研究機関やNPO、企業などが参加する「横浜会議」などの運営を行っています。

横浜市のデータで作成された「Where Does My Money Go? (日本語版) 」 

オープンデータの事例としてよく紹介される「Where Does My Money Go? (日本語版 ver.1.0.) 」は、横浜市財政局財政課が作成している平成24年度一般会計予算のデータが使用されています。

「Where Does My Money Go?」は、イギリスの Open Knowledge Foundation が開発したWhere Does My Money Go? (英語版) をベースにしており、「Where Does My Money Go?」がデータを呼び出しているデータベースサーバー「Openspending」に横浜市のデータを入力しています。

http://spending.jp/

Where Does My Money Go?

この「Where Does My Money Go?」の取り組みは、2012年6月30日、国際大学GLOCOMが主催する「オープンデータハッカソン」に「Hack for Japan」が協力により、実現し、その他の自治体などにも広がりを見せています。

国内では、横浜市のほか、北海道札幌市、宮城県仙台市、南三陸町、千葉県千葉市、愛知県北名古屋市、京都府京都市、福岡県福岡市などでも活用されています。

北海道江別市
http://ebetsu.spending.jp/

北海道札幌市版
http://sapporo.spending.jp/

宮城県南三陸町
http://minamisanriku-cho.spending.jp/

宮城県仙台市
http://sendai-miyagi.spending.jp/

千葉県千葉市
http://chiba.spending.jp/

東京都小金井市
http://koganei.spending.jp/

愛知県北名古屋市
http://kitanagoya.spending.jp/

京都府京都市
http://kyoto-city.spending.jp/

福岡県福岡市
http://fukuoka.spending.jp/

横浜のオープンデータを推進する横浜オープンデータソリューション発展委員会

2012年12月19日には民間企業やNPO法人の代表、大学教授などが発起人となり任意団体の「横浜オープンデータソリューション発展委員会」を設立し、ハッカソンをはじめオープンデータの活用にいて様々な活動を行なっています。


http://www.facebook.com/yokohamaopendata
http://yokohamaopendata.jp/
横浜オープンデータソリューション発展委員会

本委員会の設立趣旨では、公的データを活用したアイデアソンやハッカソンの開催、公的データによって横浜の政策課題を多様な主体で共有して解決に向けて「対話」を進めるフューチャーセッションの開催、横浜市や国に対するオープンデータの技術や制度の検討提案、オープンデータを進める都市間交流の推進などを行っています。

2013年1月13日には、本委員会主催により「ヨコハマのアートと観光をオープンデータで盛り上げよう! 」というタイトルで設立総会とアイデアミーティングが開催しています。

2013年1月25日と26日には、本委員会が主催し、LODチャレンジ実行委員会や「ヨコハマ・アート・LOD プロジェクト」に取り組んでいる横浜市芸術文化振興財団などが共催による「横浜オープンデータハッカソン」を開催しています。

横浜市芸術文化振興財団では、イベント情報をオープンデータにし、月300~400件のイベント情報や施設情報約180件、アーティスト情報約100件などをCreative Commonsライセンスで公開してLOD化し、GPS機能と連動させることでスマホ向けアプリサービスなども開発されています。

横浜オープンデータソリューション発展委員会では、そのほかにも「オープンデータで横浜の観光プロモーションする」、「オープンデータで減災・防災を実現する」などのテーマでフューチャーセッションを開催し、オープンデータの利活用を推進しています。

そのほか、ゴミ分別LODや横浜検定、市民が記録した150年をLOD化した横濱写真アルバムLOD、横浜歴史フィールドミュージアム、横浜をウィキペディアタウンにしよう!プロジェクト、横浜オープンデータポータル開設などの成果もあげています。


http://data.yokohamaopendata.jp/
横浜オープンデータポータル

International Open Data Day in Japanでの横浜会場の取り組み

2013年2月23日に、世界各地で市民がオープンデータを活用する「International Open Data Day」が世界34カ国、100都市以上で開催されました。

日本においては、Open Knowledge Foundation(オープン・ナレッジ・ファウンデーション)日本グループ(OKFJ)の主催による日本初の「International Open Data Day in Japan」開催され、青森、会津若松、鯖江、東京、千葉、横浜、名古屋、福岡の都市が参加しています。
http://odhd13.okfn.jp/

横浜市では、2つの「街歩き」ワークショップと、「文化観光」をテーマにウェブサービスやアプリを開発などを行う「オープンデータハッカソン&アイディアソン」が行われました。

分科会1の「オープンデータ・横浜街歩きアプリ体験ツアー 」では、横浜オープンデータソリューション発展委員会の企画の一つとして「横浜歴史フィールドミュージアムAR」アプリと「横浜Maps」というスマートフォン用のアプリを使いながら横浜の街を歩いた後に、アプリ開発者も交え、街歩きをより楽しくするアプリのアイディアを出し合うワークショップを行っています。

「横浜歴史フィールドミュージアムAR」は、2013年1月13日に行われた横浜オープンデータ・アイディアソンで参加者から出されたアイディアを参考にし、1月25, 26日に行われた横浜オープンデータ・ハッカソンで開発され、最優秀賞を獲得しています。

実際に、街歩きでは、横浜市立中央図書館の「都市横浜の記憶」の資料の浮世絵、絵葉書で描かれた場所を訪れ、そこをスマートフォンのカメラで見ると現在の景色に開港前後の浮世絵の景色をオーバーレイする形で見ることができます。

分科会3の「横浜をWikipediaタウンにしよう!街歩き」では、横浜市中央図書館でウィキペディア日本語版の管理者・編集者によるオリエンテーションの後、グループに分かれてフィールドワークを行い、横浜の歴史建造物などの取材の成果をウィキペディアに投稿されています。

分科会2の「オープンデータハッカソン&アイディアソン」では、横浜市の「文化観光」と「横浜の歴史」をテーマとしてアプリ開発を行なっています。実際に、「デートスポット」、「統計データによる見える化」、「横浜版データポータル」、「横浜の「日本初」情報」などの4つのグループで作業が行われました。

「統計データによる見える化」では、総務省統計局の家計調査を分析。「横浜版データポータル」は、ハッカソン横浜版のデータカタログチームによるCKANを使った地域データポータルの日本初の試みとなります。

イベント終了後には、オープンデータパーティーが開催され、前半は、インターナショナル・オープンデータ・デー in YOKOHAMA 懇親会という位置づけで、日本各地のオープンデータデー開催地と中継を行い、昼の部のハッカソン、ワークショップなどの成果発表が行われています。後半には、NPO法人リンクト・オープン・データ・イニシアティブ (LODI)の設立記念パーティーも開催され、LODIの活動報告や、参加者によるライトニングトークが行われています。

横浜での取り組みはハッカソンやアイデアソンだけでなく、街歩きワークショップといった気軽に参加できるプログラムも用意することで、100名を超える参加者を集めるなど、盛り上がりを見せています。

「LODチャレンジ2012」や「オープンデータ流通推進コンソーシアム」の勝手表彰やでの受賞

横浜での取り組みは、様々な形で評価をされ、表彰をされています。

2013年3月7日、「リンクト・オープンデータ(LOD)」の推進を目的としたコンテスト「LODチャレンジ2012」の表彰式が開催され、「猫の手も借り隊(部門賞)」、「Where Does My Money Go? 日本語版(スマーターシティ賞)」
「横浜Maps(データ/基盤提供パートナー賞)」「横浜歴史フィールド・ミュージアムAR(チャレンジデー賞)」「ヨコハマ・アート・ガイド LGD Viewer (スマホ賞)」といったように複数の賞を獲得しています(関係記事)。

2013年3月13日、オープンデータに関する優れた取組みを表彰するオープンデータ流通推進コンソーシアムの勝手表彰では、「Where Does My Money Go? の日本語化と横浜市版の作成」が優秀賞を受賞、横浜オープンデータソリューション発展委員会の活動が、アイデアソンやハッカソンの開催、情報発信など積極的に活動が評価され「日本マイクロソフト賞」を受賞しています。

 

横浜オープンデータソリューション発展委員会の活動では、2013年5月18日に「データ解析アイディアソン - 横浜開港祭2012の来場者の行動・反応を解析してみよう! 」を開催しています。

このアイデアソンでは、昨年の横浜開港祭の日に、横浜臨海都心部周辺でつぶやいた人たちのソーシャルメディアの大量のCSVデータを株式会社ナイトレイのソーシャルメディア位置情報アクティビティ解析サービス「T-Rexa(トレクサ)」エンジンで収集解析し、訪れた人たちの属性やイベントに対する評価や反応、行動パターンなどの分析を行ない、観光イベントの見える化を行うことで、今後のイベントなどに生かしていく取り組みを進めています。

2013年6月8日~9日の横浜開港祭にあわせて、6月8日には横浜オープンデータソリューション発展委員会と横浜開港祭ワーキンググループの主催による「オープンデータによるみなとみらいAR歴史体験ツアー in 横浜開港祭」の開催を予定しています。

また、開港祭では、横浜市は横浜青年会議所と連携し、市が提供するデータと市民の口コミ情報を横浜市に本社を置くネットプロ株式会社がデータベースを開発し、ウェブサイト上で市が提供する観光情報と市民の投稿する口コミ用法を一元的に地図上に表示し、AR技術を使いスマホ向けに配信する取り組みを行う予定です(関連記事)。

横浜のこういったオープンデータに積極的な取り組みは、メディアなど様々な機会で取り上げられるようにもなり、地域の価値向上につながっています。オープンデータを活用し、市民による街をデデザインするといったフーチャデザインや地域コミュニティによる地域を活性化させていくといった先進的な取り組みといえるでしょう。さらに、世界の自治体関係者やオープンデータ関係者からも注目されており、海外に対する発信力も注目されるところです。

今後は、オープンデータを活用したビジネスレベルへも展開させ、持続的なビジネスを創造し、地域の産業を創出に寄与していくためのアプローチも重要となっていく考えられます。

 

 

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