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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

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スマートグリッドにおけるデータ活用にも注目が集まっています。

スマートグリッド(次世代送電網)とは、直訳すると「賢い送電網」で、ICTと情報制御技術を駆使し、電力の流れを供給サイド、需要サイドの双方向から自動調整し、電力を無駄なく有効活用でき信頼度の高いエネルギー供給システムです。

太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーや電気自動車(EV)を取り込むことで電源の多様化を実現します。家庭やオフィスでは、電力を制御・管理することで電力の「見える化」など、省エネ・低炭素な社会を実現できる。スマートグリッドは、二酸化炭素(CO2)排出量削減や電力需要の平準化を実現する21世紀の社会インフラとして、注目が集まっています。

調査会社のIDC Japanが2012年11月26日に発表した「国内スマートシティ関連IT市場予測」によると、国内スマートシティ関連IT市場の支出額規模は、2011年が2,912億円、2012 年が3,399億円(前年比成長率16.7%)で、2016年には7,219億円へ拡大すると予測しています。

短期的には、東日本大震災の震災復興に伴うスマートシティプロジェクトの整備、長期的にはスマートメーターなどの社会インフラを介してリアルタイムで収集される膨大な量の構造化・非構造化データの整理・保存・分析を行うビッグデータ技術への需要が高まると予想しています。

スマートメーターのデータ活用

スマートグリッドを構成するアイテムの中でも消費者から見て最も身近なのが、「スマートメーター(次世代電力計)」です。需要サイドのスマートハウスに設置された通信機能を備えた電力メーターで、使用電力量の見える化や電力制御ができます。スマートメーターでは通信機能を備えているため、電力会社側に使用電力量のデータを一定時間ごとに送信でき、そのデータを消費者が閲覧することで、省エネ意識の向上にもつながることが期待されています。

スマートハウスにスマートメーターが設置されると、30分間隔で数十から数百バイト程度の膨大なスマートメーターのデータが送信され、蓄積されます。

各スマートハウスのスマートメーターからの電力の利用履歴など利用者側のデータが集積され、データを活用できるようになれば、例えばエアコンの温度設定やよく使っている機能などをもとに、サービス提供者側はユーザのニーズにあわせて様々なサービスを開発・提供できるようになります。利用者側にとってもそのデータを活用することで利便性が向上し、生活意識の変化や行動様式にも影響を与えていくことでしょう。

政府は2013年3月28日、第60回高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)を開催し、経済産業省の資料「産業競争力強化に向けた新たなIT戦略」では、電力利用データの利活用による新サービスが紹介されています。

新ビジネス創出の事例では、電力利用データの利活用による新サービスの中で、スマートメーター、HEMSを通じて集められた電力利用データを利活用することで、エネルギーマネジメントだけでなく、ホームセキュリティや家電メンテナンスなど付随して様々な新しいビジネスが生まれるとしています。

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http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dai60/siryou10.pdf

今後、スマートメーターのデータの保有や、一次利用、二次利用、プライバシー情報(パーソナルデータ)の使い方などが、議論となっていくでしょう。データの二次利用にあたっては、「動的なリアルタイムオープンデータ」としてAPIとの連携などの検討も必要となっていくでしょう。

デマンドレスポンスとデータ活用

スマートグリッドの領域で、注目を集めているのが「デマンドレスポンス(電力需要の即時反応)」の手法です。デマンドレスポンスとは、ピーク時などの電力需要にあわせて、工場やオフィスビル、そして家庭などの需要サイドでスマートメーターにより自動的に電力需要を制御し、他の需要サイドに余剰電力を供給することができます。

デマンドレスポンスによる電力需要のピークカットが実現できれば、供給不足の解消に電力会社が設備投資をして発電所を新設するのではなく、需要を市場のメカニズムによって削減できる仕組みをつくることで、電力安定供給につながることが期待されています。慢性的な電力不足に悩まされている米国では、デマンドレスポンス・アグリゲーターという新業種が登場し成長分野として、注目を集めています。

日本では、「北九州スマートコミュニティ創造事業」では、2012年夏にデマンドレスポンスを用いて、日本で本格的な変動料金制となるダイナミックプライシングによる社会実験を行い、9~13%のピークカットを実現したことが報告されています。

電力の利用状況は、気象環境によって大きく左右します。特に、太陽光や風力発電などの発電量が安定しない電源が増えてくると、これを予測して全体の電力供給量を決める必要がでてきます。気象データ関連のオープンデータを使い、気象状況などを予測し、デマンドレスポンスと併用することで、より効率的なピークカットや電力需給を行うことができると期待されるところです。

 

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MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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