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2013年3月3日「NHKスペシャル|"いのちの記録"を未来へ~震災ビッグデータ~」が放送され、「震災ビッグデータ」への注目度が高まっています。

震災直後からのビッグデータを次の震災にどう生かしていくのか、命を守るために何ができるのか、震災直後の携帯電話の被災地の数十万人の行動軌跡(ライフログ)や車載カーナビに残された車の140万台の走行記録などの様々なデータと実際の震災現場の検証しつつ、次の災害の備えについての問題提起をしています。

たとえば、震災後の人々の行動分析では、避難する人よりも浸水地域に入る人が上回っているという状況が確認できています。自動車の走行記録からは、家族や知り合いを助けようとしてピックアップをし、避難をする途中で津波に飲み込まれるというピックアップ行動で多くの人が犠牲になっていることがわかっています。

そのほかにも、多くに人が近くの避難所に移動して犠牲になった状況や、震災後の15分後に右折も左折もできない超渋滞現象のグリッドロックになった状況、多くの孤立していた地域に手探りで適切な救助活動が行えていなかった状況などがビッグデータ分析をもとに確認できていることが紹介されています。

ツイッターでは、震災後の1週間、助けを求めるつぶやきは多数あったものの、ほとんどが1億8000万のなかに埋もれていました。こういったつぶやきのソーシャルデータから命に関わる緊急性の高いデータを抽出する技術を開発し、膨大なデータから重要なデータを見つけ出し、救援に結びつけるといった新たなアプローチが検証されています。

東日本大震災ビッグデータワークショップ

「東日本大震災ビッグデータワークショップ - Project 311 -」では、2011年9月12日から10月28日まで、東日本大震災発生直後から1週間の間に実際に発生したビッグデータをワークショップの参加者に提供し、参加者がそのデータを分析することで、今後発生する災害において、震災直後にどのような情報が命を救い、どうすればもっと適切な情報を伝えることができ、どのような対策ができるのか、企業の垣根を超えた震災ビッグデータの検証プロジェクトが進められています。

データを公開したのは、「東日本大震災ビッグデータワークショップ 運営委員会」幹事のグーグルとTwitter Japanの2社、朝日新聞社、JCC、ゼンリンデータコム、日本放送協会(NHK)、本田技研工業、レスキューナウの8社です。

image
https://sites.google.com/site/prj311/

各社から提供されたデータは、震災発生当日から1週間分の全日本語ツイートデータ」「検索トレンド」「新聞記事」「NHKの放送文字データ」「東京キー6局の災害に関する全テレビ情報要約文」「被災地域の混雑度データ」「東日本地域の通行実績情報」「鉄道運行情報・緊急情報・被害状況サマリー」などのデータです。

  • 3月11日から1週間の朝日新聞記事(提供:株式会社朝日新聞社)
  • Google Trends (提供:グーグル株式会社)
  • 東日本大震災直後のテレビ放送テキスト要約データ (提供:JCC株式会社)
  • 3月11日から1週間のツイート  (提供: Twitter Japan 株式会社)
  • NHK総合テレビ大震災発災直後から24時間の放送音声書き起こし及び頻出ワードランキング (提供:日本放送協会)
  • Honda インターナビ通行実績マップデータ(提供:本田技研工業株式会社) 
  • レスキューナウの鉄道運行情報/緊急情報/被害状況のまとめ情報(提供:株式会社レスキューナウ)
  • 混雑統計データ(提供:株式会社ゼンリンデータコム)

2012年10月28日に開催された東日本大震災ビッグデータワークショップの報告会では、500名以上が登録し、50組150名以上が発表しています。

位置情報付きのtweetリスト作成プロジェクトやTwitterからの被災時の行動経路の自動抽出およびその信憑性の検証、震災データからの情報抽出ツール開発プロジェクトなど20を超えるプロジェクトが、これらのデータを使い、災害対策向けサービスのプロトタイプの開発が進められています。

報告会の模様はこちらから確認することができます。

NHKの放送の後半には、震災ビッグデータプロジェクトとして、スカイマップ+混雑統計データ+津波の浸水状況+取り残された人々のデータを組み合わせ、大規模な災害発生時でも多くの人を救うための取り組みの検証が紹介されています。

データを地図化(データのマッピング)し、関連データを重ね合わせる(データのマッシュアップ)ことで、把握できていない状況や埋もれている状況を顕在化させることができるようになり、たとえば、被災状況の推定、救援ルートの把握、避難誘導の最適化などへの利用が想定されています。

最後には

脅威を次の世代に伝える

多くの犠牲の上に私たちが手にした記録「震災ビッグデータ」

悲劇を繰り返さないためにも、未来につなげていくいのちの記録

という言葉で締めくくられています。

 

※関連資料

震災ビッグデータ」をどう生かすか  NHK メディア研究部
NHKスペシャル「“いのちの記録”を未来へ~震災ビッグデータ~」 togetter

 

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MASAYUKI HAYASHI

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プロフィール

林 雅之

林 雅之

ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

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