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発表から1週間が経過した、Google のウェブブラウザ"Chrome"。予想通り(?)、携帯電話への対応も進んでいるようですが、その影響について面白い予測が出ています。

グーグル、新ブラウザーに懸ける野望 (NBonline)

この記事の2ページ目、ライバルの Microsoft 幹部の話として、こんな一節があります:

だが、クロームに寄せられる高い期待には、マイクロソフト本社も警戒感を抱いている。同社でインターネット・エクスプローラーを担当するゼネラルマネジャー、ディーン・ハチャモビッチ氏が懸念しているのは、グーグルのブラウザー開発により、その利用者と、それ以外のウェブ利用者との間に隔たりができてしまうのではないかということだ。「グーグルの参入で、残りの人たちはどうなってしまうのだろうか。この先ウェブは2つや3つに分かれていくのではないか」。

Chrome は単なるウェブブラウザではなく、JavaScript の実行が高速化されるなど、クラウドコンピューティング時代のOSとでも呼ぶべき存在になることを狙っている。それは多くの方々が主張されていることで、この記事の前半も同じような解説がなされていますが、それがどんな影響をもたらすのか――ウェブアプリケーションを自在に使いこなす人々と、従来型のデスクトップアプリケーションに依存する(依存せざるを得ない?)人々が分かれていくだろう、と。そうなればデジタル・ディバイドではありませんが、両者にとって「ウェブ」が意味するものが大きく異なっていくことは間違いないでしょう。

確かに現在でも、僕にとっての「ウェブ」と、父や母にとっての「ウェブ」はまったく違うもののはずです。また Firefox を通じてウェブにアクセスし、追加機能を駆使してすばやく情報を取得・更新しないと気が済まない人と、IEで Yahoo!ニュースを見てるだけで十分という人では、ブラウザに求める要件が同じはずがありません。

この見解に対して、Google は

グーグルの上層部は、そのような分派が起きるとは考えていない。クロームがオープンソースであることから、目ぼしい機能をほかの開発者が流用して取り入れるという動きが起こり得ると予想している。

と考えているようですが……たとえ Chrome のテクノロジーを他社が自由に使えるとしても、「いや、我々は高速化ではなく、安全・安心を重視するユーザー層にアピールするブラウザを開発するのだ」という企業が出てくれば、必ずしも全てのブラウザがクラウドコンピューティングを追求したものにはならないでしょう。例えが適切ではないかもしれませんが、「らくらくホン」のように、先進的技術やサービスを追わない製品でも人気を集める可能性はあると思います。

Google はウェブ時代の覇者、というのは(いまのところ)間違いありませんが、かつての Microsoft のように、PCに向かうすべての人々が Google のユーザーになるということは当分あり得ないのでしょう。デスクトップとウェブを区別せずに捉える人々と、そうでない人々、それぞれが違うブラウザを使い、違うサイトにアクセスし、違うタスクを処理する――ウェブだけでなく「コンピュータを使う」ということ自体が、人によって異なる意味を持つ時代が来ているのかもしれません。

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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