シロクマ日報:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) シロクマ日報

決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

« 2006年11月20日

2006年11月21日の投稿

2006年11月22日 »

昨日のニュースになりますが、日本経済新聞社がネット事業を分社化し、独立した組織で運営することを決定したそうです:

日経新聞、ネット事業を分社化 (ITmedia News)

デジタル・出版で新社――来年1月、日経本社が事業持ち株会社に (NIKKEI NET)

「新聞会社がネット事業を別会社とする」というと、産経新聞の例が頭に浮かびます。産経新聞は2005年11月(奇しくも去年の今頃ですね)、デジタル事業を分社化して「産経デジタル」を設立しました。その後、「iza!」などの新サービスを打ち出して話題になっているのはご存知の通りです。

また海外では、ニューヨークタイムズがネット事業を別組織(New York Times Digital)に担当させることで成果をあげた例があります。これについては『戦略的イノベーション』という本に解説されていますので、ご興味がある方はご確認下さい。

こうした分社化のメリットとは何でしょうか?独立採算による経営状況の明確化、機動力の向上など様々な面があると思いますが、僕は「既存事業からの(悪)影響の排除」という面も重要だと思います。例えば産経デジタルについて、最近こんな記事がありました:

アカデミック界も注目の「イザ!」。新聞2.0の可能性を六本木で議論。(東京23区「外」通信)

この中に、次のような一節があります:

まず、産経が、「産経デジタル」という別会社をつくって、紙中心の事業を展開する本社から距離を置いて、イザ!の立ち上げを行った点に触れ、「既存の新聞社で、デジタル部門を別会社にしたのは産経が初めて。ネットを新聞を売るための販促ツールという考えから一線を画している」とし、「分社化で雰囲気も変わった。人も変わってものすごく前向きになった。ニュースを流す、それで終わりというこれまでのやり方から抜け出した」という趣旨の説明を行った。

つまり分社化により、慣習やしがらみといったものから抜け出し、ゼロベースで考えることが可能になったわけです。また前述の『戦略的イノベーション』では、同じような効果が New York Times Digital の例でも見られることが解説されています。日経新聞が分社化を決定するにあたり、このような「人心一新効果」に対する考慮があったかどうかは分かりませんが、「新規事業を積極的に展開する」(前掲 NIKKEI NET の記事より)のであれば好ましい環境になったと考えられるのではないでしょうか。

既存の組織、特に従来型のビジネスで成功を収めている大企業の中で「ネット」という新しい可能性にチャレンジするのは、非常に難しいことです。それは「ネットという日進月歩で変化するような環境においては、小さくて小回りの利く組織の方が有利」という目に見える側面もありますが、同時に「従来型の思考が根強く残っているために、新しいアイデアを受け付けようとしない」という心理的な側面もあります。組織制度のように簡単に組み替えることができない分、心理的影響の方がたちが悪いと言えるでしょう。

分社化は、こうした心理的影響を排除するのに有効な手段です。産経新聞デジタルが iza! のようなユニークなサービスを生み出せたのも、「新聞社的な思考」というものの影響を排除できたことが大きいのではないでしょうか。新聞・出版業界にとどまらず、他業界でネット分野への進出を考えている企業にとっても、産経新聞・日経新聞の事例は検証に値すると思います。

アキヒト

« 2006年11月20日

2006年11月21日の投稿

2006年11月22日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
カレンダー
2013年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
akihito
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ