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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

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7月26日に開幕した「HITACHI uVALUEコンベンション2006」において、日立製作所の古川社長が「知的創造社会」という概念を提唱されています:

日立の古川社長、「次の社会を支えるのは“知”」(ZDNet Japan)

講演で古川社長は、次のように語られたそうです:

このように社会がどんどん豊かになり、情報が氾らんする中、「あふれる情報の中から最適な情報のみを入手し、いかに使いこなすかが大切になる。次の社会では、情報を使いこなすための“知”が重要だ」と古川氏は指摘し、情報社会の次の社会を「知的創造社会」と呼んだ。

確 かに「情報洪水」という言葉が生まれているように、情報の多さが逆に価値ある情報を埋もれさせてしまう、という本末転倒な状況が起きています。ここで必要 とされるのは価値ある情報を見つけ、使いこなすスキルであり、それを古川社長は「知」と呼ばれたのでしょう。その意味で「情報社会の次に来るべきなのは知 的創造社会である」という主張に賛成です。

しかし、それに続く部分には疑問が残ります:

この知的創造社会では、利便性を向上させるためにITが重要な役割を果たす。情報をつなぎ、情報を伝え、情報をため、情報を守るといった役割は、サーバやミドルウェア、ネットワーク、ストレージ、セキュリティなどのIT技術が担うためだ。

古川社長はこう語られているのですが、果たして知的創造社会をもたらすのはIT技術でしょうか。「情報洪水」という状況は、決して新しい問題ではありません。例えば作家スタニスワフ・レムは1973年の小説『虚数』の冒頭でこう述べています:

わ れわれは果たして情報洪水に脅かされてはいないだろうか?そして、この情報洪水の怪物的な恐ろしさとは、それが美によって美を粉砕し、真実によって真実を 壊滅させるという点ではないのだろうか?というのも、百万人もシェイクスピアがいたとしたら、彼らの声は結局のところ、大草原で野牛の群が発する声や海の 大波のたてる音と同じような騒音、狂ったような喧騒になってしまうからだ。そんなわけで無数の意味がたがいに衝突しあうと、思考に栄誉をもたらしてくれる どころか、逆に思考を破滅させてしまうのである。そのような恐るべき宿命に直面したとき、もはや沈黙だけが創造者・読者盟約の救いの方舟となるのではない だろうか。

それから30年以上が経ち、IT技術は大きく進歩しましたが、情報洪水は収まる気配を見せません。逆にITは収めるべき洪水を増やし、問題を悪化させている一方です。知的創造社会の基盤となるのが情報社会である以上、IT技術は必要不可欠なものですが、ITだけを追求していれば十分だとは思えません。果たして「Suica をマンションの鍵として活用できる Suica 対応セキュリティマン ション」や、「食品・低温流通業界向けのITソリューション」などといったものが、知的創造社会の到来を促進していると言えるでしょうか。

落ち着いて考えてみれば、「知的創造社会」というものはお題目に掲げて追い求めなくても、既に私たちの身の回りで実現しつつあることが分かります。たとえば検索エン ジンにより、ネットの海から価値ある情報を探すことが簡単に行えるようになりました。その波はエンタープライズサーチという形で、企業の中にも入りつつ あります。またソーシャル・ブックマークやQAサイトというものは、システムではなく人の力=集合知という形で「知」を生み出す仕組みです。これらはIT 技術によって実現された仕組みですが、決して技術ありきで生まれたものではなく、むしろその使い方や工夫の仕方が生み出したものです。重要なのは 技術や過去の経験ではなく、新しいパラダイムです。

古川氏は、「次の時代は、モノと情報だけの世界に“知”が加わる。知を創造し、つなぎ、伝えるためにITを活用し、情報と融合させるサービスプラット フォームが社会の基盤となる。日立の総合力で、新たな価値を生み出し、この知的創造社会に貢献していきたい」と述べ、講演を締めくくった。

と のことですが、必要なのは技術から未来を見るという態度ではなく、身の回りで起こりつつあることを冷静に見据えるという姿勢ではないでしょうか。さもなけ れば、将来知的創造社会を実現するのは日立のような大企業ではなく、柔軟な姿勢を持ったベンチャー企業に違いないでしょう。

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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