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古いモノ・概念と新しいモノ・概念を対比させ、「1.0 vs. 2.0」で語ることが流行っています。有名どころはやはり、サン・マイクロさんの「社員1.0と社員2.0」でしょうか。僕もこれ系のネタがすごく好きなのですが、ちょっと気になることがあります。1.0 と 2.0 を対比させ、2.0 の方を優れたものとして描くことは、両者の溝を深めることになってしまわないでしょうか。また無批判に、かつ全面的に 2.0 の方へ移行することを促してしまう恐れがないでしょうか。

Polar Bear Blog の記事 でも書いたのですが、最近読んだ本『インポッシブル・シンキング』の中で、「パラダイムシフトは不可逆的なものではなく、新旧の理論が並存しうる双方向的なものである」という指摘が出てきます。その一例として、こんな話が掲載されています:

2002年、険しい山岳地帯で繰り広げられたアフガニスタン攻撃では、アメリカ軍特殊部隊とアフガニスタンの同盟軍が、夜間に危険な山道を馬に乗って移動した。馬上の兵士は、携帯型コンピューターを駆使して、空軍ミサイルを陸上の標的へと誘導した。
(中略)
馬が高速道路に戻ってくると言うつもりはない。ロケットが飛ぶ時代にも、乗馬という古いモデルが行き続けられると言いたいのだ。アメリカ軍の担当者が、乗馬モデルを知らなければ、あるいは検討しなければ、戦略を立てる上での選択肢は狭まっていただろう。
(pp.115-116)

クルマ(2.0的存在)の登場は馬や徒歩という交通手段を古いもの(1.0的存在)にしましたが、だからといって馬や徒歩が価値を失ったわけではありません。闇雲に2.0を礼賛するだけでは、近所のスーパーに買い物に行くのにもクルマを使うなどといった状況を招いてしまうでしょう。大切なのは新旧両方のモデルを知り、必要に応じて使い分けたり、両者を融合した最適なソリューションを組み立てることです。

ところが実際は、どちらか片方の世界にしか興味を示さない人が多いのではないでしょうか。梅田望夫さんの『ウェブ進化論』でも、「あちら側」「こちら側」という呼び方で新しいWEBをめぐる分断が進んでいることが指摘されています。梅田さんはどちらかと言うと、「あちら側」の肩を持つような立場であるような印象を受けましたが、いま求められているのは「あちら側」と「こちら側」の両者のメンタルモデルを理解して、最適な目標に皆を導いていけるような人だと思います。それは1.0な人々を啓蒙することを意味するかもしれませんし、1.0のやり方を再び採用することかもしれません。

『インポッシブル・シンキング』ではそんな人物を「バウンダリー・スパナー(異文化の通訳)」と呼んでいます。彼らは「片足を一つの世界に、もう一方を別の世界にかけている」ような人物で、2つの世界の仲介者として行動することができます。WEB界にバウンダリー・スパナーがいたら、「こちら側」の人々に対してはフォークソノミーを体験することを促すと同時に、「あちら側」の人々に対してはデューイ十進分類法を学ぶ意義を説いてくれるかもしれません。いずれにしても、そんなバランス感覚を持った人間が今こそ必要だと思います。

時代の先端を走り、人々を導く人物は確かに必要です。しかし断絶に目を向け、古いやり方の良さを見抜く人物も同じくらい価値があるのではないでしょうか。僕もバウンダリー・スパナーというカッコイイ肩書きが名乗れないまでも、2つの価値が理解できるような人間になれると良いのですが。

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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