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昨日が「隠れたユーザー」で今日は「見えない敵」か、と思われてしまうかもしれませんが、冗談で付けたタイトルではありませんのでご容赦を。

2001年9月11日、ご存知の通り、アメリカで悲惨なテロ事件が起きました。当時僕は留学中で、ハイジャックされた飛行機が出発した街・ボストン にいました。もしかしたら街中で、テロリストとすれ違っていたのかもしれない・・・と思うと恐ろしく感じましたが、もし本当にテロリストと顔を合わせてい たとしても、それとは気づかなかったでしょう。飛行機の操縦を習うなど、犯人たちは「テロリスト」という言葉で連想されるイメージとはかけ離れていたから です。

最近出版された『インポッシブル・シンキング』という本で、この点が指摘されています:

収 集した情報は、テロとハイジャックに関する既存のメンタルモデルのフィルターを通された。例えば、身なりが整い、何不自由なく見えるミドルクラスの若いビ ジネスマンは、自爆テロの実行犯にありがちな、若い狂信者というプロフィールとは重ならなかった。このため、一見、穏やかな男たちが、航空免許を取得する ために学校に通ったり、農薬散布について質問したりしても、テロの可能性があるとは考えられもしなかった。
(p.24)

つ まり私たちの頭のなかには「テロリストとはこんなイメージだ」という思い込み -- 「インポッシブル・シンキング」に登場する言葉を借りれば「メンタルモデル」 -- があるため、もし敵が違った姿で現れたとしたら、それを「脅威だ」と気づくことは非常に難しいわけです。気づいたときには、敵は懐深くにもぐりこんでい た・・・となりかねません。

ビジネスにおいても、この「見えない敵」に襲われることがあります。例えば、皆さんは「ラブ and ベリー」という名前を聞いたことがあるでしょうか。小さな娘さんがいたり、ゲームセンターによく足を運んでいる人であればご存知でしょう。セガが開発した 子供向けアーケードゲームで、カードを集めて遊びます。カードには服のパーツ(洋服やドレス、ブーツや帽子など)が描かれていて、プレーヤーはそのオシャ レな組み合わせ(コーディネーション)を考えて点数を競う・・・というのが基本的なルール。といっても本当はもっと複雑なので、詳しくは以下の公式サイト をご参照ください:

オシャレ魔女 ラブ and ベリー 公式ホームページ

で、このキャラクターが何の脅威になっているかというと、実は子供向けファッション業界だったりします。セガは最近、「LB Style Square」 という店舗を都内にオープンしたのですが、そこでカードに描かれた服を本物の服(実際に着れるもの)にして売り出しました。もともとカード用の服について も、専門のデザイナーが流行を取り入れてデザインしたというしっかりしたもの。さらにゲームの人気と相まって、オープン初日は大混雑となったそうです:

セガ、「オシャレ魔女 ラブ and ベリー」オフィシャルショップ「LB Style Square」オープン初日は大混雑(Impress Watch)

今後「ラブ and ベリー」発のアパレル商品がどこまで成長するかは未知数ですが、ゲームは子供だけでなく親にも受けるほどの大人気であり、無視できない勢いがあることは 確かです。ファッション業界の既存企業にとっては、まさに想像もしていなかった分野からの強力な新規参入者、といったところではないでしょうか。

ゲームメーカーという、これまでの敵とはまったく異なるプレーヤーが迫ってきていたことに、既存のアパレル業者はどの程度気づいていたのでしょ うか。それは「見えない敵」というよりも、自分たちが抱いていた「我々の敵はこんな姿だ/こんな攻め方をしてくる」という思い込みが「見えなくさせた敵」 という言い方の方が正しいかもしれません。そういった敵に対抗するためには、状況の変化に対する感度を高めるとともに、自分自身が持つ「メンタルモデル」というものに意識を向ける必要があると思います。

新たな敵に注意を向ける一方で、逆に自分自身が「見えない敵」となるという応用も考えられるでしょう。自分が仕事をしている業界の中で、誰もが「あの企業に勝つことは不可能だ」と思い込んでいる企業たちを仮想敵国として、彼らが常識だ と思い込んでいることは何か、イメージしている敵の姿とはどんなものか、彼らにに気づかれずにシェアを奪う戦略がないかなどと考えてみるトレーニングをし ても良いかもしれません。

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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