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今朝(2006年3月28日)の日経新聞のコラム「春秋」に、こんなことが書かれていました:

▼「フランス人ならフランス語を使うべきだ」とシラク仏大統領が怒ってEU首脳会議の席を立ったという。行き過ぎた保護主義の弊害を説くフランス産業界の代表が英語で演説したのが理由である。世界で英語の優位が日増しに高まる。
(中略)
▼「アクセシビリティー→利用しやすさ」「リデュース→ごみ発生抑制」「サプリメント→栄養補助食品」。国立国語研究所がまとめた外来語の置き換えの事例には増殖する英語に包囲される日本語の現在が映し出されているが、英語という普遍言語の広がりとともに母国語の情感や文化の奥行きを見失いたくない。

「外来語が増えることに対する懸念」という、古くて新しい問題に対するコメントです。確かにカタカナ英語が無意味に使われた、読みにくい文章というものはいたるところに存在します(僕もそんな文章を書いてしまう一人ですが)。一般国民に広く読んでもらう必要のある官公庁の文書、また広い読者層をターゲットにした新聞などはできるだけ外来語を避けるか、解説をつけるのが望ましいでしょう。しかし外来語を受け入れる日本語の柔軟性に注目し、必要以上に締め付けを行うことに対する批判もあります。どこまで外来語を認めるか、バランスを取るのは非常に難しいことだと思います。

一方で、カタカナ英語の問題には「外来語を受け入れるか受け入れないか」という議論とは別の側面があるように思います。それは「日本が新しいコンセプトを生み出していないのではないか」という懸念です。例えば日経新聞にも出てきた「アクセシビリティー」ですが、単純に「利用しやすさ」と置き換えてしまって良いものでしょうか。仮にWEBサイトのアクセシビリティーであれば、コンテンツの読みやすさといった「分かりやすさ」というニュアンスも含めるべきなように感じます。もし「アクセシビリティー」に対応する概念が以前から日本に存在していれば、問題は単純に「アクセシビリティーとは日本語の○○という概念と一緒だ」で済んだはずです。

こういった「海外で先に生まれた概念であるために、新しい日本語を(大きな労力を払って)作って定着させなければならない」という言葉は、意外に多いような気がします。アクセシビリティーやバリアフリー、アカウンタビリティ、トレーサビリティーといった言葉はその代表例ではないでしょうか。もちろん、「日本語に無かったのなら新しく作れば良い」という議論はその通りだと思います。しかしこういった先進的な概念、特に「安全管理」や「弱者保護」といった分野における概念の多くが海外から輸入されてきたものである、という点には不安を感じます。

外来語を日本語に置き換えようという動きはまったくかまいませんが、その際には「なぜこのコンセプトが日本で生まれてこなかったのか」「新しい日本語を定着させるには、人々の意識や社会制度などを変える必要はないのか」といった点も考えなければならないと思います。でなければ、日本はこの先ずっと外来語の「侵略」に悩まされるでしょう。実はその「侵略」が、新しく優れた概念をもたらすものであるにも関わらず。

アキヒト

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小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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