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リサーチのプロとして長いこと歩んできた今泉大輔です。ChatGPT出現以降、Facebookで「ChatGPTとMidjourneyのビジネス活用を探って行く勉強会」を立ち上げ、「ビジネスパーソンにとってのAI」の観点で米国情報を収集して来ました。知的アウトプットの質と量を向上させるプロンプトの開発にも取り組んでいます。

広告代理店に本発注すれば1,000万円超。フェムテック系菌活ドリンク販促の仮提案書作成【経営者のChatGPTディープリサーチ】

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コンビニチャネルで販売するフェムテックの菌活ドリンク新製品

ChatGPT氏と新規事業のシナリオ作りについて議論をしていて、「フェムテック」という言葉があることを知りました。女性の生理期間のイライラなどを軽減するための商品の総称です。
コンビニチャネルで売る菌活ドリンクの新製品として、フェムテック系菌活ドリンクのシナリオで行くことにしました。
コンビニは全国で5万店舗。1店舗につき1人の女性客が1ヶ月に7本買う設定から始めます。
事業試算のトップライン(売上高)推計のためです

1人の女性客が毎月7本を1店舗で買う。これが5万店舗で起こる。仮に販促方策が奏功して1店舗当たりの女性客が1ヶ月に2人に増える。5万店舗では...。そのようにして売上が伸びていく想定だと、1店舗当たりの女性客が2人から3人へ、3人から4人へと増えると、売上も大きく伸びていきます。売上がわかれば新規事業の試算はすぐにできます。

つまりこの新規事業では、コンビニ1店舗当たりの女性客を増やす方策にポイントがあります。どういう方策があるでしょうか?

経営者なら出入りの大手広告代理店を呼んで「フェムテック系菌活ドリンク販促方策の提案書を作ってみてくれ」となるかも知れません。しかし依頼する前に、アイディアレベルで、どういう販促方策があるか、ChatGPTのディープリサーチに発案させてみたいと考えるとします。というのも、プロンプトを走らせれば15分程度で面白い仮提案ができてくるからです。

ChatGPTディープリサーチの調査性能が発揮できるように、次のようなプロンプトを作ってChatGPTディープリサーチに仮提案を作成させることにしました。仮提案がよければその内容に沿って大手広告代理店に本発注します。
5年間で1店舗当たりの女性客が1人から5人に増えるにはどういう方策があるか?

経営者の思いつきで、ちょっとChatGPTディープリサーチに仮提案を作らせてみる!そういうケーススタディという意味で記しています。本格的な提案書は大手広告代理店に依頼する前提でのケーススタディです。

良いプロンプトはChatGPTと対話する中で自然と出来上がる

プロンプト

「私は経営者です。新規事業としてフェムテック系菌活ドリンクをコンビニで販売しています。現在は1店舗あたり月に1人の女性客が生理期間中の7日間に毎日飲んでくれています(=月7本)。この"リピーター女性"を、月ごとに2人、3人と少しずつ増やしていくためには、どのようなマーケティング施策やプロダクト戦略が有効でしょうか?
● 以下の観点で具体的にアドバイスをください:
リピート促進のための製品改良やパッケージ表現
女性が共感・シェアしたくなるようなブランドストーリーの作り方
SNSで拡散されやすいプロモーション施策
コンビニ店頭でのPOPや陳列方法による認知向上策
リピートユーザーを巻き込むキャンペーン事例(スタンプ・ノベルティ等)
● 最後に、「毎月の購入人数が自然に伸びていくシナリオ設計(半年で1人→5人に)」のために重要な要素をリストでまとめてください。」

このプロンプト作りがキモです。経営者ご自身がChatGPTとああでもない、こうでもないと、新規事業について対話をしていく中で、こういうプロンプトが自然に得られます。

ChatGPTを使い始めて間もないうちは、何を対話していいかわかりませんが、彼はスタンフォード大学のビジネススクールでMBAを取得した、かつ相応の実務経験のあるビジネスマンないしコンサルティングファーム所属のコンサルタントであると見なして(しかも日本語が堪能)、どんどんアイディアをぶつけて行けば良いのです。ビジネスの賢人を相手にしているかのような錯覚を持つほど、多種多様な質問に答えられます。

上のプロンプトもそのようにして得られました。

そうしてこのプロンプトをChatGPTディープリサーチを走らせた所、以下のような仮提案書が仕上がってきました。画像はその一部です。ぜひ仮提案書の全体をその下のリンクからご覧下さい。

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ChatGPTディープリサーチが生成したフェムテック系菌活ドリンク販促仮提案書

フェムテック系菌活ドリンク販促提案の結論部分

月間購入者1人→5人に増やす「自然な広がり」シナリオに必要な要素

半年で各店の月間購入者を1人から5人へと増やすには、上記施策を組み合わせて有機的な広がりを生むことが肝心です。以下に、自然なクチコミ拡大シナリオに欠かせない要素をリストアップします:

  • 商品力と即効性の実感まず飲んだユーザーが「これは良い!」と感じる確かな効果や美味しさが大前提です。PMS症状が和らいだ、肌の調子が良くなった等の実感があれば、人は自然と周囲に話したくなります。最初の1人を感動させる商品力が5人、50人への波及の起点になります。
  • 初期ユーザーの徹底的なファン化現在の各店1人のリピーターを「熱狂的ファン」に育てます。定期的に感謝クーポンを渡したり、SNSで交流したり、あなたの存在を大切に思っていますと伝えることで、その人はブランドのアンバサダー的存在になります。最初のファンが友人や同僚に「騙されたと思って試してみて!」と勧めてくれれば新規客獲得に直結します。
  • 口コミのトリガー設計:ユーザー同士の紹介や共有を促す仕掛けを作ります。例えば紹介コード制度(友達がコード利用で割引、紹介者にも特典)や、「2本目無料券」をあえて2枚セットで配布し「1枚はお友達にあげてください」とするなど、既存ユーザーが新規ユーザーを連れてくる動機を与えます。このような仕掛けで1人が1人を呼べば指数関数的に広がります。
  • SNS・UGC拡散:上記で述べたSNS施策により、エンゲージメントの高い投稿を継続的に生み出します。特に体験談やBefore→Afterを伴うUGCは信頼性が高く、それを見たフォロワーが「私も試してみようかな」と感じるきっかけになります。SNS上で話題になること自体が大きな新規流入チャネルです。
  • ローカル/コミュニティでの波及:ターゲット層が集まりやすいコミュニティで口コミを発生させます。例えば職場の同期グループやヨガ教室の仲間内など、「生理痛つらいよね」という共通の話題がある身近なコミュニティで一人が本商品を紹介すれば、一気に複数人が試してくれる可能性があります。地域イベントやワークショップで商品を知った人が、その場で友人に教えるといった草の根的広がりも狙えます。
  • 継続的な話題作り:半年間継続して人々の興味を引くために、定期的な話題提供が必要です。新フレーバー発売、◯◯キャンペーン開催、有名人による体験レポート公開、受賞ニュースなど、月ごとにニュースを用意して発信しましょう。飽きさせず常に「何かやっている」「今度こんな新展開があるらしい」とターゲットの耳目に触れることで、購入を促すきっかけを増やします。
  • ユーザーとの信頼関係根底にあるのはユーザーとの双方向の信頼です。クレーム対応や質問へのレスポンスを丁寧に行い、「このブランドは誠実で親身だ」という評判を築けば、それ自体が購買動機になります。信頼するブランドなら新商品も試したいし、友達にも安心して薦められるものです。地道ですが口コミの質を高め、自然な広がりを生む土壌となります。

以上の要素を組み合わせ、「良い商品→効果実感→共感・シェア→新規客流入→ファン化→さらに紹介」というポジティブな循環を作ることができれば、広告に頼りすぎない自然発生的なマーケット拡大が実現できるでしょう。その結果として半年後には各店舗で5人以上の女性が当たり前にこのドリンクを手に取る姿が見られることを目指します。フックとなる体験提供と人と人とのつながりを意識したシナリオ設計で、持続的なリピーター増加を狙いましょう。

この仮提案書を大手広告代理店に本発注した場合の見積

非常に優れた仮提案書なので、この仮提案書に沿って大手広告代理店に本発注するといくらぐらいになるのかChatGPTに見積もらせました。

大手広告代理店に依頼した場合の費用感

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この見積だけでも圧倒的な性能です。ChatGPTディープリサーチはやはりすごい!
大事なのはこれで大手広告代理店の出番がなくなる...などということは無いということです。経営者が「あ、あれをやってみよう」と思い付いて、しばらくChatGPTと対話しているうちにプロンプトができる。
そのプロンプトをChatGPTディープリサーチにかけると上のような仮提案書が15分ぐらいで出来上がってきます。
「よし!これで大手広告代理店に詳細な提案書を本発注してみよう!」となる訳です。
なぜなら、ChatGPTが出力した仮提案書では、社内の関連部門はおそらく動かないからです。経営者である自分に予算の決裁権があるとしても。社内で本格的に上の販促方策を動かすためには、プロの大手広告代理店がしっかりと手間暇をかけた本提案書が不可欠です。
そのためのフックになるのがChatGPTディープリサーチの仮提案です。

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